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■ 気候変動の将来枠組みに関する日中非公式政策対話を北京で開催

2009年9月28日
(財)地球環境戦略研究機関(IGES)

財団法人地球環境戦略研究機関(IGES、神奈川県葉山町 理事長 浜中裕徳)は、環境省からの請負業務の一環として、中国国家発展改革委員会エネルギー研究所(ERI)とともに、2009年9月22日~23日に中国・北京において、2013年以降の気候変動に関する国際枠組みについて話し合う日中非公式政策対話「IGES-ERI政策対話:アジアにおける低炭素型発展―持続可能で低炭素なアジアに向けて」を開催しました。

本対話は、アジアの主要排出途上国との対話を通じて、将来枠組みの実現可能な選択肢について模索することを目的とするものです。

今回の対話では、国連気候変動首脳会合(9月22日、ニューヨーク)での日中両国による声明を背景にタイムリーに議論が行われました。

本対話には、日中両国に加え、香港、韓国、オランダ、カナダ、米国の政策担当者、産業界、有識者をはじめ、欧州委員会(EC), IPCCインベントリータスクフォース技術支援ユニット(TSU)や国連開発計画(UNDP)等の国際機関の専門家等、約65名が参加しました。

今回の対話では、排出削減や低炭素型発展を推進する上で重要となる5つの要素(1. 低炭素シナリオ、2. 国内政策、3. グリーン経済刺激策パッケージ、4. コベネフィット・アプローチ、5. 測定・報告・検証可能(MRV)な行動)に焦点を当て、日中両国が直面する現状の課題と将来枠組みにおける可能な選択肢について、活発かつ率直な意見交換を行いました。

テーマ毎の議論に加え、先進国・開発途上国間の信頼を構築する上で、緩和・適応策における情報共有を高めることが重要であることが確認されました。

今回の対話の成果は、2009年12月にデンマーク・コペンハーゲンで開催される国連気候変動枠組条約第15回締約国会議及び京都議定書第5回締約国会合(COP15/CMP5)のサイドイベントにおいて発表する予定です。
なお、日印の政策対話を10月22日~23日にインド・ニューデリーで開催する予定としています。

IGES-ERI政策対話の概要についてはこちらよりご覧ください


■本プレスリリースに係る問合わせ先■

財団法人 地球環境戦略研究機関(IGES)
気候政策プロジェクト サブマネージャー
田村堅太郎
メールアドレス:tamura@iges.or.jp

広報担当 城戸めぐみ
Tel:046-855-3720
メールアドレス:kido@iges.or.jp

IGES-ERI政策対話
「アジアにおける低炭素型発展―持続可能で低炭素なアジアに向けて」 概要

1.開催概要
日程: 2009年9月22日(火)・23日(水)
会場: 中国・北京市 チャイナピープルパレスホテル(中国職工之家)
主催: 財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)、中国国家発展改革委員会エネルギー研究所(ERI)

2.対話の概要
 
セッション1:低炭素型発展シナリオ
  • 中国での低炭素社会のビジョンは、低炭素・低温室効果ガス(GHG)排出のみならず、快適な生活や手厚い社会福祉、環境に優しい開発に基づくものでなければならない。
  • 中国は、2030年には欧州における都市生活の水準と同等レベルに追いつきつつ、同時に、2050年にはGHG排出をベースライン(政策をとらなかった場合の成り行きケース)から半減することができる。
  • 中国で低炭素社会を実現するための政策として、炭素税や排出量取引制度について議論が交わされた。中国環境保護部及び財務部*は、炭素税に関する政府資金による研究プロジェクトを始めているとともに、自主的な中国炭素取引所(China Carbon Exchange)を含むその他の取り組みについても検討中である。
  • 日本で低炭素社会を実現するために、エネルギー需要サイドの管理が重要である一方で、そのための政策が不十分である。
    *部は日本の省に相当。
  セッション2:国内政策及び実施
  • 2006-2010年にかけて中国におけるエネルギー集約度を20%低減させる見通しについて議論が交わされた。中国は、2006-2008年にかけてエネルギー集約度をすでに10%低減させており、2010年までに20%の低減目標の達成が期待されている。目標達成のために 、中国は大企業1000社での省エネルギー推進や、 技術的に遅れた設備・工場の操業停止、再生可能エネルギー(風力等)開発の拡大など、最大限の取り組みを行っているところである。
  • エネルギー集約度20%低減プログラムは、2010年にベースライン比で1億9千万炭素トン(t-C)のGHG排出削減をもたらし、世界において最大規模のGHG排出削減行動となる。
  • 日本の25%排出削減目標の前提条件*についても議論がなされた。ある中国の参加者は、中国がコミットする国内行動を検討する際、さまざまな政策指標(エネルギー集約、再生可能エネルギー導入、自動車燃費基準等の目標)のパッケージが適切なフォームとなりうる点を指摘するとともに、絶対値削減目標(キャップ)とコミットメントの両者の違いを明確にすることが重要である点を強調した。
  • 日本が25%削減を達成するためには、GHG排出に対する明確な価格シグナルが必要である。また、補助金を通じた政府による支援も重要な政策ツールである。
    *すべての主要国の参加による意欲的な目標の合意が日本の国際社会への約束の前提
 
