世界の持続可能性を考える上で、気候変動の緩和や適応、生物多様性や地域社会の生計向上に重要な役割を果たす森林の重要性の認識が高まっています。しかし、それにもかかわらず、世界の森林減少が続いています(参考1)。こうした状況で、森林減少防止のための重要な解決策の1つと考えられている、「管轄(jurisdictional)REDD+」について解説するセミナーを開催しました。
IGESはこれまで、世界の森林減少問題解決に貢献するために、森林に関する国際的な議論を日本国内に発信してきました(参考2)。中でも、森林カーボンクレジットの国際的な議論の動向は国内の企業などからも関心が高い話題です。ボランタリーカーボン市場における森林、土地セクター由来のカーボンクレジットは45.8%と圧倒的なシェアを占めているものの、世界の森林減少防止のために必要な資金動員はまだまだ不足しています。この不足をうめるためにも、民間・公的資金投入のツールの1つとして、森林関連のカーボンクレジットが機能する必要があります。しかし、最近のプロジェクトレベルのREDD+カーボンクレジットに対する批判(ベースライン設定、及びリーケージ問題)等は、民間企業が森林クレジットへの投資を躊躇する一因となっているのではないかと懸念されます(参考3)。
プロジェクトレベルのREDD+クレジットの問題の解決策の1つとしてあげられているのが管轄REDD+への移行です。管轄REDD+は、そもそも国連気候変動枠組条約(UNFCCC)で合意された国・準国レベルで取り組むREDD+の形であり、約10年の準備(readiness)期間を経て、ようやくいくつかの国でクレジットが発行できる段階になってきています。2021年のUNFCCC第26回締約国会議(COP26)では、ノルウェー、英国、米国政府と、アマゾン、ネスレ、ユニリーバなどの民間企業が有志で立ち上げた官民共同イニシアティブであるLEAF(The Lowering Emissions by Accelerating Forest finance)が、管轄REDD+に対して、10億ドルを拠出したと発表しました(参考4)。
このような国際的な潮流にもかかわらず、管轄REDD+の日本における認知度はまだ高くありません。そこで本セミナーでは、Architecture for REDD+ Transactions (ART)の瀧本麻子さんをお招きし、管轄REDD+クレジット発行プログラムThe REDD+ Environmental Excellence Standard (TREES)について解説していただきました。
本セミナーはパート1をオンラインと対面のハイブリッド形式で実施し、その録画を公開しました。
Event Details
パート1 IGES 東京サステイナビリティフォーラムとオンラインのハイブリッド
パート2 IGES 東京サステイナビリティフォーラムでの会場参加
IGES 東京サステイナビリティフォーラム
東京都港区西新橋1-14-2 新橋SYビル4F
Presentation Materials
【パート1】オンラインセミナー
15:00 | 開会 司会: 山ノ下 麻木乃 IGES生物多様性と森林領域 ジョイントプログラムディレクター | ||
15:00-15:10 | シーンセッティング 梅宮 知佐 IGES生物多様性と森林領域 リサーチマネージャー | 発表資料 | |
15:10-15:40 | 管轄REDD+とはーART TREESの概要及び経験の共有(仮)瀧本 麻子 ART事務局 アソシエイトディレクター | 発表資料 | |
15:40-16:00 | 質疑 |
【パート2】会場でのディスカッション(クローズド)
16:00-17:00 | スピーカー、会場参加者、IGES研究員を交えたオープンディスカッション
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