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■気候変動に係る日中政策研究ワークショップを北京で開催
2012年11月5日
 
IGESは、能源研究所(中国国家発展改革委員会エネルギー研究所、ERI)とともに、2012年10月18日に中国・北京において「IGES-ERI 気候変動に係る日中政策研究ワークショップ」を開催しました。

本会合には、日本からは環境省、地球環境戦略研究機関(IGES)、国立環境研究所、東京大学、中国からはERI、中国城郷建設部、中国科学院(CAS)、中国人民大学、清華大学、北京交通大学、南京大学、Ecofys等から政策担当官、研究者が参加 しました。

IGES-ERI政策研究会合は2005年度より継続的に行われており、今回で8回目となります。
本会合では4つのテーマ
(1)日中における気候変動政策の最新動向
(2)エネルギー・温室効果ガス排出シナリオ
(3)分野別の低炭素化へ向けた取り組み
(4)政策形成に貢献しうる日中の研究協力の今後の在り方
について、政策担当者や研究者による率直かつ活発な意見交換が行われました。

>> 「IGES-ERI 気候変動に係る日中政策研究ワークショップ」概要
 
 

【本プレスリリースに係る問合わせ先】
気候変動グループ 副ディレクター・主任研究員 田村堅太郎
Email: cc-info@iges.or.jp


IGES 広報担当:土井 恵美子
Email: iges@iges.or.jp
Tel: 046-855-3720

(公財)地球環境戦略研究機関(IGES)
〒240-0115 神奈川県三浦郡葉山町上山口2108-11
Tel: 046-855-3720 / Fax: 046-855-3709
ホームページアドレス: http://www.iges.or.jp/


「IGES-ERI 気候変動に係る日中政策研究ワークショップ」 概要

1. 開催概要

日程:2012年10月18日(木)
会場:中国・北京市 国宏賓館(Guohong Hotel))
主催:公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)、能源研究所(中国国家発展改革委員会エネルギー研究所、ERI)

2.対話の概要

開会の挨拶

  • ERI 姜克隽上席研究員:気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第5次評価報告書(AR5)のベースとなる数々のモデル分析の結果は、2℃目標達成には2050年にGHG排出量を1990年比半減では不十分で、60-70%の削減が必要であることを示しており、温暖化対策はこれまで以上に急を要している。現在中国は2℃目標達成へ向けて行動計画を作成中であり、日本も新しいエネルギー・環境政策を策定しようとしている。日中両国の関係者は、お互いの国の最新の政策動向について非常に関心を持っている。低炭素社会実現へ向けた日中両国の最新の政策動向について、研究者の立場から自由に議論し、お互いから多くを学んでほしい。

  • IGES 浜中裕徳理事長:本ワークショップを開催できることを嬉しく思う。日本は様々な課題を乗り越え、福島のような惨事を二度と起こさない責任を持つと同時に、低炭素・持続可能な社会へ転換させていく責任もある。アジアにおける低炭素社会実現へ向けた最先端の政策・行動は日本と中国で形成されている。日中が低炭素社会実現に向けて、どのように協働できるか、活発に議論してほしい。

第1セッション:日中における気候変動政策の最新動向

本セッションでは、日本の政策担当者から2012年9月に策定された「革新的エネルギー・環境戦略」、固定買取価格制度(FIT)(2012年7月より導入)や地球温暖化対策税(2012年10月より導入)等の政策の現状について、中国・ERIからは第11次5カ年計画の目標達成度に関する詳細結果および第12次5カ年計画(2011-2015)の詳細について発表された。本セッションでの主な質疑応答は以下の通り。

  • 日本での地球温暖化対策税(炭素税)導入による低所得者層への影響に関する参加者からの質問については、(平成24年度政府税制改正大綱において、併せて)過疎・寒冷地に配慮した支援策についても実施することとされている、との回答が日本の政策担当者からあった。また、再生可能エネルギーの大規模導入の電力網に与える影響についての質問に対しては、総発電量の20%程度ならば既存の電力網で受け入れ可能である、との回答が述べられた。また、長期的にはスマートグリッド技術等によって風力および太陽光発電の出力変動を調整する必要が出てくるため、これら先端技術を実際に効率的に導入するための施策の必要性が示された。

