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パリ合意に向け意見収斂の兆しのみられる点と意見の相違が残る部分

2015年11月27日

11月30日より国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の第21回締約国会議(COP21)がフランス・パリで開催される。最も注目されるのは、UNFCCCの下で、2020年以降すべての締約国が参加する新たな枠組みと、2020年までの取り組みの強化について議論する「強化された行動のためのダーバン・プラットフォーム特別作業部会(ADP)」交渉の行方である。本編では、ADPにおける交渉文書を巡る議論の経緯を振り返ったあと、COP21を前に立場の隔たりが残る部分、収斂の兆しが見えた部分について概説する。

パリ合意に向けた交渉文書の変遷

昨年12月のADP2-7会合(COP20での開催)と本年3月のADP2-8会合の議論を経て、公式な交渉文書である「ジュネーブ・テキスト」が作成された。このジュネーブ・テキストは90ページに及び、各国が提案した全ての文言やオプションを残したままであったため非常にわかりにくいものであった。そのため、議論を促進することを目的に、ADP共同議長が非公式の文書(non-paper)という形で取りまとめたものが共同議長ツールと呼ばれるものである。


6月のADP2-9会合での議論を経て、7月24日版の共同議長ツールでは、これまでの意見・提案が「パート1:合意文書に含める内容」、「パート2:COP決定に含める内容」、「パート3:パート1あるいは2に含めるか否か更なる検討が必要な内容」という大枠の下で示された。この大枠に異論はみられず、以後の交渉は、2015年合意が法的効力を持つ中核的合意文書と詳細ルール等を含む関連決定(COP決定)から成るパッケージとなることを前提に進められることになった。


その後、ADP2-10会合最終日の各国からの要請に応じ、ADP共同議長が作成したのが、10月4日版の共同議長ツール(テキスト案)であった。これは20ページの簡潔な文書であり、ADP2-11会合では、この文書を基にパリ会合に向けて最後の5日間の議論を進めたいとの共同議長からの提案があった。しかし、途上国が重視している「差異化」や「気候変動影響による損失と被害」に関する文章が短く、中身がないものとなっている点などを理由に、途上国グループから強い反発があった。そこで、具体的な交渉を開始する前に、最低限の「外科手術的な加筆surgical insertion」を行うことになった。結果的に、ADP2-11は、途上国のみならず、先進国を含めて各国やグループが意見を追加し、それを整理するという作業を行ったため、意見をまとめていくための議論は十分に行われず、5日間の作業の結果、10月23日版の共同議長ツール(合意案・決定案)は63ページに増えた。

交渉テキストの流れ

パリに向けて:意見収斂がみられる部分と意見対立が残る部分

交渉文書案が多様な意見を反映して再度膨らむ一方で、意見のまとまりがみえ始めた点もあった。数年に一度実施することが提案されている「グローバル・ストックテーク(世界の進捗状況を測る仕組み)」の対象として、緩和のみならず、適応、支援をすべて含むという点である。緩和に絞るべきとの立場を示していた先進国側が適応、支援についても含みうるという方向に動いたためと考えられる。また、グローバル・ストックテークが各国個別の取り組みを検証するものではなく、締約国全体の進捗状況を確認する仕組みであること、既に行われている、あるいは行う予定の取り組みを検証(backward looking)するものであることについても意見の収斂がみられる。一方で、将来的に世界全体で必要な取り組みを検討し、それを基に、各国が次回以降提出する約束草案を検討(forward looking)する仕組みとすべきかどうか(例えば2℃目標を達成するのに必要な排出削減量を基に、各国の削減目標が十分か検討するなど)については意見の相違が残る。


ジェンダーに関する言及を含めることについては各国が同意する様子が見られ、後発開発途上国(LDCs)や小島嶼途上国(SIDS)についての特別な配慮の必要性、気候変動に関する教育・普及啓発の重要性についても反対国はなかった。

新枠組みにおいて、各国の緩和目標が各国持ち寄りのものとなることは明らかであり、適応についても各国が自主的に多様な取り組みを行っていくことはすでに明確である。適応に関する世界的な目標(グローバル・ゴール)の設定については、特に気候変動の影響に脆弱な国からは定量的な目標の設定を求める主張がある。一方、先進国は適応策の重要性を認めるものの、緩和目標の「気温上昇を2℃以内に抑える」といった世界的な目標の設定は個々の対応が必要で、定量化するのが困難な適応策には合わないなどの立場から議論が対立していた。しかし、定性的な目標であれば含めるとの方向で先進国からの歩み寄りがみられる。


新枠組み発効までの2020年以前の取り組みの強化については、緩和に関して国や地方自治体や地域の取り組みを共有し、促進していく仕組みである(Technical Examination Programme:TEP)を2020年まで継続することについては概ね支持がみられる。一方、適応に関するTEPも開催するという提案がアフリカグループから出されているが、議論の行方は不明瞭である。


また、気候変動の悪影響による損失と被害をパリ合意に含めるかどうかについては先進国と途上国間で最後まで議論となる可能性が大きい。先進国は、損失と被害を新枠組みの主要素として追加することを支持しない立場であり、G7エルマウ・サミット(2015年)では、責任や補償とは切り離した、気候変動に関する災害リスクに対処し、強靭性を構築するための保険や早期警戒システムの開発支援を提案していた。一方、途上国側は金銭換算が難しく保険システムの対象とはなりにくい非経済的な損害や被害をも重視しており、損失と被害の政治的な位置づけを高めたいとの意図も見られ、双方の立場の隔たりは依然大きい。


各国の取り組みの透明性の重要性は共通に認識されているものの、先進国と途上国あるいは、能力により、取り組みや報告の厳しさ、詳細さ、頻度などを「差異化」するかという点では意見の隔たりがある。


透明性の仕組みに限らず、全ての国が参加する枠組みの下で削減目標や資金支援を誰がどの程度、どのような性質の義務の下で行うのかなど、各国の義務にどのような違いを設定するのかという差異化の問題が、パリでの交渉の最大のポイントとなる。これまでのような先進国対途上国の二元論から脱却し、それぞれの国が自国の状況を反映した形で貢献を申し出る形で義務を果たすべきというのが先進国の立場である。対して、インド、ベネズエラなど一部の途上国(いわゆる同志途上国グループ)は、先進国と途上国という二元論に基づく差異化に固執している。この両極端に対し、一部のラテンアメリカ諸国や小島嶼国からは、先進国がリーダーシップを発揮することを前提に、途上国も含めたすべての国が能力応分の義務を果たすべきとの意見も出ており、この中間地点にどのように歩み寄れるのかが注目される。例えば、意志のある国に対しては資金の提供を呼びかける一方で、先進国全体としての資金動員目標を提示することに大多数の国が合意できれば、インドなどに対して圧力となり歩み寄りに近づけるかもしれない。


いずれにせよ、合意に向けては各国のこれまでの交渉ポジションを超えた政治判断が必要となるだろう。世界のリーダーをはじめ、各国の気候変動の新枠組み合意への関心は高まっている。パリでの議論の時間は限られている。議長からは、各国が立場を繰り返すのではなく、妥協案を提示できるように準備してきてもらいたいとの要請があった。パリでは、気候変動に対する世界の中長期的な取り組み強化への強いメッセージを発信し、各国が歩み寄ることで共通課題に前向きに取り組んでいけるような合意ができることを期待したい。

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