日本のエネルギー需給・GHG排出はどうなる?

2012年6月
原子力への過度な期待の終焉

2011年3月の福島原発事故後、政府がこれまで描いてきた原子力に大きく依存した将来のエネルギー需給の姿は崩れ去った。これまでも原子力発電所は、地域住民の反発によりその建設は政府の見込みよりも大幅に遅れ、稼働率が世界平均よりはるかに低い事態が続いてきた。しかし、福島原発事故により国民の原子力エネルギーのリスクに対する意識はこれまで以上に高まった。今後、原子力に過度に期待することは理解が得られないだろう。

新しいエネルギー・環境戦略策定における気候変動対策の重要性

東日本大震災及び福島原発事故を受け、政府は夏頃に「革新的エネルギー・環境戦略」を発表することを表明している。政府は近々、各省庁の委員会での有識者による議論を基に「革新的エネルギー・環境戦略」に関する選択肢を国民に提示することになっている。

しかし、GHG排出削減などの気候変動対策や低炭素社会実現に関する議論は盛り上がっているとは言い難い。低炭素社会実現は環境の観点からだけでなく、経済競争の観点からもますます重要になっている。世界は国際的な気候変動対策枠組みの有無に関わらず、経済の低炭素化(グリーン・エコノミー)へ向けて動き出している。グリーン・エコノミーにおける国際競争を勝ち抜くにはまず、国内市場が成熟していなければならない。例えば、再エネを大量導入するにしても太陽光パネルや風力タービンの生産を外国のメーカーに頼っていては、化石燃料の輸入同様に国富が流出するだけである。そういう意味でも日本が低炭素社会実現に向けて官民挙げての積極的な行動を取ることは非常に重要である。

IGESから議論に一石を投じる

IGESでは昨年夏から日本の長期エネルギー・CO2排出シナリオに関するエネルギー技術経済モデルを用いた研究を行っており、6月初旬に最終報告書を発表した(*1)。本研究ではCO2排出を2050年までに1990年比80%削減する場合、福島原発事故以前の「エネルギー基本計画」のように原子力を増やしていくシナリオと、原子力を2050年までに段階的に低減させるシナリオとの間に、長期的なエネルギー需給の姿にどのような差が出るのかを比較した。その結果、原子力に頼らずに大規模なCO2排出削減を達成するには、現在専門家により想定されている最大限の再生可能エネルギーの導入に加え、これまで想定されていた以上の規模でのCO2回収・地下貯留(CCS)技術の導入が必要であることが示唆された。これら低炭素エネルギー供給技術を通じた大幅なCO2排出削減は経済的に実現可能ではあるが、同時にライフスタイルと経済構造の変化による経済活動の低炭素化がこれまで以上に重要になってくることも示唆された。これまでの経済成長の延長線上での低炭素社会実現、という考え方は捨てなければならないと言える。

IGESとして、本研究を通じ、福島原発事故後のエネルギー・環境政策策定へ向けた議論に一石を投じることができることを願っている。

脚注

  1. Bhattacharya, A., Janardhanan, N.K., Kuramochi, T. Balancing Japan's Energy and Climate Goals: Exploring Post Fukushima Energy Supply Options. IGES Policy Report No.2012-01.
    URL: https://pub.iges.or.jp/modules/envirolib/view.php?docid=3986
    (日本語版サマリー URL:http://www.iges.or.jp/jp/archive/press/pdf/12_06_04.pdf

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