ニュース&イベント
■ 気候変動の将来枠組みに関する日印政策対話をニューデリーで開催

2011年2月4日
(財)地球環境戦略研究機関(IGES)

財団法人地球環境戦略研究機関(IGES、神奈川県葉山町 理事長 浜中裕徳)は、環境省からの請負業務の一環として、インド・エネルギー資源研究所(TERI)とともに、2011年2月1日にインド・ニューデリーにおいて、2013年以降の気候変動に関する国際枠組み及び気候政策に関する取り組み・研究について話し合う日印非公式政策対話「IGES-TERI政策対話:カンクン後の気候行動」を開催しました。

本対話は、アジアの主要排出途上国であるインドとの対話を通じて、気候変動将来枠組みの実現可能な選択肢について模索することを目的とするものです。 本対話には、日本からは環境省、IGES、インドからは環境森林省、科学技術省、デリー等の地方政府、エネルギー資源研究所(TERI)、大学関係者等、約50名が参加しました。

今回の対話では、カンクン合意の評価、将来枠組みのあり方(測定・報告・検証(MRV)・国際的な協議及び分析(ICA)、資金支援、二国間メカニズム等)、インドの国内政策及び地方レベルでの取り組みについての議論が行われ、日印両国が直面する現状の課題と将来枠組みにおける可能な選択肢について、活発かつ率直な意見交換を行いました。

日中政策対話は、本年1月27日に中国・北京において開催しました。


■本プレスリリースに係る問合わせ先■

財団法人 地球環境戦略研究機関(IGES)
気候変動グループ 副ディレクター・主任研究員
田村堅太郎
メールアドレス:cc-info@iges.or.jp

広報担当 城戸めぐみ
Tel:046-855-3720
メールアドレス:iges@iges.or.jp

IGES-TERI非公式政策対話
「カンクン後の気候変動行動」 概要

1.開催概要
日程:2011年2月1日(火)
会場:インド・ニューデリー シルバー・オーク・ホール(Silver Oak Hall)
主催:財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)、インド・エネルギー資源研究所(TERI)

2.対話の概要
 
第1セッション:カンクン会議(COP16)における成果の評価:課題と今後の展望
  本セッションでは、インド人出席者による、カンクン合意の詳細説明やその評価についての発表がなされた。多国間枠組みへの信頼性が回復されたとの見解が示されるとともに、温室効果ガス濃度安定化目標の達成に向けた各国目標のあり方についての議論が行われた。
  • インドの政府関係者からは、カンクン合意はバリ行動計画と比較して妥協の産物(stitches of compromises)であったが、コペンハーゲン合意に比べ前進を見た点において成果があったとの認識が示された。カンクン会議は地球規模の気候変動政策を議論する場としての多国間枠組みに対する信頼回復に寄与した点において評価されるべきであり、また、地球規模での野心的な目標を単なる目標として据え置くのではなく、目標達成に向けて、締約国にとってもコミットメントが可能であり、現実的かつ実地での取り組みが可能な目標形成の土壌を築いた点も広く認知されるべきである。但し、今次会合においては、新興経済国が地球規模での気候変動対策により積極的な姿勢を示した一方で、幾つかの先進国が交渉において後ろ向きな姿勢を見せ始めていたと指摘された。
  • インドの経済学者からは、気候変動対策は時間との戦いであることが強調された。今後の展望として、炭素予算・炭素スペースに基づく一人当たり排出量を初期割当とした数量取引(キャップ&トレード)レジームの構築が互恵的な解決策として提案された(注:「炭素予算・炭素スペース」とは、一定の温室効果ガス濃度(450ppm等)を達成するために2050年までに地球全体で排出可能な排出量を計算し、人口やこれまでの累積排出等を勘案して、各国の排出枠として割り振るという考え方)。しかしながら、昨今の金融危機以降、北(先進国)から南(途上国)への資金の流れへの期待は、財政難を抱える先進国や財政余剰を持つ途上国の存在等の現状を反映しているものとは言えないとの指摘があった。
  • 気候変動問題の解決に向けては、“この世界の内に望む変化に、あなた自身が成ってみせなさい (You should be the change that we want to see in the world.)”とするガンジーの理念の適用こそが、先進国・途上国双方にとって必要であり、蔓延する日和見主義や対立点の打開に資するとインドの研究者が強調した。
 
