IGES研究員にききました
    第4回 2014年10月
  • ポール・オフェイ・メヌ

    ポール・オフェイ・メヌ

    IGES持続可能な社会のための政策統合領域 研究員(持続可能性のための学習と教育)/ IGESプログラム・マネージメント・オフィス プログラムオフィサー(能力開発)

    宮城教育大学客員研究員、ガーナ大学上席研究員を経て現職。現在、持続可能な消費に関する教育(ESC)や質の高い教育及び持続可能な開発目標(SDGs)のほか、災害リスク削減(DRR)・DRR及び気候変動適応の相互関係性・持続可能な開発・ESD実施に関わる能力評価に関する研究に携わる。


IGESを知りたい

「質の高い教育」について考える:
持続可能な社会に向けて

今年11月に岡山と名古屋で持続可能な開発のための教育(ESD)(*1)に関するユネスコ世界会議が開かれます。今年で最終年を迎える「国連持続可能な開発のための教育の10年(DESD)(2005-2014)」(*2)の成果を振り返り、今後の方策について議論が行われます。今回は、ESDの最優先課題として「質の高い教育」を提唱しているポール・オフェイ・メヌ研究員に、これまでのESDの取り組みや今後の課題についてお話を伺います。

---今年はDESDの最後の年ですが、この10年間、ESDに関してどのような取り組みが行われてきましたか?

ポール:
  • ESD

DESDは、教育と学習のあらゆる側面に「持続可能な開発のための教育(ESD)」を組み込むことを目的に採択されました。教育は人権であり、人間が社会的に発達し幸せな生活を送る上で重要な役割を果たすと考えられているからです。ESDが目指しているのは、人々が持続可能な方法で社会を発展させるノウハウとスキルを身につけられるようにすることです。具体的には、新たな知識を得たり意見を共有すること、また、特にライフスタイルの選択を行う際にひとり一人がよく考えて判断できるようにすることです。そうすれば、家族、学校、地域社会、国、そして世界全体で協調した行動をとれるようになります。

この10年の間に、地方レベルから国際レベルまで、また正規(学校)教育か非正規(学校外)教育かを問わず、持続可能な開発の環境・経済・社会/文化的側面に焦点を当てた様々なESDの取り組みやプログラム、戦略が結果を出してきました。

例えば地方レベルでは、地域住民にとって社会/文化的に関わりのある持続可能性の問題を解決する中で、ESDが効果的に実践されています。また国家レベルでは、多くの政府が国の教育政策・指針だけでなく、正規教育部門のカリキュラム・評価にESDの要素を取り入れています 。


---ポールさんが研究している"持続可能な開発のための質の高い教育"とは何でしょうか?また今後の課題を教えて下さい。

  • ESD
ポール:

15年前に「万人のための教育(EFA: Education for All)」やミレニアム開発目標といった教育に関わる目標が設定されて以来、世界の就学児童数は大幅に増加しました。しかし、就学率や記憶学習法に力点をおいたため、学業成績の面で好ましい成果が得られておらず、適切な教員研修やカリキュラムの改善といった他の重要課題が見過ごされてきました。また現行の教育システムでは、不確実な未来や持続可能性の課題に対処する必要な能力・知識を子どもたちに身につけさせることができていません。

持続可能な開発には、「何を学び、どのように学び、どこで誰と学び、どのような文脈で学ぶのか?」を考慮した包括的な教育アプローチである「質の高い教育」が必要です。質の高い教育を行えば、意思決定や計画立案、問題解決において複雑な情報を分析・評価する力が身につきます。こうした能力は持続可能な社会を作り出す上で不可欠です。また、質の高い教育のアプローチを取ることで、様々な課題に個別に対応するよりも結果的にコストも少なくて済み、多くの人の教育へのアクセスも可能にします。


---ポールさんはガーナ出身ですが、ガーナでの教育の現状、そしてESDがどのように受け止められているかを日本と比較しながら教えて下さい。

ポール:

ガーナの「一般的な」教育システムはサハラ砂漠以南のアフリカで一流だと言われていて、高等教育は特に優秀だとみなされています。ガーナの初等教育就学率は約84%(日本は100%)で、「質の高い」教育に関しては、初等教育、高等教育がそれぞれ世界87位と46位です。しかし所得格差が原因で、子どもが受けられる教育に大きな差があります。また物的・人的資源において課題を抱え、特に有能な教師を確保し、学習にふさわしい環境を作るという点で深刻な課題があります。ESDという言葉自体はガーナの教育現場(特に高等教育)でも徐々に聞かれるようになっています。ただし、より一般的であるのは「気候変動適応に関する教育」 の方ですね。日本は世界で最も積極的かつ先進的にESDに取り組んでいる国のひとつで、教育のあらゆるレベルと部門でESDが実施されています。日本政府もESDの問題にとても積極的です。そもそも日本はDESDの提案国ですし、多くの機関を通してESDを推進し、資金面でも多大な貢献をしています。

---ありがとうございました。

  1. *1: 持続可能な開発のための教育(ESD): 地球に存在する人間を含めた命ある生物が、遠い未来までその営みを続けていくために、これらの課題を自らの問題として捉え、一人ひとりが自分にできることを考え、実践していくこと(think globally, act locally)を身につけ、課題解決につながる価値観や行動を生み出し、持続可能な社会を創造していくことを目指す学習や活動です。 (出典: 文部科学省ウェブサイト)

  2. *2: 2002年の「持続可能な開発に関する世界首脳会議(ヨハネスブルグサミット)」で当時の小泉総理大臣が持続可能な開発における人材育成の重要性を強調し、「持続可能な開発のための教育の10年」を提唱しました。これを受け、同年、国連第57回総会決議により、2005年から2014年までの10年を「国連ESDの10年(DESD)」とし、ユネスコが主導機関に指名されました。 (出典: 文部科学省ウェブサイト)



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