Climate Updates

気候変動対策がより質の高い成長を促す-
ニュー・クライメイト・エコノミーが意思決定者向け提言を発信

2014年11月20日

「経済成長と気候変動対策は両立できる」――これが今年9月に発表されたニュー・クライメイト・エコノミー(NCE:New Climate Economy)報告書 ”Better Growth, Better Climate” の中心メッセージである。NCEは、イギリス、インドネシア、エチオピアなど7か国が設立した「経済と気候に関する世界委員会(世界委員会)」の中心プロジェクトであり、世界資源研究所(WRI)など8つの研究機関が共同で実施している。


NCEの最大の特徴は、政府・民間企業双方の意思決定者のアクションを促そうという強い意思と、それを支える戦略的アプローチである。世界委員会は、カルデロン議長(前メキシコ大統領)をはじめ首脳経験者や国際金融機関幹部などで構成され、委員は意思決定者の考え方を熟知している。また、スターン・レビューで有名なスターン卿を議長とし、ノーベル経済学賞受賞など著名経済学者を擁する経済学諮問パネルを設置している。NCE報告書の中心メッセージは、各国の意思決定者が景気・失業といった眼前の経済・社会問題を重視せざるを得ず、気候変動対策の優先度を上げられない現実への実践的な処方箋を示している。NCE報告書公表イベントは、今年9月の国連気候サミットの1週間前に国連本部で国連事務総長を招いて大々的に行われた。メッセージをターゲットに届けるための戦略は徹底している。


このような戦略のもと、NCE報告書は都市、土地利用、エネルギーに焦点を当て、資源効率改善、インフラ投資のグリーン化及びイノベーションを通じて、先進国、途上国を問わず気候変動対策と経済成長が両立できることを様々な事例に基づいて論じている。都市については、コンパクトで機能的な都市計画によって都市インフラ投資を2030年までに3兆ドル以上節約でき、CO2排出量を年間8億~15億トン削減できると推計している。土地利用については、全世界で劣化した土地の12%を回復することで、2億人の食を賄い、農家に年400億ドルの収入増をもたらし、年間20億トンのCO2排出削減が可能になると推計している。エネルギーに関しては、年間5,400億ドルに達する化石燃料消費への補助金を今後10年間で段階的に廃止することで、2030年までにCO2排出量を最大16億トン削減でき、世界のトップ企業1,000社のうち3割がエネルギー効率を10~20%改善することで2020年までに年間7億トンのCO2排出量削減が可能であると推計している。


これらはNCE報告書に含まれる提言の一部であるが、大気汚染改善による健康被害削減などのコベネフィットも含め、経済的便益を伴う対策の実施により、2度目標達成に必要とされる「2030年までのCO2排出量260億トン削減」の50~90%は達成できると推計している。また、炭素価格導入や再生エネルギーへの公的R&Dなどの政策が気候変動対策と経済成長両立の可能性を高める点を強調している。提言の多くは、日本においても有用である。少子高齢化、過疎化あるいは農林水産業衰退といった問題を抱えている日本においては、コンパクトシティ、再生可能エネルギーによる地方活性化など、気候変動対策に留まらない多くのコベネフィットが期待できる。

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