第2セッション:国際気候変動枠組みにおいてのガバナンス・メカニズムについて
  本セッションでは、測定・報告・検証(MRV)・国際的な協議及び分析(ICA)や二国間メカニズムといった、将来枠組みにおける新たな仕組みについての議論が行われた。インドからは、MRV/ICAのあり方について、日本からは、MRV/ICAのあり方、及び二国間メカニズムについての発表が行われた。
  • インドの元交渉官からは、途上国に対する国際的な協議及び分析(ICA)は、データの透明性を担保するだけのものであり、先進国に対する国際的評価・レビューよりも緩くあるべきであり、途上国の行動の実施状況や野心レベルを評価したり、一方的な貿易制限を与えたりする性格のものであってはならないとの指摘がなされた。コペンハーゲン合意での先進国の誓約は条件付きのものであったが、米国などの附属書I国の国々は、実効的なICAを途上国に対して求めたいのであれば、無条件での自らの削減目標に合意すべきであるとの指摘もなされた。
  • インドの政府関係者からは、インドは、途上国における適切な緩和行動(NAMA)関連のいかなるメカニズムにも合意していないが、NAMAは自国の開発目標に沿うものでなくてはならない。NAMAの大部分は国際社会からの資金援助を必要とするものであるが、資金援助は多国間であっても二国間であっても構わないとの意見が示された。
  • 日本の政府関係者からは、世界全体の排出を評価するためにMRV/ICAは重要であり、カンクン合意を踏まえたMRV/ICAのあり方を示すとともに、企業の貢献を適切に評価する二国間メカニズムについて、途上国の持続可能な開発に資するより多くの緩和行動を促進すると同時に、先進国はオフセットを獲得し、民間企業に途上国でのビジネスチャンスの拡大をもたらすという意味で互恵的(win-win)であるとの発表があった。二国間メカニズムについては、日本の政府関係者からはCDM以外にも民間からの途上国での排出削減への投資を促すインセンティブは必要であるとの見解が示された一方、インドの元交渉官からは、CDMの改善では不十分なのかという疑問も示された。
 
第3セッション:国際気候変動交渉とインド:政策、行動、対話
  本セッションは、インドの緩和行動についての議論を行った。インドにおける政策オプション、炭素予算アプローチ、国際気候変動交渉におけるインドの役割についてのプレゼンテーションが行われた。
  • インドの政府関係者からは、法的拘束力のある目標はうまくいかないとの認識が示され、各国それぞれにとって適切な適応及び緩和行動を進めていくべきとの提案があった。インドにとっての気候変動対策は開発・発展に伴う相乗便益(コベネフィット)であるが、2030年時点で必要とされる社会基盤の70%は今後構築されるため、低炭素技術への移行ポテンシャルは大いにあると指摘された。
  • インドの研究者からは、地域の開発ニーズと地球規模の炭素排出量削減を同時に取り組むコベネフィットのある政策行動やプロジェクトが紹介され、州レベルの気候行動計画策定への基盤として提案された。
  • インドの研究者からは、共通だが差異のある責任や歴史的責任に基づき、各国に排出量を割り当てる炭素予算アプローチが紹介された。炭素予算に対しては多様な反応が示された。
  • インドが気候変動緩和に果たす役割への国際社会の認識変化について日本の研究者から報告があった。気候変動課題への国内支持の持続が重要であると指摘された。
 
第4セッション:インドの地方レベルでの気候変動行動及び実施
  本セッションは、インドにおける地方レベルでの緩和行動の重要性が焦点となり、地方レベルの取り組みが国レベルの行動に効果的に貢献しうる潜在性が指摘された。気候緩和策が政策担当者の関心を集めている、デリー市、オリッサ州、グジャラート州における取り組みの紹介がなされた。
  • インドの政府関係者からは、「気候変動に関する国家行動計画(NAPCC)」を受け、インドの州政府及び各都市は気候変動対策計画を策定している。気候変動の緩和は、インドが開発目標達成に向けて、持続可能な低炭素型オプションを求める上でのコベネフィットであるとの認識が示された。
  • デリー市では「気候変動基本方針(2009年-2012年)」に沿った取り組みを、中央政府からの支援を受けずに独自に実施している。このプログラムにより、太陽熱温水器の導入促進、建物のエネルギー効率の向上、持続可能で低炭素型の交通システム導入、廃棄物管理及び都市緑化が大きく進んだとの報告がインドの州政府関係者よりあった。
  • オリッサ州でも重要セクターにおいて多数のプロジェクトを実施し、気候変動対策を進めた。同州の最重要課題はモンスーン期の干ばつや洪水等自然災害による被害であり、気候変動対策と開発とをバランスを取りながら同時に実施していくことが重要との発表がインドの州政府関係者よりあった。
  • グジャラート州はインド国内で唯一気候変動対策に特化した部署を持ち、州の上級官僚や公務員に対して「気候変動に関するオリエンテーションプログラム」を先駆けて実施した。水不足による暴動や脆弱な農業部門への懸念が、こうした気候変動緩和計画の策定と実施を進める要因となっているとインドの州政府関係者が指摘した。

ページの先頭へ戻る