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第2弾:SDGs交渉の実態と私たちへの影響とは?

SDGsの国際議論が活発化する中、SDGsの交渉ってどんなもので、私たちにどんな影響があるの?という声に答えるべく、これまで外務省で多くの国際会議に携わってきた岩藤統括研究ディレクター兼プリンシパル・フェローに解説いただきました。

SDGs交渉の現状と今後のプロセスについて教えてください。また、今後のSDGs交渉で難航する点とその理由を教えてください。

岩藤:

SDGsは、2015年以降の持続可能な開発のための目標を策定するということだが、もともとはMDGsの流れとして議論してきたものを発展させたものであると理解している。MDGsはミレニアム宣言を基に少人数で非常にコンパクトなものを作ったものであるため、ある意味、途上国は押し付けられたと感じ、プロセスに不満が残っていたのかもしれない。SDGsは、リオ+20で策定することが合意された当初から、2015年以降の開発アジェンダに統合されるという前提で議論されているため、自分たちの声が反映されるべき、と結局相当な数の政府が交渉の場についたと聞いている。こうした意味では、項目が多岐にわたりすぎるきらいはあるが、多くの国が持続可能な開発についてとりあえず合意できたということは評価ができるのではないか

今後は、SDGsがポスト2015開発アジェンダにどのように組み込まれるかを注目すべきだろう。MDGsに比較したら相当幅広い内容を政府間交渉で合意したため、今後それを大幅に変えていくということは困難であろう。ポスト2015年開発アジェンダに関する国連事務総長統合報告書が2014年末までに発表されるが、事務総長は国連加盟国が交渉して出てきたものを勝手にいじることはないのではないか。今後は、気候変動や災害など重要なプロセスの結果が開発アジェンダに反映されることとなろうが、その主要な一つがSDGsオープン・ワーキング・グループ(OWG)の成果文書である。

SDGs交渉の良い点や今後の交渉もしくは実施に向けた課題があれば教えてください。

岩藤:

MDGsとの比較は難しいが、一見MDGsは基本的人間ニーズ(BHN)のような伝統的な開発問題を扱うものだと認識している。一方で、SDGsは元々リオ+20の成果文書にある多くの要素を17の目標案に埋め込んで、既存合意など過去を振り返る文は前文に置いているという印象があり、これらをSDGs OWG成果文書で簡潔にできたことは一定程度成功したと言える。多くの目標やターゲット案があるので、不満がある国もあるかとは思うが、交渉でとりあえず合意されたものであるし、途上国に限らず全ての国がそれぞれの置かれた状況の下で対応すべき持続可能な開発は社会・環境・経済全般に関ることであるため、シンプルにまとめられるとは考えられないだろう。

ただし、17も目標があって169もターゲットがあると実施する主体は何をしていいのかわかりにくい面はあるが、全ての国がすべてのことをしないといけないわけではなく、自国の優先事項が目標のどこにあるのか、自国にとっての意味合いは何か考えていくためのリストが提示されたと理解すればよいのではないか。国に限らず個々のステークホルダーがこれから何をやっていくべきなのか、何が関心を引き寄せ、何が自分を潤すことが出来るのか、何を強みにしていけばいいのか、また、それを実施するための体制はどうすればよいのか、について考えてそれぞれの計画を策定していくべきであろう。

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SDGsと気候変動との関係性に注目しているということですが、どういう影響が私たちにはあるのでしょうか。

岩藤:

image先般発表された、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第5次評価報告書(AR5)では、持続可能な開発と公平が気候変動対策の基礎になり、緩和を怠ると適応が間に合わなくなると言及されている。SDGsでは、健康や教育の改善を何年までに何をどこまでやればいいのか、経済はどこまで成長すればいいのか、という客観的な指標があまりない。一方で、気候変動に関してはここを超えたらまずいという目標値が示されており、そのためには何をしなければならない、それに失敗した場合はどうなるのか、ということが予測されている。これは、こうした気候変動対策を怠れば、SDGsで提案されているような森林、生態系、海洋等の多くの目標を達成すべく努力しても、その努力を全て損なわれてしまう可能性がある、という意味で重要だと思う。

では、SDGsの実施に向けて特に注目すべき点は何でしょうか。

岩藤:

実施手段(MOI)の一つに良く登場するステークホルダーの参加について注目している。SDGsを実施する上では、まず国がその意味合いを理解しなければならない。ある措置をとるときに、例えば気候変動が自分の地域なりの全体にどのような影響をもたらしうるかを一番よく把握しているのは個々の都市や地域であろう。特に多くの人口が集中するとみられている都市は地球の将来に影響力があり、積極的な参画が必要だと思う。また、こうした包括的なプロセスを進めていく上で、安定した方針を定めて実施していく上での強力なリーダーシップが必要になる。民主国家を前提とすれば、それを一人ひとりが分かって実行していかなければ、そういった政策は継続しない。その意味で、情報公開などを通じて様々な人を巻き込む必要がある。また、これまで伝統的な開発イシューはODAが念頭にあり、実施は政府だという意識が強かったため、SDGsの項目が必ずしも企業にとって魅力的に書かれているとは言いがたい。政府に関らず一番大きく実施に貢献できるであろう行動力を持つ企業を意識しながら、今後の交渉に取り組んでいくことが重要ではないか。更に実施を担う主体が国際社会全体として協力していけるかどうかが大変困難ではあるが重要なことだと思う。

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