気候変動とエネルギー

UNFCCC SB44 サイドイベント:

アジアの国別目標(Nationally Determined Contributions:NDCs)への野心
―パリ協定実施に向けた重要項目とアクションー

UNFCCC SB44 地球環境戦略研究機関(IGES)は、第44回国連気候変動枠組条約の補助機関会合(UNFCCC SB44)のサイドイベント「アジアの国別目標(Nationally Determined Contributions:NDCs)への野心」を、ドイツ・ボンにて2016年5月24日に開催しました。本サイドイベントは、海外環境協力センター(OECC)と共同で開催され、行動と支援に関する透明性枠組みや二国間クレジット制度(JCM)を含む協力的アプローチがどのようにアジア各国の国別約束草案(Intended Nationally Determined Contributions: INDC)の実施を支援できるかについて議論されました。

本イベントは、全三部で構成され、第一部では、パリ協定の下で行動を強化するための野心引き上げメカニズムの重要性に関する発表が行われました。第二部では、研究者やベトナムおよびフィリピンの代表者から、協力的アプローチ、透明性、関連する能力構築に関する発表が行われました。第三部では、会場の参加者との議論や質疑応答が展開されました。本イベントには、政府関係者、研究機関、NGO等から約30名の参加があり、積極的な意見交換が行われました。

日 時 2016年5月24日 15:00-16:30
会 場 ボン世界会議センター(ドイツ・ボン)
主 催 地球環境戦略研究機関(IGES)、
海外環境協力センター(OECC)
文 書
サマリー

本サイドイベントでは、発展途上国による国別目標の実施を支援するために、透明性の確保および効果的な能力構築に関する国際的ガイダンスの策定が迅速に行われることが重要であると議論された。現在、2020年の国別目標の提出に向けた国内議論を再開し、また国家MRV枠組みの改善を実施中のフィリピンからの参加者は、透明性枠組みにおいては一定の柔軟性が担保されることを期待する旨が述べられた。またベトナムからの参加者は、自国において国家レベルおよびセクター毎のMRVシステムの構築を実施するための能力構築が必要であると述べた。IGESは、国家レベルのMRVシステムは、自国で構築したプログラムだけでなく、他国主導で設立されたスキームの監督も行う必要があると強調した。一例としてパリ協定6条2項にあるような、多様な国別目標を掲げる国同士の協同行動により発生する国際移転可能な排出削減結果(Internationally Transferrable Mitigation Outcome)の取り扱いは、各国の削減努力の比較可能性を担保する上でも重要であると主張された。また、2020年に向け、パリ協定の能力構築連携でも目指されているように、強化された連携に基づく各国主導で拡張性の高い能力構築プログラムが重要であることも強調された。

田村堅太郎・IGES気候変動とエネルギー領域エリアリーダーは、野心引き上げメカニズムを通して各国の行動を強化する重要性を説明した。田村氏は、パリ協定が目指す長期目標と現在の国別約束草案の排出削減レベルにはギャップがあると指摘し、野心引き上げメカニズムによって国別目標を継続的に向上し、そのギャップを埋めることが重要であると強調した。また田村氏は、各国の取り組みに関する透明性の確保は、野心引き上げメカニズムにおいて重要な要素となるが、発展途上国は定期的なレポーティング等、透明性向上に関して課題を抱えていると述べた。

小柳百合子・OECC研究員は、二国間クレジット制度(JCM)のアジアにおける最新状況について発表を行った。小柳氏は、ベトナムにおける省エネプロジェクトを例に、JCMスキームによる排出量削減について説明し、インドネシアの2つのプロジェクトにおいて、初のクレジット発行が実施されたことを強調した。 小柳氏によれば、JCMはパリ協定下の協力的アプローチの一つとして引き続き実施されていく予定であり、更なる透明性強化のために、例えば専用のウェブサイトを通してプロジェクトに係わる関連情報を開示していくと述べた。

