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将来のCO2排出量は、経済規模、産業構造といった「社会的前提要素」 と、気候変動政策の対象となるエネルギー効率、エネルギーの供給構成などの「対策対象要素」によって左右される(図a参照)。本稿は、日本の国別緩和目標(NDC 1)に記載される2030年GHG削減目標(以下、NDC目標)におけるエネルギー起源CO2排出量(以下、CO2排出量)に着目し、社会的前提要素(実質GDP)及び対策対象要素(実質GDP当たりの最終エネルギー消費量、最終エネルギー消費当たりのCO2排出量)がどのような水準であるのか考察 することを目的に、各要素について、既往の統計や研究等による推定結果と比較した。さらに、個々の要素の変化に対しCO2排出量がどのように変化するか、定量分析(感度分析)及びLMDI法(Logarithmic Mean Divisia Index )を用いたCO2排出量の要素分解分析を行った。
本分析の結果から得られた特筆すべき事項として、社会的前提要素のうち、NDC目標が前提とする経済成長が既往のどの予測よりも大きく設定されていることが明らかとなった。これらのCO2増加に寄与する社会的前提要素が通常の想定より大きく設定された場合、NDC目標を達成するためには、CO2削減側の原発比率及び気候変動緩和策を大幅に高める必要がある。
反対に、GDP成長率をこれまでの成長率を考慮した民間予測の平均値とすれば、原子力発電量の割合が15%となれば、特に追加対策をとらずとも日本のNDCのうち、エネルギー起源CO2の排出削減目標は達成できる水準である。仮に原子力発電量の割合が0%であっても、中位対策をとれば達成可能な水準であると言える。
以上の結果より、GDP成長率に対して、民間シンクタンク・研究機関の見通しを前提に計算すると、日本の2030年のエネルギー起源CO2排出削減目標は容易に達成できるため、NDC目標を引き上げることは可能であることが示された。
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