  • 第12次5カ年計画におけるエネルギー消費およびCO2排出に関する目標はbusiness-as-usual (BAU)と変わらないのではないか、との日本の参加者からの質問に対し、中国の研究者から、そもそもBAUの定義があいまいであるが、省エネ目標だけでも達成可能か不透明であり、CO2排出削減目標を含めたことにより第12次5カ年計画は更にハードルの高いものになった、との回答がなされた。また、排出量取引制度(ETS)の導入方針に関する質問については、ETSを2015年までに中国全土に導入するのは時期尚早との見方が示された。また、地球環境保護の観点から、中国は西洋的な大量消費の価値観を真似するべきではない、との意見が参加者から出された。

第2セッション:エネルギーおよび温室効果ガス(GHG)排出シナリオの研究

本セッションでは、日中のエネルギー消費およびGHG排出シナリオに関する最近の研究成果が報告された。

  • 日本の研究者から、原子力発電を段階的にフェーズアウトさせながら2050年にエネルギー起源のCO2排出を1990年比80%削減しても、長期的なエネルギーシステムコストの増加は限定的であることが紹介された。同時に、2050年における再生可能エネルギーやCO2回収・貯留(CCS)等の低炭素エネルギー供給技術の大規模な導入だけでなく、省エネといった需要サイドの取り組みがより一層重要になることが示された。

  • 別の日本の研究者からは、低炭素社会を実現するには、エネルギーの低炭素化や省エネだけでなく、少ないサービス量で満足を得る手法や、暮らしにおける満足度そのものの見直しなど、クオリティ・オブ・ライフを構成する要素についても見直す必要性が示唆された。

  • 中国の研究者は、自らが主執筆者の一人となっているIPCC-AR5のベースとなる数多くのモデル分析の結果の取りまとめの一部を紹介した。2℃目標を達成するためには、これまでは2015年までに地球全体でのGHG排出をピークアウトさせる必要があるとされてきたが、最新の結果では2020年までピークアウトを遅らせても、長期のGHG総排出量をマイナスにせずとも2℃目標が達成できるシナリオがあることが示されたことを紹介した。

  • 中国の研究者はモデル分析の結果を基に、中国はGHG排出を2025年までにピークアウトさせることができると述べた。理由としては、中国の経済構造が変わりつつあること、低炭素発展に投資するだけの経済力がついてきたこと、また低炭素発展が中国社会において主流化していること、必要な技術は既に商用化されていること等を挙げた。

  • 中国国内の多くの研究者が、中国は2025年までにピークアウトできるという見解を示したことにより、政府内でもピークアウトについてオープンに検討されるようになった、との指摘がなされた。また、政府の意思決定に近い政策担当者の中に、モデル分析の詳細について理解のある人間がいることが非常に重要であると述べられた。一方で、中国の2025年までのピークアウトでも高い確率での2℃目標達成には不十分であるとの見解も示した。

第3セッション:分野別の低炭素化に関する分析

本セッションでは、中国側からは第12次5カ年計画における輸送部門および商業・住宅部門(建築物)における省エネ・低炭素政策の詳細、そしてETS導入の最新動向が紹介された。日本側からは福島第一原発事故以降の省エネや再生可能エネルギー導入の最新動向、産業部門における2030年までのGHG排出削減ポテンシャルの分析結果、そして日本のおける都市交通(鉄道)の計画、地方自治体が進めている建築物の環境制度についての発表があった。

  • 中国の建築物における省エネ・低炭素化については、エネルギー消費のモニタリング、改修および先端技術の導入等の施策実施により、CO2排出を年間約3億トン削減する予定であることが紹介された。

  • 中国の輸送部門については、2012年9月に炭素排出抑制に関する12次5カ年計画が策定され、輸送部門における気候変動対策のための行動計画が近々発表されることが紹介された。

  • 中国では今年、3省市(北京・上海・広東)でETSのパイロット・プロジェクトが開始し、2013年には更に4省市(天津・重慶・河北・深圳)で開始される予定であるで開始される予定であることが紹介された。中国側の参加者の一人は、深圳や北京・上海はETSを利用して重工業を市から追い出し、大気汚染問題も改善したい思惑がある、との見解を示した。中国の参加者の一人は、政府は2015年に全国的なETSを導入する計画だが、おそらく2020年くらいまでは全国レベルでは難しいだろうとの見通しを示した。

  • 一方、広東省では、排出量取引制度のもと、セメント企業4社による計130万トンの排出量取引が行われ、総額7800万元(60元/ton- CO2)が支払われた。すなわち、一部では排出量取引制度は実際に機能し始めている、との指摘がなされた。

