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  (2015年6月1-11日)

Climate Updates

「2℃目標は最低限、目標達成に向け世界全体で早急に行動が必要」 ―UNFCCC「2013-2015年レビュー」専門家対話最終報告書が提言

2015年6月1日

本年5月4日に、「2013-2015年レビュー」の専門家対話の最終報告書*1)が発表された。

レビューの背景

2013-2015年レビューは、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)において、世界の平均気温の上昇を産業革命以前のレベルから2℃以内に抑える長期目標(2℃目標)の妥当性を検証するとともに、長期目標への進捗状況についても検証するプロセスである。2013-2015年レビューは、2010年のUNFCCC第16回締約国会議(COP16)にて、1.5℃や1℃といったより野心度の高い長期目標を掲げることを主張していた国に対し、2℃目標の妥当性を定期的に検証するという条件で2℃目標への合意をとりつける妥協案として生まれた。さらに、締約国全体の2℃目標に向けた取り組みの実施状況も検証することになった。2013年から第一回レビューを開始し、2015年末まで実施予定であることから「2013-2015年レビュー」と呼ばれている。2013-2015年レビューは、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の専門家を中心に、IPCC以外の世界気象機関や国連食糧農業機関などの国際機関、緑の気候基金や地球環境ファシリティなどの資金・技術に関する支援組織などの専門家を招聘し、UNFCCC締約国からの参加者との質疑応答を中心とする対話を行う専門家対話(SED)にて議論が行われ、その議論を受けて交渉が進められている。

最終報告書の提言

このSEDにおける対話結果をまとめたSED最終報告書の提言の主なポイントは、以下のように要約される。

  • 2℃目標の長期目標としての妥当性について
    2℃目標を、達成する限りは危険がない「ガードレール」と捉えるのではなく、確実に守るべき気温上昇の上限値としての「ディフェンスライン」と捉えるべきである。2℃の気温上昇であっても、貧困層など異常気象を含む高いリスクにさらされる人々がいることから、2℃よりも低い気温の目標が望ましいが、一方で2℃目標を1.5℃目標に強化することに関しては科学的知見が不十分であり、気温が2℃上昇する場合と1.5℃上昇する場合で気候リスクの将来的な影響がどのように違うのかを評価することは依然として容易ではない。とはいえ、ディフェンスラインをできる限り低くすることが望ましく、長期目標の1.5℃への強化に関する検討について今後も継続する必要がある。その他、長期目標の示し方として、海面上昇や累積排出量で示す方法もあるが、現在の気温で示す方法が有効であることや、長期目標の妥当性評価において、地球全体を対象とするだけではなく、地域レベルでのリスク評価と価値判断が必要である。

  • 2℃目標に向けた取り組みの実施状況について
    世界は長期目標を達成する経路に乗っておらず、目標達成のためには現在各国が掲げている緩和目標や既存政策を強化し、現在の排出傾向を早急かつ大きく変化させる必要がある。特に、炭素価格の設定や、低炭素技術の促進などの取り組みの早急なスケールアップが求められる。また、対策を進めるための資金、技術移転、キャパシティ・ビルディングについては、UNFCCCの多様なプロセスにおいてスケールアップするための取り組みが存在しており、緑の気候基金の運用に向けた進捗も見られるが、それらすべてについて行動レベルの引き上げが必要である。
今後のスケジュール

6月1日よりドイツのボンで開催される国連気候変動会議では、本報告書の位置づけの議論を含め、2013-2015年レビューの成果や終了に向けた交渉が行われることになる。また、2013-2015年レビューの成果に基づき、締約国は「適切な行動」をとることが決められている。

まとめ

本報告書が長期目標の強化及び早急に野心的な行動を取る必要性を提言していることは、本年12月にパリで開催されるCOP21に向けた極めて重要なメッセージと言える。専門家の共通認識として、2℃は十分目標ではなく必要最小限の目標であり、1.5℃も引き続き視野に置くべきという指摘は、交渉担当者を含めすべてのステークホルダーが肝に銘じるべきであろう。COP21の合意の中で長期目標がどのように記載され、また目標達成に向け世界全体での早急な行動を促すことができるのか、注目したい。

  • Report on the structured expert dialogue on the 2013–2015 review. FCCC/SB/2015/INF.1.

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