我々の豊かさとは -次の77年を視野に入れて

In 建設コンサルタンツ協会会誌
Volume (Issue): VOL.265 April 2022
Non Peer-reviewed Article
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建設コンサルタンツ協会会誌 [Civil Engineering Consultant]

Vol. 295 April 2022 特集 燃える地球 - あらためて知る温暖化 -

「我々の豊かさとは-次の77年を視野に入れて」

 日本はエネルギーの大量消費に伴って戦前・戦後と目まぐるしい経済発展をし、太平洋戦争を引き起こした。ウクライナ危機を目の当たりにして、豊かさのために、我々はエネルギー・気候変動に、どのように向き合えば良いのか。いくつかの視点を提示したい。

1.衣食住、そしてエネルギー足りて発展した日本-これからは?

 2022年から77年前の1945年に日本は敗戦し、さらに77年前の1868年に明治時代が始まった。資源エネルギー庁の「エネルギー白書2018」(1)の第1章「明治維新後のエネルギーをめぐる我が国の歴史」(約40ページ)に、日本が開国し、明治時代に入ってから、どのようにエネルギーと向き合い経済成長してきたか、が示されており読みごたえがある。

(略)

2.風任せから風頼みへ―新たな投資・雇用の機会に

 風力発電はしばしば、風任せでアテにならない、と言われてきた。また太陽光発電もお日様任せの不安定な電源だと言われてきた。しかし、気象予測や風況・日照解析の技術が高まり、系統を通じて他の電源や需要との調整能力を高めることで、以前より予測できるエネルギー源になってきている。

(略)

3.家のつくり方は、冬を旨とすべし-寒くて暑い日本の家

 2014年1月にウェザーニューズが興味深い調査を行い(3)、朝起きたときの寝室の温度を全国2,979件の測定結果から図6のようにマッピングした。16度を超えているのは北海道(16.3℃)と沖縄(20.5℃)だけで、大分県(9.0℃)、宮崎県(9.4℃) 、佐賀県(9.7℃)の方が北日本の県より室温が寒くなっていたなど、多くの方が寒い家に住んでいることがわかった。

(略)

4.我々の豊かさとは-次のステージに入るエネルギー・温暖化政策

 東日本大震災の翌年の2012年度には、一次エネルギー供給量に占める化石燃料の割合が91%まで上昇したが、再エネの急拡大により2020年度には85%(そのうち石油36%、石炭25%、天然ガス24%、なお水力を除く再エネは10%)まで減少した。今までの最大値は1973年度の93%、最低値は1998年度の80%であり、我々の豊かさの一端は、ほぼ輸入に頼っている化石燃料に依存したものだった(図7)。

(略)

5.「低」では曖昧-脱炭素社会の実現

 2008年5月に筑波大学で行われた国際シンポジウムにおいて、スウェーデン・ベクショー大学のBjörn Zethræus教授が発表を行い、ベクショー市が1996年に化石燃料フリーを目指すことを全会一致で決定した経緯とその背景、その後の取組について熱弁をふるわれたのがいまだに忘れられない。当時の筆者は低炭素社会の実現に向けて様々なステークホルダーと議論していた頃だったが、今思えば「低」では、どの程度やれば良いのか曖昧さが残り、そのため80%の壁を超えるに至らなかったのではないか。

(略)

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