ENB解説コラム:資金

2010~12年の気候変動に関する
先進国による資金支援とその教訓

2013年11月15日
「ワルシャワ会議ハイライト-2013年11月11日」 より引用
(GISPRIウェブサイト・Earth Negotiation Bulletin日本語版)
  1. 「フィジーはG-77/中国の立場で発言し…資金は気候変動に取り組む全ての野心的行動の基礎をなすと強調した。」
  2. 「ネパールはLDCsの立場で発言し、…先進国からの強力な資金約束を求めた。」
  3. 「サウジアラビアはアラブグループの立場で発言し、次の点を強調した:…途上国の行動に対する支援、これには2013~2020年の期間においても短期資金期間の資金供与を下まわらない程度の資金供与を行うことなどを含める。」
COP19メイン会場

11月11日、COP19がワルシャワで開始されたが、交渉の場では温室効果ガス(GHG)排出削減に関する議論はもちろんのこと、気候変動に関する先進国の資金支援(気候資金)の重要性を強調する発言、また気候資金の強化を求める発言が多く聞かれた。

EU等の例外はあるが、当然、このような気候資金に関する意見は途上国からのものが圧倒的に多い。途上国からすれば、歴史的に温室効果ガス(GHG)排出をしてきたのは先進国であり、その影響を途上国も被ることになる。気候変動枠組条約(条約)でも、第4条(約束)3項及び4項では、明確に、先進国(附属書II締約国)が途上国(非附属書II国)に対して資金を供与することが謳われている。一方、先進国政府の立場からすれば、日本をはじめ、EU、米国も緊縮財政の中、国内的に気候資金の提供は厳しいという状況もある。では、これまで、条約の下で先進国は一体どの程度の資金提供を求められてきたのだろうか。気候資金については、2009年のCOP15と翌年のCOP16において以下のような重要な決定があった。

(1)2010~2012年の間に、先進国全体で300億米ドルの資金提供(短期資金)

(2)2020年までの先進国全体で官民合わせて年間1,000億米ドル動員(長期資金)

(3)緑の気候基金(GCF: Green Climate Fund)の設立

このうち、(2)長期資金や(3)GCFの設立については、次回以降のENBコラムにおいて改めて詳しく取り上げる。本コラムでは(1)短期資金について解説したい。

短期資金については去年その期間が終了し、先進国は、350億米ドルを動員したことを報告した。IGESは、米国・世界資源研究所(WRI: World Resources Institute)と英国・海外開発研究所(ODI: Overseas Development Institute)と協力し、「国際社会の気候資金動員 ~短期資金支援(FSF: Fast-Start Finance)実施期間からの教訓~」を11月14日に発表している(*1)。同報告書は、短期資金の5大提供国(英・米・日・独・ノルウェー)に加え、短期資金の全供与国に関する公開情報を収集し、資金の供与形態だけでなく、資金供与の報告形態・透明性についても分析・比較したものである。以下は、同報告書の比較分析の結果の一部である。

  1. 2010年のカンクン合意では、短期資金の緩和(排出削減)と適応へのバランスの良い配分が謳われていたが、実際には短期資金の約7割が排出量削減関連に充てられ、適応に特化した支援は2割程度だった。

  2. 2010年のカンクン合意では、特に適応支援については気候変動影響に脆弱な国々への優先的な配分が謳われていたが、実際の短期資金の配分は、受取国の気候変動に対する脆弱性と強い関連性はなかった。同様に、緩和支援に関しても、必ずしも資金配分と受入国のGHG排出量との間の関連は高くなかった。

  3. 短期資金の半分近くが融資・保証・保険の形で行われ、これらは緩和支援に向けられる傾向があった。

  4. 短期資金の35%のみが直接の供与先を途上国政府としており、大部分は国際金融機関や二国間開発機関を通じた支援であった。

同報告書では、このような分析結果を基に、2013年以降の長期資金については、気候資金は各国のニーズ、状況、脆弱性をより踏まえた上での配分等のいくつかの提言をしている。

尚、昨年行われたCOP18 では、短期資金期間の終了を受け「2013~2015年の期間、先進国は短期資金の支援額の少なくとも年平均額の資金供与に向け一層努力することを奨励」することが合意された。ENBレポートにあるサウジアラビアの発言はこの決定を踏まえたものであると思われる。このような支援の「額」の議論も重要だが、2013年以降の気候資金の提供にあたっては、資金の配分に関する問題などの短期資金によって得られた「質」の面からの教訓も踏まえることもまた重要である。

*1: 同報告書に関するプレスリリースの情報はこちら »

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