IPBES第2回総会での合意と課題
-2014年~2018年の作業計画

2014年1月

2013年12月9日から6日間、トルコのアンタルヤにおいて、生物多様性と生態系サービスの政府間プラットフォーム(IPBES:イプベス)第2回総会が行われた。加盟国からの77か国に加え、科学者やNGO、先住民など多様なオブザーバーが参加した本会議では、2014年から2018年までの作業計画と、関連予算、学際的専門家パネル(MEP)の選定手続きなどに焦点が当てられ、活発な議論が行われた。

作業計画は、生物多様性と生態系サービスに関する科学と政策のインターフェースを強化することを目的として、プラットフォームの目的や機能を実施するように設計されている。2014年から2018年の第一期間においては、地域・グローバル評価とテーマ・手法評価の二つのタイプの評価が計画されており、併せて、そのための必要な能力開発や成果物としてのカタログやデータ管理システムの作成が実施される予定である。その中で、2014年から迅速な評価を開始するFast-trackと呼ばれるものとして、「花粉媒介と食糧生産」(テーマ)、および「生物多様性と生態系サービスに関するシナリオとモデル」(手法)が本総会において選ばれた。これらについては、2015年末までに報告書やガイドラインが公表される予定である。その他、「地域/準地域」や「土地の劣化と復元」、「価値の概念化の手法」なども、スコーピング(対象や目的、必要な資源を決定すること)を含めて順次作業が進められる(下図参照)。

[図 作業スケジュール] Work Programme for the period 2014-2018 出典:IPBES/2/CRP.9 Work programme for the period 2014–2018    拡大する

この一連の作業計画では、少なくとも2つの大きな課題が想定される。不明確な各評価間の関係、そして価値の概念化の対立である。まず、地域、テーマ、手法の各評価の関係について、シナリオや価値評価などの手法は、地域やグローバルな評価に活用されることが想像されるが、テーマ別評価とのそれぞれの関連が十分に議論されていない。Fast-trackのひとつである花粉媒介と食糧生産の評価では、その経済的および非経済的な価値についても検討することとされているが、価値の概念化はスコーピングを2014年に始め、2015年に分析評価を開始するため、花粉媒介と食糧生産の評価への活用には間に合わない。また、侵略的外来種の評価のスコーピングが終わる頃には、地域/準地域評価は半分以上が完了している予定など、そもそも作業計画が各評価のシナジーを促すように構成されていない。各テーマの独立的な評価は、専門性や効率性の観点からは好ましいかもしれないが、大きな枠組みへの統合性のない単独的な評価では、その政策的意義も薄れてしまう可能性がある。複数の評価に共通の専門家を配置するなどして、評価間の関係性の強化に努める必要があるであろう。

価値の概念化は、本会議において最も活発な議論を呼んだもののひとつである。この項目は元々、「生物多様性と生態系サービスの価値・価値評価・勘定」という表題でFast-trackの対象とされていた。ところが、価値や価値評価における社会文化的な視点をより一層強調する意見が挙げられたことから、この評価の焦点自体が曖昧となり、最終的にこの項目はFast-trackから外されてしまった。しかし、考え方次第では、このような明確に意見の相違がある課題について十分な時間をスコーピングに費やす機会が得られたとも言える。そもそも、経済価値評価だけならば、既に生態系と生物多様性の経済学(TEEB)を含めて多くの研究がなされており、さらに世界銀行などが類似の取り組みを現在進めているため、敢えてIPBESにおいて同じことを繰り返す必要はない。むしろ、社会的・文化的価値を明示する方法を構築し、どの生態系サービスを経済価値以外で評価すべきかについて詳細な検討を行うことのほうが重要に思われる。その意味で、スコーピングは極めて重要な役割を果たすことになるであろう。

「科学」と「政策」、「人類」と「自然」の間のインターフェースを目指すIPBESは、「生態系サービス」と「自然の恵み」という似て非なる知識形態の統合も視野に入れ、野心的な活動を実施していく。時間軸やスコーピングにおける上記のような課題のみならず、予算や専門家等の選出手続きにおいても様々な課題が今後生じるであろうが、2020年までの愛知目標に対し有意義な成果を出すことが期待される。生態系サービスの評価などを通じて、私たちもこの政策プロセスに貢献していきたい。

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