Aryanie Amellina・IGES研究員は、約束草案の実施に関する透明性について、様々なMRVシステム間のシナジーを構築することの重要性について発表した。Amellina氏は、MRVシステムに係わるこれまでの経験や支援が、アジア各国の約束草案における野心度に貢献していると述べた。同氏はまた、国家レベルのMRVシステムには今後パリ協定下での協力的アプローチを含む新たなイニシアティブが追加されていくと指摘し、それらのイニシアティブは更なる環境十全性および透明性の向上、またダブル・カウンティングの防止を担保すべきと述べた。JCMの能力構築から得られた知見として、Amellina氏は、スキーム・レベルでの簡潔かつ強固なMRVシステム、ダブル・カウンティングを防止するための国別監視制度、およびパリ協定では様々な種類の国別目標を認めるための柔軟性、が重要であると述べた。またその点で、国際的ガイダンスが必要であると指摘した。

Albert Magalang氏(フィリピン、環境・天然資源省気候変動室長)は、フィリピンの国別目標の実施に向けての進捗状況について発表を行った。Magalang氏は、フィリピンは現在、約束草案に用いた仮定やパラメーターの改定を通して約束草案の再構築を実施していることを説明し、国別目標の策定に向けてシステムおよび制度的取り決めの見直しを行っていると述べた。同氏は、強化された透明性枠組みは、条約締約国毎の異なる能力に対応するための柔軟性を確保すべきであると強調した。

Huynh Thi Lan Huong氏(ベトナム、水文気象環境研究所(IMHEN)気候変動研究センター副センター長)は、 ベトナムの国別目標の実施に向けての進捗状況について発表を行った。Huong氏は、ベトナムは現在、国レベルおよびセクター毎のMRVおよび透明性システムの構築に向けて取り組んでいると述べた。同氏はまた、国別報告書に用いたボトム・アップ作成アプローチを国別目標の実施に組み込む重要性を指摘し、また各国の経験を共有する重要性についても言及した。更にHuong氏は、特に民間事業者が、国別目標の実施に関する国際資金を獲得するための能力を構築していくことが必要であると強調した。

Michael Gillenwater氏 (温室効果ガス(GHG)管理協会、事務局長兼ディーン ) は、能力構築に際しての国際連携の重要性について発表を行った。はじめにGillenwater氏 は、先進国は過去20年に渡って今日のMRVシステムを構築してきたのに対し、途上国は今後5年間で同じ作業を完了することが求められていることを指摘し、途上国に対する能力構築支援の連携を図ることが重要であると強調した。同氏はまた、GHG管理協会が実施している能力構築のためのグローバル連合に関する紹介を行い、よりより能力構築のための教育方法、国毎のニーズに基づいた自発的なプログラムやその拡張性また費用対効果の高い取り組みの重要性について説明した。

Panel discussion

UNFCCC SB44 ディスカッションおよびQ&Aセッションでは、まず参加者からアジア各国が国別目標を実施する上で特に必要とされる能力の強化領域について質問がなされた。Magalang氏並びにHuong氏は、透明性枠組み下での将来的なガイドラインを満たすための能力強化が重要であると回答した。また、適応努力の進捗状況を確認し、更には評価するための枠組みを構築することも重要であると指摘した。その後、参加者からは、JCMの発展状況やプロジェクトの選定方法に関する質問がなされた。小柳氏は、JCMプロジェクトは提出された提案書から選出されていると回答した。また同氏は、よりリソースでより多くのプロジェクトを構築できるようになることを期待していると述べた。更には、ホスト国である発展途上国からプロジェクト提案が出てくることを期待していると続けた。最後に、参加者から能力構築に関する各国連携の必要性に関する質問がなされ、Gillenwater氏は、国際的な協議および分析(ICAプロセス)を超えて、各国がピア・レビューを行い、また定期的なフィードバックを相互に共有することが、国別報告書の作成プロセスの改善に役立つだろうと回答した。また、途上国がMRVシステムを構築する際の優先度について質問があった。アメリナ氏はレポート要件をまとめ、出来る限りスキーム要件との重複を軽減する必要があると指摘した。更には、第三者検証の技術的ルールの確立が重要であると述べた。

写真

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