気候変動とエネルギー

2016 日中政策研究ワークショップ

IGESは、環境省からの請負業務の一環として、2016年6月23日に日本・環境省および能源研究所(中国国家発展改革委員会エネルギー研究所、ERI)と共に日中政策研究ワークショップを開催した。中国、日本、アメリカ、ドイツからの研究者を中心に計40名が参加し、パリ協定の採択を受け、1.5℃/2.0℃目標を達成するための野心引き上げメカニズムのあり方について積極的な意見交換を実施した。

日 時 2016年6月23日
場 所 中国・北京市 中国職工之家 (チャイナ ピープル パレス)
主 催 日本・環境省
共 催 地球環境戦略研究機関(IGES)
能源研究所(中国国家発展改革委員会エネルギー研究所、ERI)
使用言語 英語
参加者数 40名
関連資料
発表資料
China’s Low Carbon and Energy Transition: Peaking CO2 emission in 2020 to 2022
Jiang Kejun, ERI, China
PDF (3.6MB)
China’s Carbon Emission Scenario Analysis
Liu Qiang, National Center for Climate Change Strategy and International Cooperation (NCSC), China
PDF (1.4MB)
Reinventing Fire: China -A Roadmap for China’s Revolution of Energy Production and Consumption To 2050-
Tian Zhiyu, ERI, China
PDF (2.2MB)
サマリー
Introductory Session

周大地(Dr. Dadi)・ERI 前所長ならびに田中・IGES統括フェローが 参加者にイベント参加への謝辞を述べた。両者は科学および知見共有の重要性を指摘し、気候変動に対処する上では特に国際的な意見交換や共同研究が必須であると述べた。

その後、中国人研究者3名から、中国の温室効果ガス(GHG)排出量の様々なシナリオ分析に関する発表が行われた。全てのモデルにおいて中国は2030年以前に排出量がピークに達することが示され、石炭消費のピークは2020~2022年頃にまで早まる可能性があることも指摘された。

Session 1: Linking NDCs and Long-term Strategies

パネリストは、1.5℃/2.0℃目標や今世紀後半に人為的排出量の実質(ほぼ)ゼロについて言及しつつ、パリ協定の目的を達成するための長期戦略の重要性を強調した。特に、長期戦略の構築プロセスについては、民間セクターや地方自治体を含む全ての関連ステークホルダーが国の発展戦略について議論し、考えを共有するためのプラットフォームとして機能させるべきであると指摘した。またその際、気候変動だけでなく、経済および社会成長という側面が議論されるべきであると述べた。更に、国別目標や政策措置を計画する際には、目標に向けたステップとしての短期行動が長期目標に与えうるロック・イン効果についても評価を行う重要性が言及された。政策措置として特にカーボン・プライシングや再生可能エネルギーの開発が紹介された。

イベント参加者の間には、長期戦略の策定プロセスやその中身について様々な意見があった。カーボン・バジェットの重要性を指摘する研究者もいる中、多くの参加者がグローバルな目標に対する衡平性を念頭に長期戦略が策定され、提出されるべきと強調した。また多くの研究者がボトムアップ・アプローチによって長期戦略は策定されるべきと主張する一方で、トップダウン・アプローチとの併用が重要であると主張する参加者もいた。全ての参加者が国際連携の重要性を再確認し、特に研究者間の連携が世界全体で蓄積される科学知見と国別の政治状況との間の乖離を埋め、国の成長戦略をパリ協定との整合性を保ちながら策定していく上で重要であると強調された。

Session 2: Enhanced Transparency Framework

参加者は、パリ協定の13条(行動と支援の透明性枠組み)について様々な見解を共有した。一部の研究者は、透明性枠組みは締約国のNDCの比較可能性を向上させ、ピア・プレッシャー等を生むことにより、各国が1.5℃/2.0℃目標達成のために野心を引き上げに貢献できると主張した。他方、13条の目的は締約国が整合性ある情報を提出し、また各国の国別目標の実施に向けた進捗状況を確認することであり、比較可能性だけが主要目的でないと主張する研究者もいた。更には、正確性と透明性の違いや、GHG排出量の算定方法と国別目標の進捗の違い、また国別目標自体の透明性とその進捗の透明性の違い等、関連する様々なコンセプトについての見解が共有された。

