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■気候変動に係る日印政策研究ワークショップの結果について
2011年9月15日
 
財団法人地球環境戦略研究機関(IGES、神奈川県葉山町 理事長 浜中裕徳)は、環境省からの請負業務の一環として、インド・エネルギー資源研究所(TERI)とともに、2011年8月29日(月)及び30日(火)にインド・ニューデリーにおいて、「気候変動に係る日印政策研究ワークショップ」を開催しました。

本政策研究ワークショップでは、日印の研究面からの知見についてそれぞれの国の政策担当官・研究者が意見交換を行いました。日本からは環境省、地球環境戦略研究機関(IGES)、インドからは環境森林省、エネルギー資源研究所(TERI)、インド国内の大学等の政策担当官・研究者が参加しました。

ワークショップでは、下記のような発表が行われました。
  • インド・日本両国の再生可能エネルギー施策
  • 気候変動施策の重要性の認識促進の必要性
  • コベネフィット・アプローチを始めとし、人材育成を含む途上国支援策
  • インドの国レベル、地方レベルでの気候変動施策
  • 低炭素社会研究に関する情報の共有ネットワーク構築の重要性
  • 気候保険の事例
それぞれの発表をもとに、気候変動次期枠組みのためのカンクン合意の実施の重要性、資金メカニズムに対する期待、温室効果ガスの排出削減に対するコベネフィット・アプローチの有効性、エネルギー効率向上のための施策推進と技術革新の必要性、知識共有ネットワーク構築の重要性、インドにおける国レベルだけでなく地方レベルでの削減施策推進の必要性などについて、活発かつ率直な意見交換を行いました。


IGES-TERI日印政策研究ワークショップ 2013年以降の気候変動枠組み:概要


<開催概要>

日程: 2011年8月29日(月)及び30日(火)
会場: インド・ニューデリー、インドハビタットセンター、マグノリアホール
主催: 財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)、インド・エネルギー資源研究所(TERI)、日本・環境省

第1セッション:2013年以降の気候変動枠組み ― その課題と機会

  • インドの研究者から、人類と地球にとって気候変動に関する科学技術の重要性が高まる一方、その意義を軽んじさせようとする深刻な動きも見られる。政策決定者は、全ての政策決定に際し、気候変動が重要かつ不可欠な要素として位置づけられるべきとの認識をもたなくてはならない。気候変動緩和策は最新エネルギー技術への投資を促し、各国にとっての“機会”となりうるとの認識が示された。

  • 日本の研究者から、次期枠組みにおいては資金支援が重要な基盤の一部であり、現在、移行委員会において検討されている緑の気候基金における途上国からの資金アクセス手法についての比較検討の結果が紹介された。
第2セッション:気候変動緩和策と開発の両立
  • 日本の政府関係者から、コベネフィット・アプローチは地域の環境問題と気候変動問題に対して同時に取り組む効率的な方法であることが議論され、日本がアジア各国で展開するコベネフィットに関するプロジェクトが紹介された。また、地域の開発及び環境に関するニーズの把握の重要性が指摘された。インドの研究者から、気候変動を抑制するために必要とされる温室効果ガス(GHG)の排出削減量と各国が提出している削減目標との間の差(ギャップ)など、現在の気候変動交渉における課題が指摘された。また、国連気候変動枠組条約第16回締約国会議(COP16)にて合意に至ったことは歓迎するが、途上国への負担が増える一方で、先進国は削減目標及び資金支援の約束の面で共に後退しているようであり、科学・削減目標・衡平性の観点からみて十分とは言えないとの発言があった。

  • インドの研究者から、緑の気候基金に関する考慮すべき点として、新しい組織を作るべきかどうか、先進国は資金の使途をどの程度管理するべきか、どのような測定・報告・検証(MRV)制度を作るべきか、どのように予測可能性や追加性を示していくべきかなどが挙げられた。
第3セッション:リスク保険による気候変動リスクの緩和
  • 日本側の研究者から、リスク保険は、リスクを回避することにより地域社会の適応能力を強化すると共に、自然災害による被害に対する公的費用負担の軽減につながる可能性も指摘された。また、信頼性の高い気象情報や、そうした気象情報と農作物への影響との相関性を示すデータは、実効性のあるリスク保険制度の構築に必須であるが、アジア太平洋地域の多くで不十分である点や、情報不足を埋めるためにはリモートセンシング1などの技術が必要である点が指摘された。

