公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)および国立研究開発法人国立環境研究所(NIES)が、統一的な枠組みのもと比較可能な形で複数都市におけるライフスタイル転換効果を分析する手法を世界で初めて開発・提案し、日本の主要都市の実情を踏まえた脱炭素型ライフスタイルの65の選択肢と定量的効果を明らかにしました。
先行研究では国単位での平均をもとにした分析が一般的でしたが、本研究ではこの手法を用いて全国の県庁所在地および政令指定都市52都市を対象とすることで、地理的特性を考慮しつつも、製品やサービス、エネルギー消費ならびに域外依存度が高く、気候変動への影響が相対的に大きい都市圏において、より実効性の高い脱炭素型ライフスタイルへの転換を進める一助になることを目指しています。
本研究成果は、環境分野の学術誌「Environmental Research Letters」のほか、国立環境研究所のウェブサイトでも個別都市のデータを日本語にてご確認いただけます。
研究成果のポイント
- 各都市における平均的なライフスタイルから、平均的な温室効果ガス排出量を都市別に推計し、「移動」「住居」「食」「レジャー」「消費財」領域での65の脱炭素に向けた選択肢を特定
- 各選択肢の温室効果ガス削減効果を都市別に定量化し、都市間における効果や優先順位の違い、パリ協定1.5℃目標達成に対して有効な選択肢の組み合わせを分析
- 1.5℃目標達成には、脱炭素型かつ高効率な製品サービスの採用などの「効率性」対策に加えて、テレワークや食生活の転換、消費財の長期使用などの行動変容を通じた「充足性」ライフスタイルの実践が不可欠
私たちの暮らしを支えるために直接的・間接的に排出される温室効果ガスは、排出量全体の6割以上を占めています。2019年6月、日本政府は『パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略』を閣議決定し、ライフスタイルが技術や社会システムと並ぶイノベーション推進領域であると位置づけました。また2021年7月6日現在、日本の417自治体が、2050年までに二酸化炭素排出実質ゼロにする「ゼロカーボン・シティ」宣言を行うなど、より生活に根差した形での脱炭素化の土壌は整いつつあります。一方で、これまでの議論は国内や行政区域内における直接的な温室効果ガス排出や、個別の製品ないし商品の効率改善といった技術的な対策が中心で、必ずしもグローバルな人やモノ、サービスの移動や消費行動、ビジネスモデルや社会システムのあり方を十分に考慮したものではありませんでした。
こうした状況を変えるべく、IGESは、2020年1月にパリ協定の目標達成と豊かな暮らしの両立を探るレポート『1.5℃ライフスタイル―脱炭素型の暮らしを実現する選択肢―』を発表して以降、市民向けのワークショップや学校での特別授業、児童書監修といった実践研究および情報発信を積極的に行ってきました。今回の研究成果を活用しながら、今後も私たちひとりひとりの無理のない行動変容および、それらを起点にしたビジネスモデルや社会システムの転換につなげてまいります。
研究の詳細は、国立環境研究所との共同プレスリリースをご覧ください。
関連リンク
- IOP Publishing「Environmental Research Letters」
- 国立環境研究所「国内52都市における脱炭素型ライフスタイルの選択肢 カーボンフットプリントと削減効果の可視化」
- 地球環境戦略研究機関『1.5℃ライフスタイル―脱炭素型の暮らしを実現する選択肢―』