令和6年度 適応M&E ツールの途上国でのNAP等プロセスへの実装業務 報告書

Commissioned Report

平成27年11月、日本では「気候変動の影響への適応計画」が閣議決定され、開発途上国に対する有効な気候変動適応計画策定支援が我が国の戦略の一つとして盛り込まれた。また、同年12 月に国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の下で合意されたパリ協定においても、気候変動適応分野における国際協力の重要性が述べられている。さらには、平成30 年11月に閣議決定された「気候変動適応計画」第1章第4節(6)では、開発途上国の適応能力向上への貢献として、アジア太平洋気候変動適応情報プラットフォーム(AP-PLAT)構築と、その活用により科学的知見に基づく国家適応計画(NAP)策定支援や、我が国事業者の適応ビジネス国際展開促進、様々な国際協力スキームの活用による技術協力の推進を求めている。

開発途上国における気候変動適応計画立案においては、モニタリングと評価(M&E)が求められるものの、適応プロセスの進捗やゴールは多種多様であり、汎用的なM&E 支援ツールの開発は困難であった。その要因として、NAPや適応プロセスの進捗は様々であり、開発途上国の行政官がM&E を行う目的や対象セクターの性質に合わせてM&E 手法自体を設計する必要があるという、適応の構造的な問題が挙げられる。また、M&E は一般に、適応計画立案と実施を促進するための手段に外ならず、適応プロセスの目的は気候変動に強靭な社会の実現にある。このような問題認識の下、環境省は「令和3年度国際協力用気候変動適応M&E 手法設計業務」において、ユーザーと対話型で適応計画立案と実施の進捗を評価できるM&E ツール「Japan Adaptation Monitoring and Evaluation System」(以下、「JAMES」(仮称))を開発し、Web サービスとして開発途上国に無償で公開している。更に環境省は、「令和5年度AP-PLAT を通じた国際支援業務」において、アジア太平洋地域途上国行政官向けにこのJAMES を活用したワークショップを実施し、途上国での適応プロセスの実施促進に向けたJAMES の機能改善提案を取りまとめている。
本業務は、これまでの成果を踏まえ、ユーザー対話型適応M&E ツールJAMES を開発途上国の諸都市における適応計画や防災計画等の気候変動適応推進プロセスに実装し、途上国の地域での適応プロセス推進を支援した。更に、国際援助機関や開発コンサルタント等が実施する支援事業とJAMES の連携可能性についても検討を行った。

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