  • インドの保険会社から、保険制度を用いることにより、自然災害による被害の低減し、気候リスクの緩和を行なうことが可能であるとの発表があった。保険制度の中でも特に農作物保険制度は、途上国に暮らす人口の多くが農業に従事し、収入源とする中、保険を通じて気候リスクから貧困層を保護できる点で、持続可能な発展にも重要な役割を果たすことが指摘された。さらに、国家農業リスク保護法を策定し、複数ある保険商品や保険業界の合理化を図ることが提案された。

  • インドの研究者から、インドでは気象観測所の数が限られていることがリスク保険制度構築の障害となっており、地球観測衛星などを利用したリモートセンシングによる気象情報の収集により、地上での調査よりも調査費用が削減でき、リスク分析の精度向上が目指せるとの発言があった。
    1 リモートセンシングは、地球観測衛星等を利用して遠くから物質の状態を探る技術で、広範囲を、現地にいかずとも、長期的に調査することができ、海や陸の状況、温度、植生、汚染状況などを調べることができる。

第4セッション:気候変動緩和行動:技術及び技術革新の役割

  • インドの研究者から、2020年まではエネルギー効率や省エネに焦点を当てて20?25%削減目標の達成を目指し、2020?2030年は再生可能エネルギー技術に、2030年以降は石炭ガス化複合発電(IGCC)のような最新技術に焦点を当てるべきであるという発表もあった。

  • インドの研究者から、革新的な技術の開発にあたり、事業化前の研究・開発段階など企業からの出資が難しい段階において市民社会、研究機関などのNGOが重要な役割を担っているとの発言があった。
    研究の初期段階は、国際支援や国家気候変動行動計画など国家政策も支援対象としていないが、革新的な気候変動対策技術を進めるためには、公共資金による支援が必要であるとの発言があった。

第5セッション:アジアにおける低炭素戦略

  • インドの研究者から、サブナショナルレベルのエネルギーモデルが紹介され、このモデルは日本においても適用可能であり地域レベルでの再生可能エネルギー潜在量に関する情報などを提供できること、中央政府の政策決定者だけでなく地方政府やその他の関係者に対する活用の可能性について紹介された。

  • インドの研究者から、アジア各国の多くは既に気候変動行動計画を策定しているが、アジア各国は経済成長及び貧困撲滅を達成しながら低炭素型成長を目指す必要があることが指摘された。また、インドの低炭素型成長への道筋に関して三つのシナリオ(基準シナリオ、持続可能なエネルギーシナリオ、気候政策シナリオ)の分析結果を発表した。

  • 日本の研究者から、世界レベルの研究者間の情報共有の例として、低炭素社会国際研究ネットワーク(LCS-RNet)の活動について紹介があった。また、気候変動政策の優良事例を共有する地域レベルのプラットフォーム構築の重要性も指摘された。

第6セッション:国家及び州レベルの気候変動緩和行動の実施における課題

  • インドの政府関係者から、気候変動緩和政策は国家レベルで規定され、各州の状況にあわせて州レベルで実施される必要があるとの発言があった。他の州に先駆けて積極的に気候変動対策を推進する例としてグジャラート州が紹介され、再生可能エネルギーの推進や農業、交通セクターにおける省エネ、コベネフィット・アプローチによる健康影響、環境改善、職業創出、低炭素成長の可能性が紹介された。国家レベルの課題設定が州レベルの気候変動緩和行動の推進につながっており、インド政府は高い成果を上げているとの発言があった。

  • インドの研究者から、地方レベルでの気候変動緩和行動の推進には、緩和策の技術的側面から、官民参画が効果的であったと報告した。一方で、 ヒマーチャル・プラデーシュ州の例にみられるように国家及び州政府の幅広い政策や行動が、地方レベル、地域社会の低炭素型成長にむけた行動の推進や市民の積極的な参加につながったケースもあるとの紹介があった。
 

【本プレスリリースに係る問合わせ先】
気候変動グループ 副ディレクター・主任研究員 田村堅太郎
Email: cc-info@iges.or.jp


IGES 広報担当:土井 恵美子
Email: iges@iges.or.jp
Tel: 046-855-3720

(財)地球環境戦略研究機関(IGES)
〒240-0115 神奈川県三浦郡葉山町上山口2108-11
Tel: 046-855-3720 / Fax: 046-855-3709
ホームページアドレス: http://www.iges.or.jp/

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