IGES研究員にききました
    第6回 2015年1月
  • Kenji Asakawa

    ジャンヤ・サン-
    アルン

    IGES持続可能な消費と生産領域 副エリア・リーダー; 主任研究員

    アジア途上国における持続可能な固形廃棄物管理を専門とし、気候変動緩和、食料安全保障、代替エネルギー、貧困削減等への効果を研究。廃棄物管理と気候変動、有機廃棄物管理、統合的廃棄物管理に関する著書がある。


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Cambodia Map

フランス植民地時代の古い街並みを残すカンボジア第二の都市、バッタンバン市-近年、バッタンバンを訪れる海外からの観光客が増加していますが、観光資源の一つでもある市場は衛生状態やごみの管理に課題を抱えています。今回は、このバッタンバン市でIGESが実施している有機廃棄物(生ごみ)を堆肥化するためにごみを分別するパイロットプロジェクトについて、ジャンヤ・サン-アルン主任研究員にこれまでの取り組みと今後の課題について聞きました。

---プロジェクトの対象都市にバッタンバン市が選ばれた理由は何ですか?

サン-アルン:


  • Battambang

    現地での一般参加の廃棄物管理のワークショップ

プロジェクト実施期間だけでなく、終了後も活動を円滑に継続させていくために、私たちが重視しているのは自治体の意欲です。バッタンバン市は、当時の副市長(現市長)が廃棄物問題に特に強い関心を示し、2011年にIGESがバッタンバン市で実施した都市有機廃棄物利用の促進に関する研修ワークショップに市職員を10名以上送り込みました。さらに副市長自身が3日間のワークショップの全プログラムに参加したのです。私は、副市長がワークショップの運営チームと交流し、市職員と力を合わせて問題に取り組む姿に大変感銘を受けました。ワークショップ終了後、バッタンバン市の廃棄物管理向上のために現地支援を行ってほしいとの要請があり、日本の環境省からの支援を受け、2012年~2013年まで気候変動緩和に向けた有機廃棄物分別の能力開発・パイロットプロジェクトを実施することになったのです。このように、バッタンバン市のプロジェクトは、ボトムアップ・アプローチ、つまり、市側の強い熱意によって動き出しました。プロジェクトは成功裏に終了し、現在も市・民間部門・NGOなど現地のステークホルダー (*1)が協力して活動が続けられています。


---バッタンバン市では具体的にどのように有機廃棄物の分別を実施していますか?
またこれまでにどのような問題がありましたか?

  • Battambang

    廃棄物を分別するためのバケツを配布

  • Battambang

    IGESによる現場での現地職員へのフォローアップ

サン-アルン:


現地のステークホルダーがアイデアを出し合い、有機廃棄物の分別方法を考え、その後、市の条例として公布しました。条例が適用されたのはプロジェクトが行われる市場だけでしたが、カンボジア初の有機廃棄物分別に関する地方条例となりました。ところが、住民への周知が難しく、最初は任意に分別プログラムを実施し、時間をかけて徐々に条例として施行させていきました。

市場で有機廃棄物の分別を進めることは簡単ではありませんでした。「なぜ分別をして堆肥化しなければならないのか?」、「市場に店代を払っているのに、なぜ自分たちが清掃しなければならないのか?」「なぜ堆肥化施設が買い取りや分別をしないのか?」「なぜプラスチックごみは分別しないのか?」などといった疑問が市場の店主や住民から上がりました。また、せっかく分別しても、市場から委託されている清掃業者が再び廃棄物を混ぜ合わせてしまうこともあり、住民から不満が上がりました。しかし、私は逆に、こうした声は彼らが関心を示しているからだと考えました。そして、住民の意識向上と発想の転換を促すために、住民と廃棄物の投棄場や堆肥化施設を見学し、廃棄物がどのような影響を及ぼしているのかを正しく理解してもらえるようにしたのです。次から次へと新たな問題が発生しましたが、地元の強い熱意がなかったら、このプロジェクトはあっけなく失敗していたでしょう。

また、このプロジェクトでは、「マルチステークホルダー参加型アプローチ」を採用しており、プロジェクトの設計、アプローチ、実施に関する意思決定を地元のステークホルダーに委ねていました。彼らが「これはIGESのプロジェクトではない、自分たちのプロジェクトだ」として取り組みを進め、バッタンバン市は徐々に様々な問題に対処するようになりました。IGESは単なる進行役、技術提供者に徹し、市が資金面を含むあらゆる能力を最大限活用したのです。その結果、2014年の第1回全国クリーンコンテストで優勝することができました。また、その後も分別活動がさらに活発に行われているとの報告を市から受けたところです。

---この活動をカンボジアの他の都市でも実施できますか?
また今後の課題と目標を教えて下さい。

サン-アルン:


  • Climate Change

    「Yes, we can!」

できると信じています。このプロジェクトはカンボジアで成功した初の廃棄物分別プロジェクトとなり、既に他の自治体の職員がバッタンバン市を視察し、プロジェクトについて学んだり、技術支援を求めたりしています。IGESもプロジェクト終了時に他の自治体向けのワークショップを開催し、バッタンバン市の様々なステークホルダーが、カンボジア国内やミャンマー、ラオスの自治体関係者を対象にプロジェクトの実施事例を説明しました。現在、カンボジアのシェムリアップ市とカンポット市がバッタンバン市から学んだ教訓をもとに分別プロジェクトの準備を進めています。廃棄物管理は生活に密着した問題ですから、成功モデルが広まっていけば、規模を問わず他の自治体も進んで成功モデルを学び、地元の実情に合った形で導入しようとするはずです。もちろん技術的な問題に関しては、IGESや他の機関が引き続きアドバイスを行うことが必要ですが、指示をするのではなく、プロジェクトがスムーズに進むよう支援していくことが大切です。また、バッタンバン市が全国クリーンコンテストで優勝しましたが、このコンテストの表彰が、カンボジアの自治体にとって廃棄物管理に取り組む大きな動機になっているようです。

---ありがとうございました。

  1. *1: 市の職員、市場のオーナー、市場の店主による委員会、清掃業者、ゴミ回収業者、住民、NGO



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