新たな枠組みづくりにおける研究者による知識の集結

2014年5月 (Climate Edge 20号より)

新たな枠組み構築に向けた国連気候変動枠組条約(UNFCCC)交渉が本格する中、研究者、NGO、企業などからの知識や知見のインプットが一層求められてきている。たとえば、長期目標の検討(2013-2015年レビュー)においては、重要な情報源として、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第5次評価報告書(AR5)に加え、その他の情報を取り上げる必要性が確認されている(*1)。一方で新たな動きとして、昨年より、「強化された行動のためのダーバン・プラットフォーム特別作業部会(ADP)」のワークストリーム2(WS2)(後述)において分野に特化した専門家会合の開催が決定した。本年3月のADP会合では、再生可能エネルギー(RE)と省エネルギー(EE)に特化した技術専門家会合(TEM)が開催され、議論が行われた。6月には都市環境、土地利用に関するTEMが実施される予定である。

ADPのWS2は、2011年末に南アフリカ・ダーバンで開催された第17回締約国会議(COP17)での合意を受け、2012年5月に設置されたADPワークストリームのひとつである(*2)。WS2では、2013年後半から11月にポーランド・ワルシャワで開催されたCOP19にかけて、より焦点を絞った議論に移行すべきであると主張された。その背景として、交渉が多分に政治的であり、野心的な削減目標・行動に向けた合意が容易でない中、実質的なGHG削減を行うためには、研究者などの専門家からの知識や知見のインプットが重要と考えられていることを指摘できる。

COP19では、「適応や持続可能な開発コベネフィットを含み、実質的かつ幅広い展開および再現可能な政策・事業・技術の導入に焦点を当てた..排出削減可能性の高い行動に関する技術的検討を強化する(*3)」との内容が決定し、合わせてADPでは、締約国とオブザーバー機関に対し、「緩和策実施における便益、費用、コベネフィット、障壁、そして障壁を克服するための戦略、また、途上国における緩和策のための資金、技術、能力開発支援を含む情報に関する提出(*4)」を求めた。

こうしてWS2は、新たな2020年目標の交渉を行なうのではなく、国内外での気候変動対策の実施を促進する政策や技術による解決策の可能性を分析し、実証する場を提供することとなった。解決指向型のアプローチを用いて、UNFCCCの既存のプロセスを、よりデータに基づいた、技術的に厳密なものにすることにより、UNFCCCプロセスが補完され、野心の恒久的な推進力となること、各国の持続可能な開発目標と一貫した緩和活動に焦点を当てることで、交渉プロセスが共調的に実施され、締結国間の信頼を築くことができると期待された。

具体的には、専門家や実務家の経験や緩和努力の成功例を共有し、コストや障壁の分析、課題克服のための戦略と政策を識別し、実施することを目指した。最も効果的な緩和策をスケールアップし、国や地方自治体、市民社会、民間企業から参加する専門性の高い幅広いステークホルダーが国際的に協力し、全世界的に取り組むことにした。WS2は専門家を交えた技術的議論を行なう場であるTEMを提供するにいたり、締約国や研究機関にTEMへの参加が呼びかけられた。3月のTEMのREセッションでは、普及を加速化させるための安定した政策支援や資金調達が必要であること、EEセッションでは、法律で定められた、あるいは分野別戦略と対応した、省エネ戦略を打ち立てることが重要であるといった内容がまとめられた。会合結果は、2020年以前の野心の引き上げや2020以降の枠組みに関するオプションを提示し、新たな野心的政策や行動につながることが期待される。

国際低炭素社会研究ネットワーク(LCS-RNet)では、2015年にパリで開催予定のCOP21に向けて、メンバー国であるフランス、イギリス、イタリア、ドイツとともに「低炭素社会構築のために必要な技術的提案」をUNFCCC事務局に提出することを計画している。そのテーマは、エネルギー制度、産業および都市レベルの資源効率化、途上国の低炭素発展政策と国際協力、低炭素化のための資金、気候変動の緩和と適応分野を考えている。COP21に向け、研究者からの知見を集結させ、より実効的な気候変動対策の展開、新枠組み構築につなげたいと考えている。

*1:Climate Edge前号記事(吉野)(1.1MB)に詳述。
*2:Climate Edge前号記事(田村)(1.1MB)に詳述。
*3:FCCC/CP/2013/10/Add.1パラグラフ5(a)
*4:FCCC/ADP/2013/3, パラグラフ29

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