IGES研究員にききました
    第1回 2014年6月
  • Muneyuki Nakata

    仲田 宗行

    地球環境戦略研究機関 (IGES) 自然資源・生態系サービス領域 適応 研究員

    2005年にフィリピン大学へ1年間留学。2009年にイギリス・ヨーク大学より修士号取得(環境経済)。同年よりIGESにて勤務、2013年4月に適応チームに異動。これまで、東アジア環境大臣会合 (EAS EMM)、ASEAN+3(日中韓)環境大臣会合 (ASEAN+3 EMM)、日中韓環境大臣会合(TEMM)等のアジアにおける国際会議に関係する業務に従事。現在は気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第5次評価報告書に関する事業を担当。

IGESを知りたい

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)総会の
交渉現場に立ち会って

IGESの研究員が、自身の関わっているIGESの活動や研究テーマを時には裏話を交えて解説するインタビューシリーズを新しく始めます。
第1回目は、国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)(*1)の第5次評価報告書を承認する一連の会議に参加した仲田宗行研究員に交渉現場の様子や報告書への今後の期待について聞きました。IPCC第5次評価報告書は、国際的な温暖化の議論や各国が温暖化対策を進めるうえで根拠となる科学的な知見を提供するもので、2013-2014年にかけて3つの作業部会ごとに発表されたものです。

---仲田さんは、 報告書承認のための交渉の場に立ち会いましたが、
交渉は大変でしたか?

仲田:

  • IPCC横浜総会 (本人: 写真右端手前)
    写真提供 IISD/ENB

総会では、約30頁にわたる政策決定者向けサマリー(SPM: Summary for Policymakers)を1文ずつ、執筆者と政府代表団で承認していきます。基本的に全参加者がいる総会の場で全会一致により決議していくので、交渉には非常に多くの時間と労力がかかります。私は第1作業部会(WGI)から第3作業部会(WGIII)全ての総会に参加しましたが、全て最終日は徹夜でした。今年3月に横浜で開催された第2作業部会(WGII)の会合では、約30時間休みなしで協議をしました。最終日は3月29日の朝8時半頃から開始し、採択したのは30日の午後だった気がします。このため、会合の成否の1つの条件として、食事場所が会議場の近くにあることが挙げられます。これは余談ですが、横浜での総会の準備中にも、昼食会場の場所を重要事項として調整しました。夜中にお菓子を交換して交流している参加者もいます。

協議内容の性格が異なるので単純に比較は出来ませんが、例えば、国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)では、30前後の議題ごとに担当者が分科会に分かれて協議してそれぞれ数頁(10頁以上になるものもあると思いますが)の文書を採択していくケースが多いことを考えると、IPCC総会での労力は膨大です。

---IPCCの報告書は、今後どのように役立っていくのでしょうか?

仲田:

報告書は重要な科学的知見として、COP等の気候変動に関する国際交渉のプロセスに提供されます。2014年6月にドイツで開催されている気候変動枠組条約第40回補助機関会合(SB40)では、WGIIとWGIII報告書の執筆に関わった専門家が一部の会合に参加し、科学的なアドバイスを提供しています。2014年10月末にWGI~WGIII報告書の内容をまとめた統合報告書が採択されますが、12月にペルーで開催されるCOP20において、その内容が発表される予定になっています。また、WGIで世界の平均気温の上昇とこれまでの二酸化炭素の排出がほぼ比例関係にあること(*2)、WGIIで気候変動によって既に大きな影響が出ていること(*3)、WGIIIで2度目標を達成するには大幅な排出削減が必要であることが指摘されている点(*4)を考慮すれば、2015年に合意が予定されている2020年以降の新しい気候変動の法的枠組みの議論などにも影響を与えると思います。


---ありがとうございました。

  1. *1:人為起源による気候変化、影響、適応及び緩和方策に関し、科学的、技術的、社会経済学的な見地から包括的な評価を行うことを目的として、1988 年に国連環境計画(UNEP)と世界気象機関(WMO)により設立された組織。 (出典: JCCCA Website)

  2. *2: 二酸化炭素の累積の排出量によって、温暖化のレベルがある程度決まる。これは、将来的に特定の温度上昇に抑える場合、排出が許される二酸化炭素の量がある程度決まってくる事を指す(CO2回収貯留技術を考慮しない場合)。

  3. *3: 例えば、気候変動の影響によって、既に水資源の質と量への影響、陸水の生物の移動、食料生産が全体でネガティブな影響を受けている点等が指摘されている。

  4. *4: 例えば、66%以上の確率で、2100年時に産業革命以前比で2度上昇以内に抑え様とした場合、2050年時点でGHGの排出を40~70%(2010年比)の削減する必要があるとされている。



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