Climate Updates
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大規模な脱炭素化への道筋プロジェクト(DDPP)
2014年報告書の日本への示唆 (1/2ページ)

2014年11月26日

コロンビア大学ジェフリー・サックス教授を中心に主要排出15カ国の研究チームが参加する、2度目標達成に向けた各国の大規模な脱炭素化への道筋のあり方を示すプロジェクトであるDDPP(Deep Decarbonization Pathways Project)の2014年報告書(*1)が、9月の国連気候サミットに合わせて発表された。2度目標とは、温暖化による気温上昇を産業革命前に比べ2度未満に抑えようという目標のことであり、日本を含めた世界各国が合意している。DDPPが対象とする日本をはじめ中国、インド、ロシア等15カ国は、世界のエネルギー起源CO2排出量の約7割を占める(15カ国全体での2010年排出量は218億トン)。今回発表された2014年報告書は中間報告書であり、最終的な報告書は来年2015年に公表が予定されている。2014年報告書では、日本の脱炭素化シナリオを扱った一章もあるが、ここでは国毎の個別シナリオではなく、報告書全体から読み取れるポイント(電力の低炭素化の早期実現の重要性及び排出総量管理の重要性)を取り上げる。

脱炭素化への三つの柱とは?

DDPP2014年報告書の最大のハイライトの一つは、各国(特に新興国)がそれぞれの経済成長や国内優先事項を満たしながらも、大規模な脱炭素化を実現することが技術的に可能であることを示したことである。ここでは、現在、世界全体でみると一人あたり約4.4トン(日本は約9.3トン、米国は約16.9トン、中国は約5.3トン)排出しているエネルギー起源CO2排出量を、2度目標を達成するために必要な2050年時点での1.6トン(*2)を目指して、各国それぞれの事情を反映しながら、脱炭素化の道筋を描くという手法(いわゆる「バックキャスティング」)を用いた結果、15カ国全体の2050年における排出量は115億トン(2010年比で47%減)となっている(図1参照)。

図1:DDPP15カ国の排出パス(DDPP2014年報告書より)

図1

各国のエネルギーシステムの脱炭素化の道筋は、産業構造、インフラ・ストック、資源賦存量、技術レベルなど、各国事情を反映する形で描かれる。具体的には、(1)交通、物流、建物、産業などあらゆる消費部門における大幅なエネルギー効率向上とエネルギー節約、(2)電力の低炭素化、(3)交通、建物、産業など最終消費部門でのエネルギーミックスの最適化による低炭素化(石炭からガスへの転換、化石燃料から再エネや低炭素電力への転換など)を各国共通の脱炭素化戦略の3本柱としている。

今回描かれた脱炭素化のパスでは不十分

2014年報告書を読み解く際の留意点として、今回提示された脱炭素化の道筋(シナリオ)は2度未満抑制には不十分であることが挙げられる。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第5次評価報告書(IPCC AR5)では、比較的高い確率で2度未満抑制を実現するシナリオとして、2050年までに世界全体の温室効果ガス排出量を2010年比で40~70%削減することを想定している(*3)。2014年報告書のシナリオ(主要15カ国のエネルギー起源CO2排出量を2050年に2010年比で47%削減)は、確かにこの削減幅に入っているが、実は、2050年時点での削減幅を達成すれば2度目標も達成できるわけではない。IPCC AR5では、世界平均地上気温の上昇はCO2の累積排出量と比例することが示されている。DDPP15カ国合計での排出経路は図1のように大きな凸カーブを描いていることから、IPCC AR5が想定している2度目標と整合性のある累積排出量を超過してしまっている(図2)。来年2015年に発表される最終報告書では、いかにしてこの凸カーブをへこませるか、すなわちいかにして脱炭素化を前倒しにするのかが主要なテーマとなる。

図2:DDPPにおける排出パスと2度目標達成排出パスの違い

図2

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