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■ 気候変動の将来枠組みに関する日中非公式政策対話を北京で開催

2011年1月31日
(財)地球環境戦略研究機関(IGES)

財団法人地球環境戦略研究機関(IGES、神奈川県葉山町 理事長 浜中裕徳)は、環境省からの請負業務の一環として、中国国家発展改革委員会能源研究所(ERI)とともに、2011年1月27日に中国・北京において、2013年以降の気候変動に関する国際枠組み及び両国の低炭素社会構築に向けた取り組みについて話し合う日中非公式政策対話「IGES-ERI政策対話:アジアにおける低炭素型発展―モデル、政策措置と実施」を開催しました。

本対話は、アジアの主要排出途上国である中国とインドとの対話を通じて、気候変動将来枠組みの実現可能な選択肢について模索することを目的とするものです。

本対話には、日中両国の政策研究者をはじめ、 日本及び中国(国及び地方)の政策担当者、その他米国の政策研究者や中国の有識者等、約50名が参加しました。

今回の対話では、排出削減や低炭素型発展を推進する上で重要となる4つの要素(低炭素シナリオ、国内政策措置、政策措置の実効性を測る基盤(測定・報告・検証(MRV)制度))、及びその他の政策措置(排出量取引、環境税、貿易政策、固定価格買取制度(FIT))に焦点を当て、日中両国が直面する現状の課題と将来枠組みにおける可能な選択肢について、活発かつ率直な意見交換を行いました。

なお、日印の政策対話は2011年2月1日にインド・ニューデリーで開催する予定としています。



■本プレスリリースに係る問合わせ先■

財団法人 地球環境戦略研究機関(IGES)
気候変動グループ 副ディレクター・主任研究員
田村堅太郎
メールアドレス:cc-info@iges.or.jp

広報担当 城戸めぐみ
Tel:046-855-3720
メールアドレス:iges@iges.or.jp

IGES-ERI政策対話
「アジアにおける低炭素型発展―モデル、政策措置と実施」 概要
2011.2.2版

1.開催概要
日程:2011年1月27日(木)
会場:中国・北京市 国宏賓館(グオホンホテル)
主催:財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)、中国国家発展改革委員会能源(エネルギー)研究所(ERI)、日本・環境省

2.対話の概要
 
第1セッション:低炭素社会の構築
  本セッションでは、日中両国の低炭素社会へ向けた政策措置、ロードマップ等が発表された。
  • 中国では特に2007年以降、エネルギー効率の改善を主体とした国及び地方レベルでの気候変動プログラムや低炭素パイロットプログラムが策定・実施されている。関連統計機関の強化などが図られており、国内測定・報告・検証(MRV)に向けた基盤作りが進んでいることが示された。
  • 中国の第12次五カ年計画(2011-2015年)では、コペンハーゲン合意に基づき提出された同国の削減行動(2020年までに2005年比で国内総生産(GDP)当たりの二酸化炭素排出量を40-45%削減)に向けた具体的な政策措置が盛り込まれる可能性が高いとの見解が中国の研究者より示された。
  • 中国における国別報告書及び温室効果ガスインベントリ策定プロセスの課題として、特定項目のデータ集計(石炭消費量や交通データの不完全性)や使用データ選択(国レベルのデータを使用するのか、あるいは各産業界が整備したデータを使うのか等)が挙げられた。
  • 長期目標及び中期目標の達成に向けた中長期ロードマップ、排出量取引、地球温暖化対策税の検討状況や算定・報告・公表制度等の日本の政策の検討・実施状況についての発表が日本の政府関係者よりなされた。日本の温室効果ガス(GHG)削減数値目標がGDPへ与える影響についての分析について、前提条件の置き方(GDP成長率、産業構造(既存産業か新産業の構築か)等)によって数値が変わり得る点について質疑応答がなされた。
 
