ビジネスと環境

中・東欧低炭素技術セミナー

IGESは、環境省からの請負業務の一環として、中東欧地域環境センター(REC)と共に2015年7月6日・7日にハンガリー・センテンドレにおいて、「中・東欧低炭素技術セミナー」を開催しました。本セミナーは、中・東欧地域のエネルギー政策についてその最新情報を意見交換すると共に、低炭素社会実現のための技術移転、またそれを促進するための二国間クレジット制度(JCM)を含むファイナンス・スキームについて議論することを目的とするものです。本セミナーには、10ヵ国(アルバニア、コソボ、マケドニア、セルビア、トルコ、リトアニア、スロバキア、ルーマニア、ハンガリー、日本)より約40名の、環境・気候変動政策に係る政策決定者、政策研究者及び民間事業者が参加しました。今回のセミナーでは、脱炭素化のための低炭素技術の導入促進やそれを促進するためのJCMを含むファイナンス・スキームについて、特に中・東欧諸国における低炭素化の機会に焦点を当て、活発かつ率直な意見交換及びネットワーキングが実施されました。

日程 2015年7月6-7日
場所 ハンガリー・センテンドレ 中東欧地域環境センター(REC)
主催 (公財) 地球環境戦略研究機関 (IGES)
中東欧地域環境センター(REC)
日本・環境省
言語 英語
参加者 約40名
関連リンク REC hosts seminar on low carbon technologies
写真

サマリー

セッション1では、中・東欧諸国におけるエネルギー政策や低炭素技術の需要及びその導入課題に関する説明が行われた。

エネルギー政策研究のための地域センター(Regional Centre for Energy Policy Research: REKK)のSzabó氏は、電力の低炭素化に係るコストや導入課題について説明を行い、技術導入のためには明確な政策が重要であるとの発表を行った。その中でSzabó氏は、中・東欧のエネルギー政策の現状に言及しつつ、低炭素社会実現のための技術は既に存在しているが、導入するための政策や情報共有のプラットフォーム、またファイナンス等に問題があると指摘した。

セッション2では、中・東欧諸国において低炭素技術普及を促進するファイナンスの重要性について意見交換が行われた。

気候関連技術センター・ネットワーク(Climate Technology Centre and Network:CTCN)のAalders氏は、気候変動政策における低炭素技術の重要性、特に途上国における最新の技術導入の必要性に関して発表を行った。その中でAalders氏は、すぐに導入可能な低炭素技術が多数あることを強調し、低炭素社会移行のためには強い政策シグナルを発することが肝要だと述べた。参加者からは中・東欧諸国からCTCNへはどれ程のサポート・リクエストが挙げられているかとの質問が為され、Aalders氏は、各国の環境省や関連研究機関から3件程寄せられていると回答した。

エネルギー・コミュニティ事務局(Energy Community Secretariat)のVajda氏は、Energy Community Treatyの概要、低炭素エネルギー政策における中・東欧の協働の重要性に関して発表を行った。その中でVajda氏は、当該地域では様々な法的フレームワークによって環境政策が強化されつつあり、これまで外部経済性であった環境コストが内部化されてきていると述べた。現在中・東欧諸国が利用可能なファイナンス・スキーム及び技術援助スキームについても紹介され、特に再生可能エネルギー導入の加速が重要であると強調された。参加者からは、ヨーロッパ連合(EU)メンバー国が対象であるエネルギー効率に関する法的フレームワーク(EU Directive)と非メンバー国との連携に関する質問が為され、Vajda氏は積極的な情報共有と連携が実施されているが、EUメンバー国も含め中・東欧諸国の多くが目標達成に課題を持っていると述べた。参加者からは、目標達成のためにはより大きな投資・また強い政策が必要であると述べられた。

セッション3では、世界全体での排出量削減を目指す日本政府のイニシアティブである「二国間クレジット制度(JCM)」の紹介が行われ、参加者との意見交換が実施された。

環境省の伊藤氏は、先進的な低炭素技術の導入を通して温室効果ガスの国際的な削減を目指すJCMについての紹介を行った。その中で伊藤氏は、JCMのスキームや現時点での署名国の紹介、またUNFCCC下での国際合意事項との関連性や方法論の開発方法、削減クレジットの登録また発行方法等について説明した。加えてモデル・プロジェクトや日本の削減目標におけるJCMの役割についても共有された。参加者からは、署名国になる際の必要条件に関する質問が挙げられ、伊藤氏は2020年まではnon-Annex Iが対象であり、その後の国際枠組みにおいてはより多くの国が対象となる可能性があると述べた。

