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環境報告書を作成する日本企業は、ここ数年毎年倍増する勢いで増加している。「地球にやさしい企業行動調査」[環境省(2001a)]によれば、調査対象上場企業の中で、環境情報を開示している企業の比率は、35.7%(1998年度)→40.9%(1999年度)→51.0%(2000年度)と増加傾向にあり、その中で環境報告書を発行している企業に比率も、30.9%(1998年度)→37.3%(1999 年度)→45.9%(2000年度)と増加している。このような傾向は、2000年6月に国際的な民間組織GRI(Global Reporting Initiative)から「持続可能性報告のガイドライン」が公表されたことに加え、2001年2月には環境省から「環境報告書ガイドライン(2000 年度版)」が、同6月には経済産業省から「環境レポーティングガイドライン」が発表されたため、一層増加することが予想される。
同時に環境報告書の中で環境会計情報を公開する企業も急増している。「環境会計」という言葉が一般的ではなかった1990年代前半には、環境コスト情報を集計・開示している企業は少数であった。しかしながら、環境省(2001a)によれば、上記の環境情報を開示していると回答した上場企業のうち、環境会計情報を開示している企業の比率は、10.4%(1998年度)→20.9%(1999年度)→27.0%(2000年度)と数は多くないものの、着実な増加傾向にある。また、全上場企業に対する環境会計の導入の質問に関しては、2000年度では有効回答企業のうち17.3%がすでに導入していると回答し、34.2%の企業が導入を検討していると返答している。
このような動向は、1999年3月に環境庁(現環境省)から「環境保全コストの把握および公表に関するガイドライン(中間取りまとめ)」が公表されたことと、同年度に富士通 を皮切りに環境先進企業といわれる企業群が環境会計情報を公表したことから、一般に普及し始めたと考えられる。さらに2000年5月には環境省から「環境会計ガイドライン(2000年版)」が発行され、先に示した環境省の「環境報告書ガイドライン」や経済産業省「環境レポーティングガイドライン」では、環境報告書に記載すべき項目として環境会計を列挙していることから、環境会計を導入・公表する企業がより一層増加する傾向にあると予想される。
これらのガイドラインが実務に与える影響は大きいものと推測されるが、一方でガイドラインは企業の自主的な活動を促進するものであって規制ではなく、また内容的にも実務的な手法・手続きを詳細に定めたものではないため、環境会計の実務にどのような影響をどの程度与えているかは重要な研究課題である。
本研究では、日本企業が開示する環境会計情報を分析することにより、日本企業の環境会計実務の特徴を明らかにするとともに、環境省ガイドラインが日本企業に及ぼす影響力についても検討することを目的としている。
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