解説シリーズ
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第4弾:SDGsと水問題

去る3月22日に、国連が定めた世界水の日を記念し各地でイベントが開催され、4月には第7回世界水フォーラムが韓国で開催されるなど、水問題への関心が高まっています。水分野はSDGsの17つの目標のうち、他分野にも深く関係する非常に重要な分野です。では、どのように水の目標を理解し実施していけば良いのでしょうか。こういった問いに答えるべく、最近IGESポリシーブリーフ「水分野をSDGsの中心に据える:なぜ統合的視点が必要なのか」を発表した著者の三名に解説頂きました。

最近、水問題が注目されているのはどうしてでしょうか?また、適切な対策が取られなければ主にどのようなリスクがありますか?
water meeting

ビナヤ:

2015年は水と持続可能な開発にとって重要な年となります。まず、ミレニアム開発目標(MDGs)の水に関する目標(安全かつ衛生的な水へのアクセス等)、また、その実施を促進するために国連が定めた「命のための水」に関する国際行動10年(International Decade for action on ‘Water for Life’)のいずれも最終年に当たり、また、次の国際開発目標であるSDGsが国際的な合意を見ます。更に、今後の気候変動対策の重要な節目となる国連気候変動会議(COP21)が12月にパリで開催されます。

グローバル・リスク報告書(2015)では、水の安全保障に関わる危機が影響としては最も甚大であると特筆しています。水資源保全のための努力の不足により、飲料水、衛生、公衆衛生、食糧生産、エネルギー、生態系、環境など多くの水に関連した問題が高いリスクに直面しています。深刻化しつつある水不足、汚染、長期の干ばつ、洪水、台風などの気候変動の影響は水の安全保障にとって主要なリスクとなっており、持続可能な開発を実現困難なものにしています。

現行のSDGs案では、水の重要性が認識され単独の目標が提案されていますが、水の安全保障の危機に対応するには十分なのでしょうか。

マグナス:

SDGs案では、これまでの合意よりも水の重要性が明確に扱われており、水単独の目標が設けられていることは歓迎します。ただし、この国際目標が実際に水の安全保障リスクをどの程度軽減できることになるかは未知数ですが、水に関する目標の下にあるターゲットでは、基本的なニーズを満たすためのアクセスの確保、水利用の効率性の向上、汚染対策と生態系の保護等が包括的で、しかもバランス良く設けられています。

水の問題は益々複雑に、しかも他の分野との関連性が高まっており、予測が困難となっています。水に関するターゲットは他の開発目標と相反することもあれば、相乗効果を持つこともあります。現状として散見されますが、政府や主な関係者が特定の分野に絞って対応しようとすると、その成果は限定的なものになるかもしれません。我々の報告の中でも、水分野のみを考えるのではなく、水と関連する他の分野の目標やターゲットについても仔細に検討し、水に関する分野横断的な計画や管理、いわゆる「統合的アプローチ」が重要であることについて特に提言をしています。

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発表された報告では、この「統合的アプローチ」の必要性についてどのように提言されていますか?

エリック:

本報告では、統合的アプローチは世界中の水の安全保障リスクを軽減するために極めて重要であることを提言しています。具体的には、水とその他の分野の相乗効果を促進するように、SDGsの実施においては政策、プログラム、行動計画の内容をしっかりと確保しておくことが重要です。国によって優先課題は異なるかもしれませんが、こうした方針を認識しておくことが重要です。例えば、水へのアクセスを優先する国もあれば、水利用効率の向上や水システムの改善等を優先する国もあります。

こうした統合的アプローチを進めていくには、それを可能にするための実施体制の強化も必要です。そのためには、10年、15年を要することを念頭に、じっくりと進めていかなければなりません。IGESでは、こうした視点から、アジアでの統合的な水管理において必要とされる戦略的な研究や人材の養成を図ることが可能です。

最後に、水関連SDGsを実施するための「統合的アプローチ」について優良事例があれば教えてください。

ビナヤ:

統合的アプローチの優良事例として、特定のケースを個別に取り上げるのは困難ですが、例えば、日本では、2014年に「水循環基本法」が制定されました。この法律は、水関連の課題を包括的に扱っており、水の循環という自然のプロセスを土台としていることで、SDGsの実施に関連してきます。水管理の根本として水の循環を捉えることは、大変科学的なアプローチと言えます。なお、この法律では、地表水と地下水の両方を水システムの中で統合的に扱っています。

こうしたアプローチによって、水の循環には物理的な流れのプロセスだけではなく、環境や人間のニーズとの相互作用としての観点も見ることができます。この法律は制定されてまだ間もないため、成果については引き続きよく見ていく必要がありますが、日本としてこの法律の実施面における経験を、支援を必要とする国々との間で共有していくことで建設的な役割を担うことができるものと考えます。

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