(公財)地球環境センター(Global Environment Centre Foundation :GEC) の関根氏は、フィージビリティスタディ(FS)やファイナンス・スキーム等、JCMプロジェクトの事業化支援プログラムの詳細に加え、具体的な支援事業の説明を行った。その中で関根氏は、アジアだけでなくアフリカや中米においてもJCM支援事業が実施されていること、インドネシアやパラオ、モンゴルにおいてJCMプロジェクトが正式に登録されつつある現状を説明した。更には再生可能エネルギー、省エネ、廃棄物、交通関連の登録申請中プロジェクトや将来のプロジェクト形成の可能性について具体例を挙げて紹介した。参加者からはJCM支援事業の申請・採択方法について質問が挙げられ、関根氏と環境省・伊藤氏は、カウンターパートとなる日本企業がJCMの具体的な提案内容を環境省に申請し、様々なヒアリングを経た上で支援事業を選定していると説明した。

(公財)地球環境戦略研究機関(Institute for Global Environmental Strategies:IGES)の 栗山氏は、JCMの方法論に関する説明を行った。その中で栗山氏は、既に承認済みの15の方法論について紹介すると共に、特に重要なプロジェクトの必要条件やリファレンス・エミッションについて説明した。またネット・エミッションの削減を担保するためにJCMプロジェクトでは実際の削減量よりも保守的な(少ない)削減量を標準値として使用していると述べた。参加者からは、Annex Iの国々が現時点でJCM導入を検討する場合にできる準備に関する質問が挙げられ、栗山氏と環境省の伊藤氏は、2020年以降の国際枠組みによってJCMの対象国となるかどうかに左右されるものの、現時点で焦点を当てて取り組むべきセクターや必要な低炭素技術の特定等を実施すべき、と回答した。

セッション4では、JCMを活用する際のファイナンス・スキームに関する紹介、及び意見交換が実施された。

環境省の植松氏は、低炭素社会構築のための都市間連携の重要性について言及すると共に、日本政府によるJCM等のスキームを通じた発展途上国の排出量削減に資する取り組みについて発表した。その中で植松氏は、都市間連携は日本とホスト国両方の政府や企業に様々なメリットが存在すると強調した。具体例として北九州市とスラバヤ市(インドネシア)、横浜市とバタム市(インドネシア)やバンコク(タイ)、川崎市とバンドン市(インドネシア)における環境都市化のための技術移転協力について説明した。参加者からは、こうした都市間連携は中・東欧地域においても参考になるとの認識が示された。

アジア開発銀行(Asian Development Bank :ADB)の杉本氏は、気候変動ファイナンスの全体像を説明すると共に、ADBの気候ファイナンスとJCM日本基金についての発表を行った。その中で杉本氏は、ADBのカーボン・マーケット・プログラムは、運営フェーズで資金提供を行う他の標準的なプログラムと違い、ディベロップメント・フェーズで行っていることが特徴的であると述べた。加えて杉本氏はJCM日本基金の制度を説明し、第一号のプロジェクトであるモルディブにおける再生可能エネルギーの導入について言及すると共に、基金へ応募をするための必要条件やライフ・サイクル・コストの考え方について説明した。参加者からはプロジェクト・コストの算定方法についての質問が為され、杉本氏はホスト国の実情を踏まえつつ、リファレンスとなるようなインフラプロジェクトを参考としていると回答した。

三菱重工業(株)の前原氏は、タイでのJCM FSの詳細な紹介を行った。その中で前原氏は、タイの国際空港での地域冷房プラント及びコージェネプラントの導入によって大規模な排出量削減が可能であると説明した。加えてヒートポンプを用いた河川のエネルギー活用や下水処理及びエネルギー回収についても説明を行った。参加者からはプロジェクト・コストに関する質問が為され、前原氏は例えばタイにおける小規模発電プラントの導入にはおよそ6百万 USDが必要であると回答した。

JFEエンジニアリング(株)の高橋氏は、JFEのヨーロッパにおける活動内容やJCMの2つのモデル・プロジェクトについて紹介した。その中で高橋氏は、廃熱回収システムの導入によって大規模な排出量削減が可能であると説明し、インドネシアでのモデル・プロジェクトでは年間12万トン以上の削減量が見込めると述べた。加えて高橋氏は廃棄物発電の重要性について言及すると共に、ミャンマーでのモデル・プロジェクトでは年間4600トン以上の排出量が削減可能であると説明した。参加者からはプロジェクトの実施者はどの国が主導で行うのかという質問が為され、高橋氏はインドネシアのプロジェクトは現地企業とJFEエンジニアリング(株)とのコンソーシアムによって実施中と説明し、ミャンマーのプロジェクトは現地自治体とJFEエンジニアリング(株)とのコンソーシアムで実施する予定であると説明した。