セッション3:経済刺激策パッケージ
  • グリーン経済刺激策パッケージ(green stimulus package)はGHG排出削減に対して限られた影響しか持たず、気候・エネルギー政策の代用とはならない。経済刺激策パッケージには、国内レベルで構造変化を促すような規制枠組みによるサポートが必要である。 強固な国内規制枠組みを構築するとともに、グリーン投資に向けたよりよい国際協調が必要である。
  • グリーン経済刺激策の鍵を握るのは、短期的な投資と長期的な持続可能性のゴールの両者をいかに連携させるかにある。どの経済刺激策パッケージがもっとも持続可能なものになりうるのか検討する際に、さまざまな側面―低炭素型開発、持続可能な開発への国内の優先政策との協調、持続可能な経済への長期的な移行との連携、ガバナンスのメカニズムなど―にもたらす影響を検証する枠組みが求められる。
  • 中国は、“政治と赤の中国(political and red China)” (1949-1979年)から、“経済と茶の中国(economic and brown China)” (1979-2009年)へと発展の道を歩んできた。そして、昨今のグリーン経済刺激策を皮切りに、“協調とグリーンな中国(harmonious and green China)”(2009-2049年)に進展する可能性がある。豊富な自然資源、盤石な政府、そして形成されつつあるグリーン文化は、中国がこうした進展に向けてよい位置にあることを示唆するものである。
  • 韓国では、経済成長のスローダウン、不安定なエネルギー安全保障、及び気候変動の3つの問題に対処する必要性が、グリーン成長プログラムの動機付けとなった。 韓国は同プログラムを創出するために十分な予算措置を行ったのみならず、サポートする法的枠組みや重要な投資分野に焦点を当てた戦略を構築した。同プログラムは韓国のGHG排出削減中期目標に影響を与えることが期待されている。
  • グリーン経済刺激策における投資オプションを決定するにあたり、限界削減費用曲線を参照することが提案された。
  • 中国の第11次五ヶ年計画におけるエネルギー集約度低減20%の目標は、グリーン経済刺激策の多くの要素を含むものである。最近まとめられたエネルギー集約目標に関する3年にわたる調査では、構造変化よりも省エネルギー技術への投資が目標達成により寄与することが結論付けられている。
 
