気候変動とエネルギー

2016 日印政策研究ワークショップ

IGESは、環境省からの請負業務の一環として、2016年8月30-31日に日本・環境省およびインド・エネルギー資源研究所(TERI)と共に日印政策研究ワークショップを開催した。インド、日本、フランス、アメリカ、EU代表部からの研究者・政府関係者等、計41名が参加し、パリ協定の採択を受け、1.5℃/2.0℃目標を達成するための野心引き上げメカニズムのあり方について積極的な意見交換を実施した。

日 時 2016年8月30-31日
場 所 インド・ニューデリ ハビタットセンター (マリーゴールドホール)
主 催 日本・環境省
共 催 地球環境戦略研究機関(IGES)
インド・エネルギー資源研究所(TERI)
使用言語 英語
参加者数 約40名
関連資料
発表資料
Overall Framing Presentation
Kentaro Tamura, IGES
PDF (1.8MB)
Assessment of Japan’s NDC and long-term goal
- Contributions of Asia-Pacific Integrated Model (AIM) –

Ken Oshiro, Mizuho Information & Research Institute / AIM Project Team
PDF (198KB)
Enhanced Transparency Framework: Setting the theme
Neha Pahuja, TERI
PDF (169KB)
The Global Stocktake: Assessment of the overall progress towards the objective of the Agreement and the long-term goal
Kentaro Tamura, IGES
PDF (660KB)
Adaptation-related issues in the Paris Agreement
Akiko Urakami, MOEJ
PDF (259KB)
サマリー
Introductory Session

本セッションの開会挨拶および基調講演では、過去数年間で、気候変動問題における国際的対話が大きな進展をみせてきていることが強調された。パリ協定は、中国、インド、米国、 EU 、日本、ブラジルなど、経済、社会、環境が異なる国が、差し迫った気候変動における対応の必要性を認識したという意味でも重要であることが述べられた。パリ協定のもと、既に新たな取り組みが形成され、同意されてきている。これを機に、各国は、様々な取り組みを実装に向けて開始する必要があることも指摘された。160以上の国がすでに約束草案(INDCs)を提出し、これまでに20カ国がパリ協定を批准した。これは好調な出だしである一方、対処しなければならない多くの課題が残っていることが共有された。

Session 1: NDCs and Long-term Low Greenhouse Gas Emission Development Strategies

フレーミングプレゼンテーションでは、長期的な戦略の重要性について述べられ、更に、NDCsと長期戦略の役割は、国内の低炭素社会に向けたガイドラインとして極めて重要であることを明らかにされた。ディスカッションでは、長期戦略は、各国の国家開発目標と地球規模の気候目標をリンクするものとなりうることが指摘された。また、パリ協定により、責任分担における明示的な議論は、暗黙的な議論へとパラダイムシフトが起こってきており、これは、たとえ各国が排出削減に向け異なる道筋を辿るとしても、各国が従うべき基準が必要であるということを示している、と述べられた。長期戦略を策定することにより、各国は、短期的な政策を熟考し、短期目標を包括的な目的に合わせることもできるだろうとも指摘された。最終目標が定められ、グローバル共通の目標を、各国の個別の目標に移すことができれば、長期戦略は、国家ビジョンを示し、強固な計画プロセスを立てることを可能にするだろうという意見もあった。

長期戦略を作成し、実行する際に多くの課題に直面することが指摘され、その一つとして、締約国の間での「戦略」における不明確な定義があげられた。締約国は、比較可能な目標となる戦略を作成するために、何が必要となるのかを理解し、共有する必要がある。また、将来の技術開発は、一般的に予測不可能であるとして、5年、10年を超えた長期計画は現実的ではないかもしれないことも指摘された。モデルや予測は、政策立案者に指針を示す手段としては有用であるが、予測には不確実性があり、モデルの結果をベースとして単純に決定を行うことはできないという意見も述べられた。長期戦略は、各国が目標や今後の方向を示すことができるが、長期的な削減の実現に向け、状況に合わせて選択できる柔軟性をもった要素も戦略に含まれなければならないことが議論された。

Session 2: Enhanced Transparency Framework

フレーミングプレゼンテーションでは、透明性は、パリ協定の中核となっていることが示され、INDCsの効果的な実施を促進するための透明性の枠組みについて説明された。パリ協定の第13条では、締約国からの支援、資金や技術目標における明確な定義が定めされており、第4条(緩和行動)と第7条(適応策)では、進捗状況を追跡といった、透明性の枠組みの重要性を示していることが述べされた。ディスカッションにおいては、柔軟性は多くの利点がある一方で、それは多くの場合、締約国の目標における比較の問題を呼び起こすことが指摘された。例えばINDCsが絶対値目標である国もあれば、原単位目標で示している国もあり、GHG排出削減目標でない国もある。そのため、共通の指標を持って評価するは困難であることが議論された。