第2セッション:低炭素社会へ向けた政策措置
  本セッションでは、低炭素パイロット都市に指定されている海口市(海南島)の事例、及び中国がコペンハーゲン合意に基づき提出した削減行動についての発表が行われた。
  • 低炭素パイロット都市に指定されている海口市(海南島)の事例が紹介された。対策の重点となる交通セクターでの排出量削減に向けて、同セクターの需要調整、燃料構成の変化、エネルギー効率の向上という三つのオプションが、中国の研究者より提示された。
  • コペンハーゲン合意に基づき提出された中国の削減行動の評価に関する研究結果が発表された。追加的な政策を取らなくとも達成できる低い目標であるという批判は当てはまらないが、更に高い目標値を設定する余地もあるとの見解が米国の中国人研究者から示された。
  • 中国のGHG排出量のピークアウト年に関するERIの研究結果は概ね2030年になるという点を考慮すると、国際交渉で2020年を一つの区切りとする議論は中国の事情とは必ずしも馴染まず、2030年と2050年の長期的な区切りで議論することが望ましいとする意見が米国の中国人研究者から指摘された。一方、国際交渉はこれまでの蓄積に依拠しており、長期的な時間軸での議論は重要であるものの、2020年の時間軸での議論は進んでいくとする意見が日本の研究者から出された。
  • 中国のGHG排出量のピーク年については、対策を実施した場合では2030年頃がピーク年になるはずだという認識が研究者の間では揃ってきていること、今後の課題は、ピーク年を少し早めるシナリオ(例えば2025年)についての内容分析であることなどの見解が、中国の研究者より示された。
 
第3セッション:低炭素社会へ向けた環境整備
  本セッションでは、低炭素社会へ向けた政策の測定・報告・検証(MRV)を中心に議論が行われた。国際交渉におけるMRVを巡る議論の現状・今後の課題、中国国内のMRV体制、電力セクターにおける報告体制についての発表が行われた。
  • 中国の第11次五カ年計画(2006-2010年)においてエネルギー原単位目標が採用され、エネルギー消費量の国内MRVシステムの基盤が整備された。検証(V)についても、エネルギー原単位目標達成が地方政府幹部の人事評価と結びつけられることによって確保されているとの指摘があった。
  • 中国において、連続排ガス監視システム(CEMS: Continuous Emission Monitoring System)は、当初幾つかの課題があったものの、採用する火力発電所数は最近になり増加している。今後モニタリング能力の向上が期待されるとの発表が中国の研究者からあった。
  • 大規模排出企業のMRVの向上に貢献している企業1千社省エネ行動計画は、既に対象外の企業に対しても地方レベルで同様のプログラムを実施しており、実質的に対象は拡大しているとの指摘があった。
 
第4セッション:市場メカニズム
  本セッションでは、気候政策の国際競争力への影響、中国国内における削減目標のあり方、鉄鋼セクターにおけるセクトラル・アプローチについての発表が行われた。
  • 炭素の価格付け(1トン当たり3000円)による日本企業の国際競争力喪失の可能性についての経済分析では、エネルギー集約型産業が被るコストは、競争力喪失の懸念を正当化するほど大きくないことが日本の研究者より示された。
  • 炭素リーケージ/国際競争力の議論には、経済学的な分析だけではなく、政策決定過程においてどのアクターの利益が反映されているのかといった政治経済学的な分析も重要であるとの指摘が日本の研究者からあった。
  • 中国の限界削減費用に関する不確実性は非常に大きく、現状において絶対量での排出削減目標を受け入れることはできないが、幾つかのセクターでは、今後、炭素集約度目標から絶対量の排出削減目標に段階的に移行することは可能ではないかとの論考が中国の研究者より示された。
  • セクトラル・アプローチは、排出削減クレジットを事後的に配分するか、排出枠を事前に配分するか、あるいは集約度目標を用いるか、絶対量での削減目標を用いるか、技術目標(特定の技術の採用等)を用いるかにより分類でき、それぞれに長所・短所があることが中国の研究者より示された。
 
第5セッション:低炭素社会構築に向けて
  本セッションでは、中国の研究機関、NGOから、中国における低炭素社会構築を目指す取り組みについてのコメントが寄せられた。
  • 中国国内では、研究機関や大学、NGOが都市の低炭素化やセクターレベルでの低炭素化に関する研究を実施している点に加え、政府レベルでもグリーン建築基準や官庁ビルの省エネ基準の制定等の低炭素化に向けた様々な制度構築が着実に進められていることが紹介された。
  • 低炭素社会の構築に向けた中国の取り組みにおいて、都市及びセクター別の低炭素化に向けたそれぞれのアプローチの存在が明らかになったが、これらアプローチの効率性を比較するのではなく、都市、セクター別対策の両輪で低炭素化を目指すべきとする意見が出された。同時に、対策実施の管理という観点から、低炭素化に向けて地方政府が主導的役割を果たすことの重要性が指摘された。
  • 地方における省エネ効率目標などの達成に向けた一連の施策は、雇用やエネルギー供給の側面で地域住民の生活にも影響を及ぼす可能性があることから、施策の実施にあたっては地域住民に対して更なる配慮を図るべきとする意見も見られた。

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