ボン会合特別インタビュー
加藤OECD気候変動政策分析官

2014年7月

国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)における気候変動交渉にて大きな焦点の一つは資金に関するものです。同条約の下では、2020年までに先進国全体で官民合わせて年間1,000億米ドル(10兆円前後)を動員すること(長期資金)が決まっていますが、これをどこから調達し、どのように使うべきかついて議論がなされています。今回のSB40及び強化された行動のためのダーバン・プラットフォーム特別作業部会(ADP)への参加機会を活用して、日本を含む34加盟国から成り、先進国のシンクタンクとも呼ばれる機関である経済協力開発機構(OECD)の加藤気候変動分析官に、気候資金についてお話を伺いました。

---年間1,000億米ドルを動員すること(長期資金)は既に合意されていますが、何を1000億米ドルに含める/含めないかについては共通の定義が存在しません。これについて、どのようにお考えですか?

気候資金に含まれるレンジ(範囲の幅)は重要な課題ですが、一つの定義で全ての国が合意することは技術的にも、政治的にも困難だと思われます。また、定義に関する議論でも、緩和ではいくつか進展が見られましたが、適応は後れを取っています。ただし、様々な定義の可能性について議論することには、気候変動のフローを把握する観点から意義があると考えます。

---今までの資金は緩和に偏る傾向があったことから(*01) 、より適応への配分を増やすべきだという意見があります。そのためには適応分野への民間資金の参入が必要ですが、適応には民間セクターの参入が可能となるような機会はあるのでしょうか?

分野によると思います。民間資金は、企業にとってリスク対リターンが予見しやすいもの(例えば、既存の成功事例があるもの)に投資が集中しやすい傾向があります。適応事業の多くは、民間企業にとってのリターンが見えにくかったり、リスクや不確実性が高く、そのため民間参入によって資金分配のバランスを実現することは困難だと思います。ただし、適応について、多くはありませんが民間資金の投資が比較的容易な分野もあり、一部の保険事業や食品産業のサプライチェーンリスク管理等がそうです。また、あまり緩和と適応の分類に固執せず、適応・緩和の両方に資する事業を増やしていくことも必要です。民間投資を拡大するために、公的セクターの支援も当面は不可欠です。(i)公的資金を提供する側(国際的な気候ファンド等)の仕組みのあり方、(ii)成功/失敗事例の知恵を共有するための方法、そして(iii)より適応事業がしやすい各国国内政策の整備、を更に進めていく必要があります(*02)

---最後に、現在条約上で資金供与の義務を負っているのは、先進国(附属書II国)のみですが、経済成長を遂げた途上国の中には、既に援助(あるいは南南協力)を実施している国も見られます。これらの国が資金の供与においてより大きな役割を果たす可能性はあるのでしょうか?

気候変動の取り組みにおいては全ての締約国が行動する必要があり、気候変動関連資金の流れに関する状況は、1990年とは今では様変わりしました。これを踏まえると、経済成長を遂げた途上国が資金供与することは望ましい変化と言えます。例えば、 インドネシアが最近緑の気候基金(GCF)へのプレッジを発表しましたし、また重要な資金の出し手である多国間開発銀行(MDB)のシェアホルダーとなっている途上国もあります。今後さらに途上国間での資金フローを拡大するためには、Bankable(事業性・利益性のある)な気候変動関連事業を増やすことができるかが重要です。この点は、先進国から途上国への資金の流れを拡大するという観点でも同様です。」 「また、資金に関する貢献は、直接的な事業への投資という形で以外でもあり得ます。例えば緩和、適応ともに、今後もReadines(事業を実施するための能力・制度等)をより強化する努力は不可欠であり、これが十分でない場合には供与した資金が効率的、効果的に使われない可能性もあります。したがって、途上国による、自国内外でのReadinessの向上に資するような活動も有益な貢献と言えるでしょう。

---ありがとうございました。

*** ここに示された意見は全て回答者本人の責任に帰するものであり、OECD及びその加盟国の意見を必ずしも反映するものではありません。

*01: Mobilising International Climate Finance: Lessons from the Fast-Start Finance Period

*02: Scaling up and Replicating Effective Climate Finance Interventions(1.3MB) (OECD website)

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