気候変動と森林に関する国際動向-COP26の報告

In 杣径
Non Peer-reviewed Article

2021年11月に開催された気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)は、気候変動対策における森林の役割がこれまでになく脚光を浴びた会合となった。開催国の英国政府は、世界の気候変動対策の加速に向けてリーダーシップを発揮し、世界リーダーズサミットを開催した。サミットの第2日目は「森林・土地利用に関する行動」と題され、英国ジョンソン首相、チャールズ皇太子、米国バイデン大統領などがスピーチを行った。このような森林をトピックとした首脳レベルの会合が開かれ、さらに世界のリーダーが気候変動対策における森林や自然生態系の重要性と協働の必要性を呼びかけることは、「未だかつてないこと」といってよいだろう。本稿では、COP26における森林関連の国際動向を報告する。

COP26を振り返ると、森林に対して未だかつてないほどの注目が集まった会合であった。森林と土地利用に関するグラスゴー首脳宣言を始め、新しい大規模な資金拠出へのプレッジに、加えてLEAFのような企業の具体的な取組みの進展も見られた。宣言やプレッジについては今後の動向にも十分着目しなければならないが、COP26において森林が注目されたのは、パリ協定の掲げる「今世紀後半までに世界の排出量と吸収量を合わせて実質ゼロにする」という目標に対して、「確実に吸収源としての機能を果たすことのできる森林の重要性」が強く認識されたためと言える。世界は、森林に頼らずしてネットゼロ社会を構築できないのである。COP26は、この考え方が、今や国際的に標準となっていることを示した。

日本においても、ネットゼロ社会の構築における森林・林業の役割を改めて精査する時期にあると考えられる。日本におけるネットゼロの達成において森林にどのような役割を持たせるのか、日本における持続可能な土地利用とはどのようなものかを検討し明らかにすることは重要である。日本の状況は熱帯の森林国とは異なり、農地転用による森林減少が深刻な問題ではないが、これまで管理されてきた民間所有の森林が、将来も適切に管理されるためにも、森林の価値を考慮した持続可能な土地利用を促進する具体的なメカニズムの検討は重要となるだろう。その際には、本稿で紹介したLEAFやそれに関連する国際動向、企業の考え方を考慮して制度を設計する必要があるだろう。さらに、日本国内だけにおいてネットゼロを達成することを目標に据えるのではなく、世界全体でネットゼロを達成するという国際的な視点も忘れるべきはない。世界全体でネットゼロを達成しなければ、地球温暖化を止められないからである。

Date: