持続可能な森林管理への試み:アジアで進む国際NGOの連携

IGESは、アジア太平洋地域において責任ある森林管理と木材貿易の推進を目指す専門機関のパートナーシップ「アジアにおける責任ある林業及び木材貿易(RAFT:Responsible Asia Forestry and Trade)」に参画しています。今月は、RAFTのアリソン・レウィンさんにこのユニークな取り組みと実際の活動について伺います。

6つの専門機関が連携

---RAFTの特徴を教えてください。

レウィン:
3つの点で、RAFTは他のプログラムと違うといえます。第一に、専門機関のパートナーシップだということです。パートナーシップの重要性はよく指摘されていますが、RAFTのように実際に複数の機関が協調しながら責務を果たしているケースは多くはないと思います。RAFTでは、地域戦略調整チームの下、6つの専門機関(*1)が責任ある森林管理と木材貿易の推進に向けて最適な形で連携し、重複を避けながらも、それぞれの強みを最大限発揮できるよう取り組んでいます。

二つ目は木材貿易の越境性です。アジア太平洋地域における違法で持続不可能な森林管理・木材貿易の問題解決に取り組むためには、地域的な対応が必要です。RAFTの機関が連携すれば、アジア太平洋地域の主要木材貿易国の大半をカバーでき、それによってこの地域が抱えている問題を包括的にとらえることができます。また、各国が互いの経験を学ぶ機会を提供することで(例:スタディーツアー、学習交流)、東南アジア諸国連合(ASEAN)やアジア太平洋経済協力(APEC)のような地域機関の情報源としての役割も果たすことができます。

そして三つ目は、政策との連携です。RAFTの参加機関にはそれぞれ強みと専門分野があり、特定分野の専門知識(例:低インパクト伐採(*2)、生産・流通・加工過程の管理認証)を持っている機関から、国・地方レベルでの規制プロセスに関わっている機関まで様々です。多様な機関が参加することで、現地の活動を政策の策定・改革に直結させ、政策要件に合った研修プログラムの実施や現地の状況に即した政策の策定につなげることができます。

また、RAFTが1回限りのプロジェクトではないという点も重要です。RAFTはオーストラリア政府と米国政府の支援を受けたマルチドナー・プログラムで、二期のフェーズにわたって実施されています。違法で破壊的な森林管理の誘因を根絶するには、持続的な投資と関与が不可欠です。そのためにパートナーの規模を拡大し、より多くのリソースを活用して地域・国レベルで継続的な効果を生み出していくことを目指しています。

地域のニーズに合った実践的な活動を展開

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---RAFTのパートナー機関はどのような活動に携わっているのですか?

レウィン:
幅広い活動を行っていますが、責任ある森林管理と木材貿易を推進する政策・マーケットシグナル(主要市場での木材輸入法やREDD+(*3)をめぐる政治的機運)の強化、そして優れた土地管理を行うための関係者の能力構築、が主な活動です。以下にいくつか実際の活動例を紹介します。

中国で木材合法性検証制度の構築に携わっている関係者への技術支援(中国への熱帯木材最大供給国であるパプアニューギニア産木材のリスク評価指針検証・改善を目的としたスタディーツアー等)。

大規模な低インパクト伐採の国家研修プログラム制度化につながるプログラムの開発・実施(パプアニューギニア木材・林業研修カレッジと共同実施)。

ラオス、インドネシア、ベトナムの45の地域を対象に、現地の製材会社との効果的な関係構築や林業認証を目指した研修の実施。

中国、インドネシア、ラオス、ベトナムの数百の木材製紙製品供給業者を対象とした、オーストラリア、ヨーロッパ、米国のバイヤーの求める合法性要件についての研修教材の作成・提供(将来的に地方・国の制度として研修を実施するための「研修者の研修」プログラムを含む)。

---RAFTは気候変動緩和のための森林保全という世界的な目標にどう貢献していますか?

レウィン:
端的に言えば、森林破壊と森林劣化を減少させるための能力構築と様々な規制枠組みへの情報提供です。これらが不十分だと世界の主な削減戦略であるREDD+は実現しないでしょう。例えば、インドネシアでは国内の森林面積の約半分が生産林に指定されていますが、同国の排出削減目標を実現するには、森林部門の温室効果ガス排出量を減少させる必要があります。ここでのRAFTの具体的な貢献例として挙げられるのは、木材生産量を維持しながら伐採による温室効果ガス排出量を最大45%削減する低インパクトで低炭素な伐採方法(RIL-C)の実施と、削減量を測定する方法論の開発です。これは、RAFTの一員であるThe Nature Conservancyがインドネシアの機関と共同で行っているREDD+パイロットプログラム「ベラウ森林カーボンプログラム(BFCP)」が実施されている東カリマンタン州ベラウ地区を対象としています。現在、1)樹洞のある木のように販売できない木材の伐採を禁止する、2)森林からの木材搬出にはブルドーザーではなく、木材を引きずり巻き上げるモノケーブルウインチを使用し、森林へのダメージを軽減する、3)若木の不必要な伐採を減少させるために運搬道路を狭くする、といった方策が試行されています。また、削減量の測定においては、カーボンオフセットの認証プログラム「The Voluntary Carbon Standard」の検証を受けており、認証後に他地域でも活用が可能になるでしょう。さらに、企業によるRIL-C導入の経済的な実現可能性を検証する取り組みも行っているところです。

---ありがとうございました。

  1. *1: IGES / The Nature Conservancy / The Forest Trust / The Tropical Forest Foundation / TRAFFIC - The Wildlife Trade Monitoring Network / 世界自然保護基金(WWF) Global Forest & Trade Network
  2. *2: Reduced Impact Logging (RIL):徹底した管理計画に基づく伐採(出典:京都大学森林生態学研究室)
  3. *3: Reduced Emissions from Deforestation and Forest Degradation in Developing Countries (REDD+):開発途上国が森林減少・劣化の抑制や森林保全により、温室効果ガスの排出を削減、あるいは森林炭素蓄積量を維持・増加させた際に、その削減量あるいは維持・増加量に応じて、先進国が途上国へ経済的インセンティブ(クレジット、資金等)を提供するメカニズム。
「Monthly Asian Focus: 持続可能なアジアへの視点」について

IGESでは、1998年の設立以来、アジア太平洋地域における環境問題や環境政策の動向をとりまとめた「アジアの環境重大ニュース」を毎年末に発表してきました。2011年からは、"持続可能なアジア"をキーワードに、ダイナミックに動きつつあるアジアの環境動向を、第一線で活躍する専門家の視点・考察とともにタイムリーにお届けしています。

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