参加者はまた、透明性枠組みの下で各国のキャパシティを考慮し、柔軟性を提供するための方法について議論した。二分法に基づく報告システムを将来的に統合していくアプローチ、締約国各自が決定するティア(段階的方法)に基づき報告を行うアプローチ、異なるNDC様式に基づく差異化アプローチの3つが選択肢として挙げられ、 参加者間においてもどのアプローチが最適であるかについては意見が分かれた。

ただし、キャパビルの重要性や、既存の組織的アレンジメントや条約の下でのこれまでの経験を活かして透明性枠組みは構築されるべきであることは共通見解として示された。グローバル・ストックテイクとの連携については、グローバル・ストックテイクの目的が締約国の集合的努力を検証するためであるため、透明性枠組みは今の状況を明らかにするだけでなく、何が足りず、またこれからどこに向かって行くのかについての理解を促す必要があると述べられた。更にGHG排出量算定方法や国別インベントリの作成方法が簡易化される必要もある旨が共有された。

Session 3: The Global Stocktake

パネリストは、グローバル・ストックテイクは緩和や適応、さらには資金もカバーする包括的なプロセスであるべきだと主張した。そして将来の国別目標の構築に向けての情報提供を行うべきことで合意した。グローバル・ストックテイクは、ボトムアップ・アプローチに基づく国際枠組みにおける一種のソフト・コンプライアンス・システムであるべきと主張するパネリストがいる一方で、締約国のより野心的な行動を促すためにベストプラクティスを共有する機会であるべきと指摘するパネリストもいた。他の研究者からは、グローバル目標へのギャップを特定するだけでなく、どのようにギャップを埋めていくべきかも特定される必要があると強調した。

情報源について、パネリストの一人が排出量に加え、排出削減の速度、累積排出量、残りの排出可能量を検討することの重要性を指摘した。国別データに加え、科学的な情報の重要性も指摘された。多様な情報の統合方法についての答えは出なかった。セクターアプローチは民間セクターを巻き込むための方法として提案された。民間セクターの重要性については意見が一致したものの、国の下に民間セクターが位置づけられるため、民間セクターからのグローバル・ストックテイクへの直接参加については、議論が複雑になる恐れがあるとの指摘があった。また、セクター別データの提出を締約国が合意することの重要性が強調された。一方、別のパネリストからは、セクターは国家横断的に存在し、多様なステークホルダーのグローバル・ストックテイクの受容性の確保のためにもプロセスへの参加が必要不可欠であるとの主張があった。

80%の気候ファイナンスが民間セクターから供給されていることが指摘され、民間セクターを更に後押しする重要性も指摘された。その重要性には同意しつつも、先進国がコミットしている公的ファイナンスは途上国間で信頼と自信を構築するために重要であり、民間ファイナンスを拡大する上でも必要だと指摘する声もあった。

Closing Session

多くの研究者は、研究者間で交流の拡大や連携の強化を通して、既存の科学的知見を統合していく重要性を確認し、また主張した。加えて、これからのシナリオ構築やモデル分析は社会的及び経済的側面を重視し、持続可能な開発・発展に結び付けていくべきだと強調した。シナリオの構築に当たっては共通のテンプレートを開発し使用すべきと述べる研究者がいた一方で、既に多数のパラメーターを持ち十二分に複雑で難解な結果をより難しくするのではという意見も出された。この点においては、研究者の役割として、特に社会的及び経済的な側面を重視しつつ重要なパラメーターを明示し、パリ協定と整合性のある発展・移行の形を示していく重要性が指摘された。

写真

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