セッション4: コベネフィット・アプローチ
  • コベネフィットはアジアにおいて一層注目を集めている。コベネフィットを実践に移すためには、環境ガバナンスがコベネフィットの促進に与える影響や将来枠組みの緩和基金におけるコベネフィットへのインセンティブ、そして黒色炭素に関するUNFCCCのワークプログラムについてさらなる研究が求められる。
  • 日本国環境省は、四川省攀枝花(パンジホア)市での二国間コベネフィット・プロジェクト等を通じてアジアにおけるコベネフィットの促進に積極的に取り組んでいる。また、同環境省は、コベネフィット・アプローチの拡大に向けて技術マップ・カタログを作成した。コベネフィットの障壁克服のためには、気候問題に係わらない地方の政策立案者が政策レベルで気候問題と開発のコベネフィットをより一層認識することが必要である。プロジェクトレベルの障壁克服においては、コベネフィットの定量的評価と、コベネフィットをもたらすCDMプロジェクトを実施するための十分な資源が必要である。
  • 気候変動対策と大気汚染対策のコベネフィットを比較した費用対効果の分析は、気候変動政策の公衆衛生上における便益のみでは途上国が気候枠組みに参加する十分なインセンティブとはならないと結論づけている。むしろ、途上国にとっては自国の大気汚染規制に投資をする方が費用対効果は高いと思われる。しかしながら、気候変動対策と大気汚染対策を統合したアプローチは便益を高める可能性を有した選択肢である。
  • 中国におけるGAINS-ASIA モデルを用いた気候変動対策と大気汚染対策のコベネフィットに関する調査結果は、費用効率の高い統合的戦略によって、通常のアプローチに比べて、大気汚染規制のコストを80%まで削減することが可能と示している。エネルギー消費の削減策を含んだ賢明な方策の組み合わせは、大気汚染規制コストを一層削減し、GHG排出のさらなる削減を達成することができる。
  • アジアにおいて気候変動対策と社会的ニーズのコベネフィットを生み出すローカルレベルでのプロジェクトは多数存在する。その中でも、中国・黒竜江省で地元のわらを断熱材として使用し建物のエネルギー効率を改善させるプロジェクトは興味深い。コベネフィット・アプローチの効果を高める鍵は、この黒竜江省のプロジェクトのような地元に適したプロジェクトを国家・国際的なコベネフィット・プロセスとリンクさせることである。
 
セッション5: MRV/GHG インベントリ
  • 「測定・報告・検証可能な行動(MRV)」の目的は、環境効果とシステムの完成度を保証し、透明性と説明責任を高めることで各国間の信頼を醸成することである。ゆえに、MRVはコペンハーゲン合意における重要な要素となっている。
  • 一部の参加者は、全ての国の時系列データを取得することはGHG排出の傾向を把握する上で重要であると指摘し、この点において、附属書I国に対して求められているものと同様に、非附属書I国からもより定期的な詳細かつ体系的なGHGインベントリの提出が求められるとした。その一方で、他の参加者は、MRV要件の差異化は、共通だが差異ある責任及び各国の能力に基づくべきである点を強調した。こうした異なる見解を調和するためには、資金面及びデータ収集上の障壁を乗り越えるための支援に取り組むことが必要である。
  • 全ての「途上国における適切な緩和行動(NAMA)」はMRVの対象とされるべきであるが、短期的だけでなく長期的なGHG緩和ポテンシャルを持つセクターにも投資を促すようにMRVの枠組みは柔軟なものであるべきである。
  • それぞれの途上国の取り組みを評価できるようMRVを構築することが不可欠であり、同様の取り組みを概観・評価し、途上国間での共通の緩和策を抽出するためにマトリックスの作成が提案された。
 
パネルディスカッション:まとめと協力促進
  • 緩和・適応策における情報共有を高めることは、気候変動交渉において先進国と途上国間の信頼を構築する上で重要である。先進国による高い緩和目標、途上国による自主的な取り組み、そしてバリ行動計画に則った適切なフォローは効果的な信頼醸成策である。
  • 国際及び国内レベルでの技術移転、資金提供及び能力向上を通して、「途上国における適切な緩和行動(NAMA)」を支援する適切な制度的メカニズムが求められている。NAMAはさらに差異化されるべきであり、また、NAMAの各カテゴリーは異なるMRV基準に基づくべきである。
  • 比較可能な取り組みと報告フレームワークに沿った適応への資金提供と開発援助の調整(適応基金とODAを含む)は、全てのレベルにおいて適応ガバナンスを向上させるであろう。
  • 気候枠組みにおいて技術移転は重要な課題である。しかしながら、誰が技術を所有し、いかに効果的に移転ができるのかといった問題がいまだに障害となっており、民間セクターを組み込むことで改善が図られると思われる。

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