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本報告書は、ライフスタイル・カーボンフットプリント(※)を軸に私たちの日常生活での消費や行動が気候変動に与える影響を推定し、パリ協定の目標達成と豊かな暮らしの両立を探るものです。
※家計が消費する製品やサービスのライフサイクル(資源の採取、素材の加工、製品の製造、流通、使用から廃棄)において生じるGHGの排出量
IGESは、2019年2月にフィンランド・アールト大学およびD-matと共同で『1.5-Degree Lifestyles – Targets and Options for Reducing Lifestyle Carbon Footprints』を発刊し、日本、フィンランド、中国、ブラジル、インドの平均的な暮らしでの温室効果ガス(GHG)排出量や特徴、脱炭素社会に向けて取りうる選択肢を示しました。これに基づき、本レポートは特に日本に焦点を当て、日本で現在主流となっている食、住居、移動のあり方が世界の気候変動に与える影響を分析し、日本で生活する上で比較的取り入れやすく、かつGHG削減効果が大きいと考えられる具体的な選択肢や推計される定量的効果について、日本語で取りまとめたものです。
ハイライト
- 本レポートでは、1.5℃目標に対応する世界共通の1人当たりのフットプリント目標を提示した。その目標のもとでは、日本人はライフスタイル・カーボンフットプリントを2030年までに67%、2050年までには91%削減する必要がある。
- 平均的な日本人のライフスタイル・カーボンフットプリントの約70%は「食」「住居」「移動」に関連し、これらの領域における脱炭素型の暮らしへの転換が効果的であり、すでに実践可能な複数の選択肢が存在する。
- 脱炭素型の暮らしへの大規模な転換を実現するには、個人や家庭が利用する製品やサービスの生産・流通にかかわるシステムの変革と、個人や家庭によるライフスタイルの転換の両方を推進することが不可欠であり、消費者と生産者の双方が相互に働きかけていくような好循環を形成することが重要である。
2018年10月、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は『1.5℃特別報告書』において、人々の行動とライフスタイルの変化が地球温暖化を1.5℃未満に抑えるための緩和の実現可能性を高める促進条件になると指摘しました。日本政府も2019年6月に『パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略』を閣議決定し、ライフスタイルが技術や社会システムと並ぶイノベーション推進領域であると位置づけています。
一方で、これまでの議論は、主に国内や行政区域内における直接的なGHG排出や、個別の製品ないし商品の効率改善といった技術的な対策が中心で、必ずしもグローバルな人やモノ、サービスの移動や消費行動の変化を十分に考慮したものではありませんでした。
本レポートは、最終消費者である私たちの生活からカーボンフットプリントをたどることで、製品・サービスのGHG排出をサプライチェーン全体で包括的に把握するだけでなく、持続可能かつ豊かな暮らしのあり方を地球規模で検討し、消費者主導で脱炭素型のビジネスモデルならびに社会システムの変革を導く、新たな可能性を示唆しています。
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