一日目の全セッション終了後には、一日を振り返っての意見交換が行われた。参加者はまず、中・東欧諸国には開発余地と排出量削減ポテンシャルが大きいことを改めて確認した。また、JCMによって日本は2030年までにどれだけの削減ポテンシャルを見込んでいるかについての質問が為された。環境省の伊藤氏は、2016年までにJCM署名国を現在の14ヵ国から16ヵ国へ増やすことを目指しており、2030年までに5000万から1億トン のCO2削減を目標としていると説明した。複数の参加者よりJCM等のアプローチを通して日本との協働体制を強化していきたいとの旨が述べられ、署名国となるために必要な条件やプロセスについて様々な質問が挙げられた。日本からのプレゼンター陣からは、それぞれの国において低炭素技術の需要を特定し、FS等によりプロジェクト実施の実現可能性を検討することが重要であり、そうした事前準備が署名する上で非常に大切であると説明された。また2020年以降のJCMの展望について質問がなされ、伊藤氏は、日本政府はJCMを低炭素社会構築のための一つのメカニズムとして継続的に国際社会に提案していくと説明した。その際これまでのプロジェクトによって得られた情報や経験を積極的に共有していきたいと述べた。

二日目に開催されたセッション5では、参加者がグループ1(優先度の高い低炭素技術・セクターとその導入障壁)とグループ2(低炭素技術の普及を加速させるための国際協力の在り方)に分かれ、議論を行った。

グループ1(優先度の高い低炭素技術・セクターとその導入障壁)では、優先度の高いセクターとして発電部門や地域熱供給部門、炭素集約型産業、交通部門、建物等の意見が挙げられた。導入障壁としては施設の国有化、低炭素戦略の不足及び度重なる政権交代が故の戦略の安定性の欠如や、低炭素技術への投資意欲の不足、更には技術価格やファイナンスの不足が挙げられた。それぞれの国の特有事情に関する意見交換がされつつも、多くの国で低炭素技術を導入する際に共有の目的や課題があることを改めて確認した。

グループ2(低炭素技術の普及を加速させるための国際協力の在り方)では、まず低炭素技術導入の際の課題について話し合い、(1)不明確な法的フレームワーク(例えば低炭素、グリーン技術と呼ぶ基準とは何か)、(2)政府内の業務膨大化・煩雑化に伴う絶対的な人員不足、(3)変化に対するイナーシア(惰性)等が挙げられた。その上で、低炭素社会への移行には技術導入のための政策シグナルを簡潔かつ明確に行うことが重要であると確認した。その後の国際協力の在り方に関する議論では、本セミナーで紹介されたJCM等のスキーム活用を例に挙げ、低炭素技術の普及に際しては技術移転に係るステークホルダーの特定が不可欠であると再認識された。更には技術の需要側(需要国内のステークホルダー)と供給側(供給国内のステークホルダー)とを引き合わせ、特定技術のマッチメイキングを行う必要があると強調された。その上で例えばnon-Annex Iにおいては試験的なJCM事業を発足させ、中・東欧諸国内のAnnex-Iにおいても低炭素技術の導入を望んでいるステークホルダーとそれら技術の知識及び導入実績を有する日本企業または環境省を結び付けていくことが、技術移転を加速させる第一歩として重要であると述べられた。

発表資料
Importance of Low carbon technologies in CEE and SEE
Dr. László Szabó, Senior researcher, Regional Centre for Energy Policy Research (REKK), Budapest Corvinus University
PDF (2.1MB)
Needs for technological developments and deployment to mitigate climate change
Mr. Edwin Aalders, Project manager, CTCN / DNV GL strategic partnership
PDF (1.1MB)
Energy Futures in South East Europe
Mr. Péter Vajda, Environmental Expert, Energy Community Secretariat
PDF (1.2MB)
Overview of the Joint Crediting Mechanism (JCM)
Mr. Takaaki Ito, Deputy Director, Office of Market Mechanisms, Global Environmental Bureau, MOEJ
PDF (1.3MB)
MOEJ’s support scheme under the JCM and its case studies
Mr. Sota Sekine, Senior Manager, Global Environment Centre Foundation (GEC)
PDF (2.3MB)
Introduction to JCM Methodologies
Mr. Akihisa Kuriyama, Researcher, Climate and Energy Area, IGES
PDF (966KB)
City to City Collaboration and its case studies under the JCM
Mr. Tomoki Uematsu, Researcher, International Cooperation Office, MOEJ
PDF (3.2MB)
Japan Fund for Joint Crediting Mechanism and Innovative Low Carbon Technology
Mr. Ryuzo Sugimoto, Environment Specialist, Asian Development Bank (ADB)
PDF (2.8MB)
Explanation of JCM Feasibility Study in Thailand & Applicable Low CO2 Emission Technology
Dr. Noriyasu Maehara, Senior Principal Engineer, Air Conditioning & Refrigeration Division Sales Department Machinery, Equipment & Infrastructure, Mitsubishi Heavy Industries
PDF (4.2MB)
JCM Case Studies: Perspectives from private sector
Mr. Gen Takahashi, Deputy General Manager, Global Business Development, JFE Engineering
PDF (3.8MB)
Innovation in Energy: Present challenges and opportunities
Mr. Christo Balinow, Business Development Manager for CEE Region, KIC InnoEnergy
PDF (5.5MB)

ページの先頭へ戻る