また、締約国は、INDCsの進捗状況を評価するための独自の進捗指標を作成し、それから共通の進捗指標を作成するよう要請されるべきであるという提案も出された。技術的・制度的能力を強化する必要性も議論された。能力開発に関しては、今後数年間の議題の焦点となるべきであり、そうすることで途上国は先進国と同じレベルまで報告やレビューの能力を強化することができるということも提案された。本ワークショップの参加者からは、報告制度において経験のある国は、報告制度に関して経験の少ない国に対して支援する必要があるという発言もあった。これは、全体的取り組みに基づいた方法で、能力構築に効果的であり、どの国も多くの責任を負わずにすむと指摘された。またある参加者からは、締約国が、各国の能力に基づいてNDCsと議題を提出し、同時に、長期的には、すべての締約国が同様のレベルの報告およびレビュー能力を有するように、ダイナミックでかつ発展的な透明性の枠組みを設定していかなければならないと主張があった。

Session 3: Global Stocktake: Assessment of the overall progress towards the objective of the Agreement and the long-term goal

フレーミングプレゼンテーションでは、パリ協定の第14条には、長期目標の達成に向け、協調的に進捗状況を評価するため、合意を実行に移すためのグローバルストックテイクが必要であることが示されていると指摘された。これは、削減実施において集約的に結果を報告し、目標とのギャップを特定することを目的とした、5年ごとに見直す制度であるとの説明があった。ディスカッションでは、グローバルストックテイクのモダリティは、締約国が学び、貢献していく中で、前向きなプロセスを進めていくことができれば、気候行動に向けたさらなる機運を高めていくことができる期待されるとの意見があった。グローバルストックテイクは、締約国が全体的な努力を理解するうえで、国際的な気候対話において大変重要であることが議論された。

グローバルストックテイクの焦点は、パリ協定の第14条として定めされた全体的な進捗の評価であるといった議論もあった。透明性枠組みの役割は、各締約国の取り組みにおいて相互理解を向上させることであるが、グローバルストックテイクの成果は、気候行動の理解と強化であることを締約国に示すことだろうという意見も出た。また、グローバルストックテイクは、国際的取り組みの調整を支援するIPCCやUNEP(排出ギャップ報告書)などの国際機関からの報告の重要性や、研究コミュニティの役割についての議論もなされた。科学的な情報は、気候変動への取り組みを具体化、特に重点分野への取り組みを方向づけるため、グローバルストックテイクは、科学的な情報と知識を示すべきであるという意見もあった。グローバルストックテイクと透明性枠組みは、異なったものであり、異なる役割を担うものであるという主張は、参加者に一致した考えであった。

Session 4: Adaptation

フレーミングプレゼンテーションでは、パリ協定での適応関連の条約を紹介し、パリ協定は、国内の気候対応力を実現するために重要な課題とし、適応を前面に出した、と述べられた。ディスカッションでは、適応と緩和が異なる役割を果たしていることを強調された。適応は、国や地域間で異なるため、多くの課題がある。各国は、様々な脆弱性やリスクに直面するため、広く異なる適応策を採用することから、適応の柔軟性が重要なテーマであるとの議論もあった。適応における柔軟性は必要である一方で、柔軟性は、適応策や取り組みにおける追跡、比較、測定することをより困難にし、交渉を複雑にする、という意見もあった。適応に関するグローバル目標においては、適応は国や地域規模でのみ取り組みができるため、すべての締約国から公平な貢献を期待するグローバルな目標を策定することは非常に困難である、との指摘があった。そのため、このような目標策定に向けた最初のステップは、目標が達成されるべき時間枠だけでなく、どのように目標が解釈され、実施されるかを明確にすることである、との意見もあった。

更に、適応に関する議論では、締約国間で一貫した報告とレビューを行うことが重要であるという基本的な論点が持ち出された。参加者の一人は、パリ協定は、締約国に各国の能力を超えた義務や課題といった過度な負担をかけないことを明確にしているということからも、この論点をどのように展開していくかは特に重要であると主張した。したがって、国際的な支援は、特に大きなリスクに直面し、限られた資源を持つ途上国にとって必要であることも指摘された。また、国際的に調達された資金からの報告およびレビューの取り組みは、資金が、適切な地域に提供され、進捗を追跡できることを明確にすべきであることが指摘された。さらに、追加資金を必要とする領域が明示されるように、報告において、明確な方法で、国の状況を示すべきであるとの意見もあった。

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