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2023年のCOP28で実施されたグローバル・ストックテイクの成果文書では、世界のこれまでのGHG排出量推移は、世界の気温上昇を1.5℃に抑える努力を追求するというパリ協定の目標と合致するものではなく、既存の約束を実施する余地・機会が急速に狭まっているとしている。そして、GHGの大幅で速やかかつ持続的な削減が必要であり、すべての締約国に対して、世界全体の努力への貢献を求めると共に、次期の国別削減目標(国が決定する貢献:NDC)を1.5℃目標と整合するものとするよう奨励している。これを踏まえ、2024年6月17日に発表されたG7プーリア・サミットの首脳コミュニケ において、日本を含むG7各国は「1.5℃に整合した野心的なNDCを提出することにコミット」を表明している。
では、日本は今後の排出削減目標をどのように設定すれば、1.5℃目標と整合したものとなるだろうか。本稿では、これまでの日本の排出削減の進捗を評価し、その上で、1.5℃目標に向けた日本の目指すべき目標について、国際的な議論を踏まえて検討した。
- 2030年に46%から50%削減(2013年比)という現行の日本政府の目標や、2050年ネット・ゼロを達成するためには、現在までの排出削減ペースに対し、一層の対策強化を行う必要がある。
- 2013年から2050年カーボンニュートラルへ直線的に排出量を下げる経路では1.5℃整合とは言えない。また、世界全体の1.5℃整合経路を達成するためには、経済的に成熟している先進国は途上国・新興国に比べ早いペースで削減することが必要となる。さらに、先進国としての立場も踏まえると、日本を含め先進国は、グローバルでの1.5℃整合経路よりも速いペースで削減する目標を設定しなければ、1.5℃目標と整合的と主張するのは難しい。
- 今後NDCを決定する際に、その目標がグローバル・ストックテイクで奨励されているように1.5℃目標に整合する、と主張するためには、1.5℃目標との整合性の根拠を明示することが必要である。
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