日本国環境省が2020年9月3日(木)に主催する閣僚級会合「新型コロナウイルスからの復興及び気候変動・環境政策に係るオンライン会議」に際し、武内和彦IGES理事長が寄せたコメントが、9月1日(火) 、公開されました。
環境省は、新型コロナウイルス(COVID-19)からの復興に際し、より持続可能かつしなやかで包摂的な社会を目指すイニシアティブ「Online Platform for Sustainable and Resilient Recovery from COVID-19 (“Platform for Redesign 2020”)」を、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)事務局とともに主導しています。その一環として、同会合では、参画を希望する世界の政府高官ならびにステークホルダーが知見や政策を共有し、COVID-19および気候変動をはじめとする環境危機からの復興に向けての議論を深めます。
武内理事長は、アジア太平洋地域の持続可能な開発を推進する政策研究機関の立場から、COVID-19の背景にある人間と自然との距離感の変容および、より良い形での復興に必要なもの、本イニシアティブの意義について語っています。なお、IGESは本会合開催および情報共有のためのウェブサイト構築・運用にも貢献しています。
武内理事長メッセージ(英語)
https://platform2020redesign.org/stakeholders/
関連リンク
PLATFORM for REDESIGN 2020 - Online Platform on Sustainable and Resilient Recovery from COVID-19
https://platform2020redesign.org/
メッセージ全文(和訳)
COVID-19の感染拡大は、その根源をたどると、人類と生態系の間の非持続的な相互作用の結果といえるでしょう。急速に世界にウイルスが広がったことも、急激なグローバル化の進展がもたらしたリスクといえるでしょう。それゆえ、パンデミック後の社会をどのような社会にしたいのか検討を始めるにあたり、グローバル化の負の側面を減らしながら、自然とともにより持続可能に生きられるような政策の枠組が求められます。はたして、どのような政策の枠組がこうした目的の達成に有益でしょうか?ここでは、日本および他のアジア太平洋地域での事例として、「地域循環共生圏」(CES)を紹介させていただきたいと思います。
地域循環共生圏は、「自然共生社会」、「循環型社会」、「脱炭素社会」という3つの社会像を統合化することを目指しています。それを進めるためは、いくつかの社会変革が求められます。そうした変革のひとつが、分散型社会の形成と適切な規模での自然資源管理です。これにより、より適切な自然資源利用、エネルギーや交通に関連する二酸化炭素排出量の削減、そしてサプライチェーンの混乱につながる脆弱性の低減が促されるでしょう。もうひとつの変革は、これまで見逃されがちであった都市・農村間の生態系サービスの保全です。これは単に資源の流れを改善するだけでなく、里山ランドスケープに代表されるような、自然の緩衝地帯の再生にも有用なものです。3つ目の変革は、不可欠なニーズを満たす、地域資源により依拠したコミュニティの活性化です。これは、働く場の創出や持続可能な生計につながりうるものです。
地域循環共生圏では、資源利用のローカル化を求める一方で、グローバル化の良い面を活用することがますます重要となることも認識しています。とくにUNDESA, UNFCCC、CBD、UNDRRなどの国際機関は、ヒト・情報・技術の交流を通じて、分散型でありつつもグローバルな社会とつながっている社会の構築に向け、各国が独自の統合的な資源管理アプローチを適用できるよう支援しています。私たちIGESも、「より良い復興」と「ともに前進する」ためには、国際協力が不可欠であると確信しています。