  • 日本の都市交通に関する発表では、東京圏における鉄道網の発展の分析を基に、大都市における公共交通システムの在り方が紹介された。大都市において公共交通システムの魅力を維持・向上させるためには、単に輸送能力増加のための投資だけでなく、輸送能力がある程度成熟した段階で、混雑の解消や移動時間の短縮ならびに乗り換えやすさの向上といった、サービス全体の質を改善させるための投資が不可欠であることが紹介された。また、低炭素都市の実現には、土地利用と公共交通の統合的な計画が鍵となるとの見解が示された。さらに、東京都は都市交通の混雑を更なる緩和を目指しているが、東京では高齢化が進み、鉄道利用人口の成長が期待できないことや、多くの鉄道が民間経営であることから、今後の追加的な投資は自主的には期待できないだろう、という見解も示された。

  • 日本の産業部門におけるGHG排出削減ポテンシャルに関する発表では、素材産業(粗鋼・セメント・エチレン)においては、2030年頃から革新的技術によるGHG排出削減の開始が見込まれるとの分析結果を示された。また、産業用ヒートポンプや低炭素工業炉などの業種横断的な機器によるGHG排出削減は、素材産業のGHG排出削減を上回る効果が見込まれることも紹介された。更に国内に留まらず、世界に低炭素機器等を提供することにより、日本のグリーン成長につなげていくことの重要性が示唆された。

  • 日本の地方自治体が進めている建築物環境配慮制度に関する発表では、制度・規制の仕組み、普及状況、制度運用上の課題が述べられるとともに、東京都などが進めている先進的な事例について紹介された。本制度は、建築主に具体的な環境配慮措置を命ずる規制制度ではなく届出制度に止まるものではあるが、様々な政策(例えば、義務付け型の規制制度)への展開を可能とする初期政策として、高く評価すべきであり、その理由として、行政コストが比較的に安い、建築主の負担が比較的に少ない、今後の制度設計に欠かせない基礎情報およびノウハウの蓄積に適している、などのメリットが挙げられた。

  • 福島第一原発事故後の日本における省エネおよび再生可能エネルギーの導入状況についての発表では、FIT導入により特に太陽光発電が順調に導入されていることが紹介された。また、原子力への依存度に係らず将来の電気代は上昇し、2030年に原子力依存をゼロにしても、原子力依存継続(2030年に総発電量の25%)の場合と比べて一人当たりの電気代の上昇は月1000円程度であること等が紹介された。

第4セッション:低炭素政策形成への貢献 - IGESとERIの今後の研究協力 -

本セッションでは、日中両国における低炭素社会実現に向けた政策を推進していくために、研究者が行うべき研究の方向性および研究者が提供すべき知見について議論が行われた。

  • 中国側の参加者から、輸送部門と商業・住宅部門(建築物)については日本から学べることが多いとの意見が述べられた。また、中国は炭素税の導入も検討しており、日本で導入された地球温暖化対策税が社会に与える効果・影響の分析は、中国にとって示唆に富むものになるだろうと述べられた。更に、日本が脱原発と温暖化対策をどのように並行して進めるかは、多くの国々にとって貴重な例となる、と述べられた。

  • 日本の研究者は、日中両国が再生可能エネルギーの導入目標を達成するため、そして再生可能エネルギーを魅力的なビジネスにするための政策研究を提案した。これに対し中国の研究者の一人は、もし日本が風力発電および太陽光発電の大規模導入を実現すれば、既にブランド力と信頼性を持った日本のメーカーは再び産業をリードすることができるとの見解を示した。その上で、再生可能エネルギー産業の競争力の変化についても分析するべきだと述べた。

  • 中国側の参加者の一人は、ETSについては既に各地でのパイロット・プロジェクトを通じて基本的な知見は有しており、今後は全国規模のETS実現へ向けたロードマップの策定に日本側の知見が求められている、と述べた。

  • 2050年にGHG排出を70-80%削除させた際の社会の姿およびライフスタイルの変化について、研究者はビジョンを明確に示す必要があるとの意見に、参加者の多くが同意した。

  • 最後に、参加者は4つのテーマ(分野別の低炭素化政策、ETSやFIT等のセクター横断的な政策、既存の技術を普及させるための方策、福島第一原発事故後の日本のエネルギー・環境政策の動向)について、緊密な情報共有および研究協力を行っていくことを確認した。

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