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グローバル・ストックテイクを巡る議論と今後の論点

2016年6月24日

パリ協定昨年12月にパリで開催された国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の第21回締約国会議(COP21)において締約国はパリ協定に合意した。本年4月22日にニューヨークにて開催されたパリ協定の署名式では、パリのモメンタムが継続していることを示すように170カ国以上が署名した(*1)。5月16日から26日には、COP21以来初の国連気候変動会議がドイツ・ボンにて開催され、パリ協定の実施に向けた議論が開始した。

パリ協定では、その目的として気候変動の脅威に対する世界全体の対応を強化するため、3つの長期目標を掲げている。第一に、長期的な気温目標を設定し、産業革命以前と比べて地球の平均気温を2℃より十分低く抑え、1.5℃以下に向けた努力を追求すること。第二に、気候変動の悪影響への適応力と気候耐性があり、温室効果ガス(GHG)が低排出な発展を促進すること。第三に、資金フローを低GHG排出と気候耐性のある発展の道筋に合致したものとすること(パリ協定2条*2)である。

このパリ協定の目的および長期目標に向けた世界全体の進捗状況を定期的に確認し、取り組みを強化していく仕組みとして、「グローバル・ストックテイク」がパリ協定の第14条に規定された。グローバル・ストックテイクは、各国が自主的に決定する貢献(NDC)を更新・提出する2年前に実施される。各国には、以下(3.)にあるように、グローバル・ストックテイクの成果を受けて、次のNDCにおける目標や取り組みを強化し、5年毎に徐々に引き上げていくことが求められている。

パリ協定14条は以下のとおり規定されている。

  • パリ協定の目的および長期目標の達成に向けた全体的な進捗を評価するために、パリ協定の実施状況について定期的に確認する(グローバル・ストックテイク)。これは、緩和、適応、実施手段と支援について、衡平および最新の科学に照らし、包括的かつ促進的な方法により実施される。
  • パリ協定締約国会議(CMA)が別段の決定を行う場合を除き、第一回グローバル・ストックテイクは2023年に実施され、その後は5年毎に実施される。
  • グローバル・ストックテイクの成果は、締約国が、この協定の規定に従って自国が決定する方法によりその行動や支援を更新し、および強化し、気候変動行動のための国際協力を強化する際の情報を提供する。

グローバル・ストックテイクの目的および実施頻度についてはパリ協定に規定されたが、その情報源や実施方法、形式などの詳細については2016年5月の補助機関会合およびパリ協定特別作業部会(APA)から議論を開始し、第一回CMAまでにCOPにて決定することになっている(*3)。

5月の会合では、科学上・技術上の助言のための補助機関会合(SBSTA)にて、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告書などがどのようにグローバル・ストックテイクに情報提供できるかをAPAに助言するための議論を開始した。会期中には、SBSTAとIPCCの共催による特別イベントが開催された(*4)。IPCC議長らが登壇し、パリ合意を受けて、2018年9月に1.5℃の排出パスに関する特別報告書の作成・公表を決定したこと、第一回グローバル・ストックテイクのある2023年の前年となる2022年には第6次評価報告書の統合報告書を採択予定であるとの説明があった。同イベントを経て、この議題に関して9月12日までに各国から意見提出を求めることを決定した(*5)。SBSTAにおけるIPCCからのインプットについての議論は、2016年11月の第二回APA会合までに結論を出すことを昨年のパリ会合で決定しているため(*6)、各国のサブミッションを基に迅速に議論を行い、結論を得る必要がある。

他方APAにおけるグローバル・ストックテイクの議論は、第一回CMAまでに結論を出すことになっている。5月の会合では時間が限られていたため、限定的な議論ではあったものの、緩和、適応、資金支援の三本柱で議論を別々、かつ並行して行うべきとの意見や、昨年末まで実施された長期目標および長期目標への進捗状況に関する定期レビューの際に行われた、専門家が発表を行い、各国との対話を行いながら議論を深めるという「専門家対話」のような形式の活用が有益であるとの意見が複数の交渉グループ、国から聞かれた。また、三つの並行した対話の後に、例えば閣僚級が参加する「政治的な」会合を開催する案も出された。SBSTA同様に、APAも、グローバル・ストックテイクに関して各国およびオブザーバーに、9月30日までに意見を提出するよう求めている(APA1結論文(*7)。

各国が現時点で提出している2020年以降のGHG削減目標はパリ協定の目的達成には不十分であるため、現在発表している取り組みが着実に実施されることはもとより、強化されることが不可欠である。そのためにも、各国の取り組みをより正確に把握できるような情報の提出、検証制度を構築していくことが重要である(透明性の議論を参照)。透明性の確保により、効果的なグローバル・ストックテイク、つまり現状確認が可能となる。その際、最新の科学を用いて長期目標への進捗状況を客観的に確認できるようにすることが重要である。更に、グローバル・ストックテイクの成果を政策決定者がきちんと確認し、受け止められる機会を作ることが、政治的なモメンタムの確保と、各国の取り組み強化に必要であると考えられる。また、例えば技術評価プロセスで特定された6分野の省エネ、再エネ、都市環境(交通)、炭素回収・利用・貯留、メタンやその他CO2以外のGHG、土地利用(*8)といった取り組みの強化が期待される分野を特定し、具体的な対応方法を検討し、共有することも、各国が自国の次の取り組みを検討する際に参考となるのではないだろうか。こうした考え方を踏まえたグローバル・ストックテイクの制度設計が求められる。

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