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Volume (Issue): Vol. 36 No. 2
サステイナビリティ・サイエンスは21世紀の人類の存続にとっての重要な科学であり,2000年頃以降,その発展が行われるよう様々な試みが行われてきた。一方,2015年以降の環境政策は目指すべき社会ビジョンの更新を伴いつつ大きな展開を見せている。本稿では,そのような時代のニーズに適合したサステイナビリティ・サイエンスの展開を見据え,これまでのサイエンスの動向とサステイナビリティの概念の具体化の進展を確認したうえで,人間–地球環境システムの複雑性のもとでの理解と社会としての認知,社会目標の再考と将来継承性,人間–地球環境システムの転換の3つの観点から,人新世の時代におけるサステイナビリティ・サイエンスの展開を論じた。最終的にまとめた11の論点として,例えば,複雑な人間–地球環境システムのより包括的な理解は大幅に進められてきたが,研究の数が増えているからといって重要なサステイナビリティ問題が必ずしもカバーできているわけではなく,サブシステム間の相互作用を本格的に扱う研究は発展途上であること,社会目標の再考や高次のニーズのクライテリアの設定においてはトランス・サイエンスの観点から社会との対話を続けて民主性と科学性の両立を図ること,経済成長・GDPに変わる社会目標として幸福度の研究が進展しているが「人生の評価」としての幸福度の研究への展開や因果推論などに研究課題を残していること,世代間問題の解消・緩和という研究と実践が進展しはじめているが多くの研究課題を残していること,ビジョンの形成からスタートし試行検討を通じてシステム転換を図る創発型の政策アプローチは従来の環境政策アプローチとは大きく異なるという認識が必要で,共創や協働,ネットワーク型のガバナンス手法を採用しながら実践知を獲得すべきこと,上記のための人材育成やその教育効果の実証研究が求められることなどを指摘した。
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