京都議定書の目標達成に向けて:日本が海外から排出削減クレジットを取得するためのステップ

Number 05

1997年に採択された京都議定書は、先進工業各国毎に異なる温室効果ガスの排出抑制・削減義務を課し、第一約束期間中(2008〜12年)に先進工業国全体として温室効果ガスを1990年比で少なくとも5%削減することを目標として定めている。国連気候変動枠組条約(UNFCCC)事務局が、2006年5月にとりまとめた京都議定書目標達成に向けた進捗状況に関する報告書(FCCC/SBI/2006/INF.2)によると、議定書批准先進工業諸国の2003年の総排出量は、経済移行国で経済活動が停滞したため、1990年比で6.2%減少し、先進工業諸国全体での削減目標については達成できそうな見通しである。他方で、各国の状況を個別に見てみると、日本やEUの一部の国は、目標達成が危うい状
況にある。

日本政府が2005年4月に採択した京都議定書目標達成計画は、これまでの政策措置では、2010年の排出量は1990年比で6%増加すると予測している。したがって日本が京都議定書で負った1990年比6%の削減目標を達成するためには、排出量を12%相当削減しなければならないことになる。同計画は、この12%のうち、6.5%を国内政策措置、3.9%を国内吸収源の活用によって削減し、残りの1.6%(第一約束期間中に約1億トンのCO2)を京都メカニズムの活用によって達成する方針を打ち出した。政府は京都メカニズムを有効活用するために、民間企業によるCDM及びJIプロジェクト実施補助金として57億円(5,400万USドル、2005年度)を準備し、また2006年7月から、買取制度(京都クレジット取得事業)を開始した。しかしながら、同計画による京都メカニズム活用措置では、1.6%相当のクレジット取得に不確実性が残る。一方、国内措置による削減や国内吸収源による確保についても楽観視はできない状況にあり、京都議定書上の目標を達成するには、クレジットを1.6%以上取得することが必要となる可能性もある。

このように日本が京都議定書で負った目標を達成するには、少なくとも1.6%相当のクレジットを海外から取得することが必要である。本ポリシー・ブリーフでは、そのための方策として、盧買取制度の実施上の効果を高める、盪国内排出量取引制度を設置し、それを他国の排出量取引制度と連携する、という二つのステップを提案する。

Remarks:

English version available:
http://pub.iges.or.jp/modules/envirolib/view.php?docid=786

Date: