Climate Updates
page1 page2

「気候変動対策の名の下で石炭火力発電所建設を支援する日本」報道について(1/2)

2014年12月8日

*本稿は米・世界資源研究所(WRI)、英・海外開発研究所(ODI)及び弊機関が 12月5日にWRIサイト上でリリースしたコメンタリー(*1)を基に作成したものである。

国連気候変動枠組条約(UNFCCC)第20回締約国会議(COP20)が始まったばかりの12月2日、「日本が『気候変動対策支援』の名の下にインドネシアで石炭火力発電所の建設支援を行っている」という内容の記事が共同通信(AP)より配信された(*2)。日本が2010年から2012年までの3年間に支援を行った気候資金(短期資金)に石炭火力発電所の建設支援を計上している件については、昨年末に弊機関が米・世界資源研究所(WRI)及び英・海外開発研究所(ODI)と取りまとめた共同研究報告書(*3)の中で既に指摘しているが、APの記事の中でUNFCCCのフィゲレス事務局長が「将来のエネルギーシステムにおいてCO2回収・貯留(CCS)なしの石炭火力の居場所はない」とコメントしていることもあり、UNFCCC交渉関係者の間で話題になっている。環境NGOの連合体である「気候行動ネットワーク(CAN)」は早速、その日の交渉で後ろ向きな国に皮肉を込めて贈られる「化石賞」に日本を選んだ(*4)。


同記事は、低炭素社会への転換に向けて国際的な気候資金が果たす役割について、改めて議論を喚起した。本稿ではこうした気候資金の在り方に関して3つの方向性を提示する。

1. 気候資金は低炭素社会への大転換に寄与する事業に優先的に投入される必要がある

多くの途上国では開発やエネルギー安全保障などの観点から、多くの場合において最も安価な(そしてしばしば最も環境を汚染する)エネルギー源、即ち石炭を選択せざるを得ない現実がある。このような現実を踏まえつつ途上国において気候変動対策を推進しようとするならば、気候資金の支援によって最も高効率な発電設備を導入することがひとつの選択肢となり得る。これにより、支援がなかった場合に導入されていたであろう通常の石炭火力発電よりも二酸化炭素(CO2)の排出を減らすことが可能となる。 

一方で、石炭火力発電所はいかに高効率であっても、他のエネルギー源と比較すればCO2排出原単位が高いことには変わりなく、また発電設備は一般的に運転期間が数十年に及ぶため、一旦建設されると長期間にわたり非効率的な CO2排出を固定化する結果となる。

地球はこうした「石炭火力を選択せざるを得ない」という現実的な選択を許容するだけの環境的な余裕を持っているのであろうか?2010年にメキシコ・カンクンで行われたCOP16では、産業革命以降の地球温暖化を2℃以下に抑制する観点からの大幅な温室効果ガス(GHG)排出削減の必要性が認識されている(2℃目標)。その実現のためには、産業革命以降の累積CO2排出量を1兆炭素トン以下に抑制する必要があることが、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第5次評価報告書(AR5)の中で明らかとなっている(*5)。しかし、人類は既にその半分以上のCO2を排出しており、現在のトレンドが続けば今後30年で排出は1兆炭素トンを越えてしまう(*6)。

これを止めるためには、省エネやエネルギーの低炭素化の漸進的な改善だけでは不十分なことは明らかである。例えば、米国、中国及びインドにおけるすべての既存石炭火力を日本の最高効率の石炭火力でリプレイスすると仮定した場合、日本の年間GHG総排出量を超える年間約15億トン/年のCO2削減効果があるという試算がある(*7)。この試算は同時に、これら3カ国における現在の石炭発電能力を維持するだけでも、CCSが導入されない限り、年間50億トン近いCO2の排出が2050年頃まで排出され続ける可能性も示唆している。2℃目標を66%の確率で達成できるシナリオにおける、2050年のGHG総排出量はCO2換算で約180~250億トン/年と報告されているので(*8)、上記3カ国の現在の石炭発電能力を維持するだけでその2~3割を占めてしまう計算になる。それゆえに、IPCC AR5では、2℃目標を達成するにはCCSなしの石炭火力発電所を2050年までにフェーズ・アウトさせる必要性が示唆されている(*9)。

エネルギー供給構造のみならず需要構造も含めて社会全体を低炭素な形へ大きく転換していくことが必要となる。限りある気候資金は、このような大転換(パラダイム・シフト)に直結する事業に投入されるべきであろう。

ページの先頭へ戻る