土地利用分野での地球温暖化対策の展望 ─土地利用分野における民間企業の参画─

In 海外の森林と林業
Volume (Issue): 108
Non Peer-reviewed Article

最近、地球温暖化対策において森林を含めた土地 利用分野の重要性が強調されている。2015 年の国 連気候変動枠組条約の第21 回締約国会議(COP 21)で採択されたパリ協定では、気温上昇を工業化 以前と比較して2℃ないしは1.5℃上昇までに抑えることが長期目標として合意された。これを受け、 IPCC が2018 年に公表した「1.5℃特別報告書」1)で は、目標達成のためにはすべての部門で従来にない 大規模なGHG 排出削減が必要であるが、それだけ では不十分で、森林等の吸収源を同時に活用する必 要性が示された。それに続いて2019 年に公表され た「気候変動と土地に関する特別報告書」2)を森林分野について要約すれば、現在は大きな排出源となっている天然林の減少を抑制し、2050 年までに 森林面積を現在よりも250 万km2 程度拡大するこ と(参考までインドの面積は約320 万km2)、さらにそのために農地と放牧地を縮小させることが必要 であるとしている。森林減少が現在も進行している 中、このような将来像の提示は衝撃的ともいえるだ ろう。

これまでも、民間企業は自社の排出削減に加え、 京都議定書の下で実施されたクリーン開発メカニズ ム(CDM)等を活用したカーボン・オフセットを 実施してきた。パリ協定の下では、1.5℃目標達成 のためにScience Based Targets(SBT)やRE100(企 業が事業の使用電力を100%再エネで賄うことを目 指す国際的な企業連合)等のイニシアティブに自主 的に取り組み、主にビジネスで使用するエネルギー の「脱炭素」を目指す企業も増加している。過去に は、植林等による吸収源をカーボン・オフセットに 活用することが化石燃料使用による排出削減努力を そぐことになるという懸念もあったが、現在では地 球温暖化の影響を最小限にとどめるためには、排出 削減と吸収源の拡大を大規模かつ同時に行い、2050 年までに社会全体でネットゼロ排出を目指すことが 大前提となっている。本稿では、このような社会の トランジションの中で、民間企業が森林を含めた土 地利用分野での地球温暖化対策にどのように関わる ことができるのかを改めて見直してみたい。

Author:
基志
平塚
Date: