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■アジアにおける「2013年以降の気候変動枠組みに関する非公式対話2006」
- 北東アジアに続き、バンコクにて東南アジアでの対話を開催
2006年7月24日

財団法人地球環境戦略研究機関(IGES、神奈川県葉山町 理事長 森島昭夫)は、平成18年7月19~20日、タイ・バンコクにおいて、「2013年以降の気候変動枠組みに関する非公式対話:東南アジア」を国連アジア太平洋経済社会委員会(UNESCAP)と共催で実施し、京都議定書以降の気候変動に関する枠組みについて意見交換を行いました。本対話には、インドネシア、カンボジア、シンガポール、タイ、フィリピン、ベトナム、マレーシア、ミャンマー、ラオス及び日本から、政策担当者、産業界、有識者、NGOなど東南アジア諸国の関係者等約70名が参加しました。

「2013年以降の気候変動枠組みに関する非公式対話」は、一連の対話を通じて、京都議定書後の気候変動に関する国際枠組みについて、アジアにおける議論を深めるとともに、将来枠組みの形成にアジアの視点を反映させようという取り組みで、2005年度*から実施しているものです。

2年目となる本年度は、昨年特に関心が高かった4つのテーマ、すなわち①エネルギー政策と持続可能な開発、②クリーン開発メカニズム(CDM)、③技術開発と技術移転の促進、④気候変動への適応策、についてさらに議論を深め、その結果導き出されたアジアの関心事項を踏まえたオプションを取りまとめて、次回以降の国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)等で提示して、国際枠組みの交渉に反映させることを目指します。本年度は、前回実施した北京(7月3~4日、北東アジア対象)を皮切りに、今回のバンコク(7月19~20日、東南アジア対象)と次回のデリー(8月9~10日、南アジア対象)の3箇所で開催する予定です。


* 2005年度は、アジア6カ国(中国、インド、インドネシア、韓国、ベトナム、日本)において国別・地域別対話を行い、域内各国の懸念、関心、優先事項を議論しました。
2005年度の対話の成果は、報告書「Asian Perspectives on Climate Regime Beyond 2012(アジアから見た将来気候政策枠組み)」としてとりまとめ、2005年11・12月の国連気候変動枠組条約第11回締約国会議(COP11)及び京都議定書第1回締約国会合(COP/MOP1)や2006年5月の国連持続可能な開発委員会第14会期(CSD14)でのサイドイベントで発表しています。


対話の概要につきましては、こちらをご参照ください。

【本件に関する問合せ先】
(財)地球環境戦略研究機関(IGES)
気候政策プロジェクト 主任研究員
須藤智徳 電話:046-855-3871

IGES 広報担当:城戸めぐみ
Email: iges@iges.or.jp
〒240-0115 神奈川県三浦郡葉山町上山口2108-11
Tel: 046-855-3734 / Fax: 046-855-3709



資料

「2013年以降の気候変動枠組みに関する非公式対話:東南アジア」概要

1. 開催概要

開催日時: 2006年7月19-20日
開催場所: バンコク・国際連合会議センター
実施主体: (財)地球環境戦略研究機関(IGES)
国際連合アジア太平洋経済社会委員会(United Nations Economic and Social Commission for Asia and the Pacific)


2. 対話の概要

(1) エネルギー安全保障・開発と気候政策

原油価格の高騰に伴い、エネルギー安全保障が各国にとって大きな懸念事項となっている。特に、エネルギー生産、消費ともに温室効果ガス排出と深い関係があることから、人口が多く、また経済成長が著しいアジア諸国においては、エネルギー問題と気候政策は連携した取り組みが必要である。
エネルギー安全保障の観点及び温室効果ガス排出削減の観点から、各国では再生可能エネルギーの開発やエネルギー効率改善を開発政策の一環として積極的に取り組んでいく必要がある。
一方、途上国においては貧困削減が優先課題であり、貧困層に対するエネルギー供給が貧困対策として重要である。これまでは、必ずしも貧困対策と気候政策は一体的に議論されてこなかったが、今後は両者を関連付ける取り組みが必要である。
途上国においては、再生可能エネルギー開発や省エネに関する技術や資金が不足しており、十分な対策が困難である。途上国自身や途上国間で利用可能な技術もあり、こうした技術を積極的に利用する必要がある。


(2) クリーン開発メカニズム(CDM)
CDMは途上国にとって有効な排出削減メカニズムとして期待される。ただし、CDMを効果的かつ継続的に実施していくためには、2013年以降も長期の約束期間が定められることが必要である。
途上国においては特に持続可能な開発への優先度が高く、CDMの実施を持続可能な開発の実現とリンクすることが期待される。後発開発途上国(LDC)でのCDM実施を促進するために、LDCでのCDM事業については特に手続きの簡素化・柔軟化を認めるとともに、事業準備資金等を先進国が支援する必要がある。一方、追加性(Additionality)条件を緩和することについては慎重な検討が必要である。
先進国からの資金・技術移転を伴わず途上国が単独で実施するCDM事業(ユニラテラルCDM)から生じる認証排出削減量(CER)を割り引いて発行する手法が提案されているが、一方で、ユニラテラルCDMとして自国のみでCDM事業を実施することができない途上国もあるなどの懸念もある。
特定のセクターを対象としたCDMや特定のプログラムに基づくCDMについては、事業の追加性、CDM事業による排出削減量管理等の観点から更なる検討が必要である。


(3)技術開発・技術移転
国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の究極目標を達成するためには、更なる技術開発が不可欠である。こうした技術開発の促進や途上国に対する技術移転とともに、途上国内での技術普及を進めていく必要がある。また、途上国がすでに有している技術利用を促進する政策も必要である。(ユニラテラルCDMもそうした政策のひとつとして議論された。)
市場を通した技術移転の促進に関しては、世界貿易機関(WTO)など国際貿易ルールの枠組みにおいて取り組むといった、CDMに頼らない方法もある。一方、商業的に移転が困難な技術については、UNFCCCプロセスを活用・強化することが必要であり、WTO等のプロセスと相互補完的な制度とすることも可能である。
民間セクターの積極的参加を促すためには、公的研究機関の活用や、優遇税制の導入など、政府の役割が重要である。
途上国では、技術の発展段階を一足飛びに駆け上がる「かえる跳び(leapfrogging)」が必要である。その一方で、そうした新技術を運営・維持管理していくための能力を併せて形成していく必要があり、技術の発展段階をひとつずつ登っていくステップ・バイ・ステップ・アプローチが現実的である。
国際的な技術基準の設定について、各国の国内事情を反映させる必要性から否定的な意見が多く見られた。ただし、家電製品、運輸等といったプロジェクト・ベースのCDMへの適用が容易ではない分野については、国際技術基準もひとつのアプローチとして考慮するべきだとの意見もあった。また、各国の技術基準の情報交換が有益であるとのコメントがあった。


(4)気候変動への適応
気候変動の緩和対策に比べ、気候変動への適応問題に対する国際的な認知度は未だに低い。
東南アジア諸国では、既に気候変動に関する災害が多く生じており、早急に気候変動への適応に取り組まなければならない状態である。
国際制度については、気候変動への適応問題に関する財政的な支援が十分ではなかったり、既存のメカニズムが複雑すぎるといった問題を抱えている。例えば、現行の地球環境基金(GEF)の適格性審査では、適応対策事業と開発関連事業を厳格に区別した審査が行われているが、両事業は関連性が強く、後発開発途上国(LDC)にとってこの区別を判別することは難しい。
気候変動に対する適応への対応は、国や地域間での差がある。適応問題への政策立案や国内ファンド設立など積極的な対応を行っている国もある一方で、多くの参加国では、気候変動による影響の評価や国内における適応問題の専門家が不足しており、地域間及び二国間協力が必要である。また、国家開発計画における適応問題の位置づけやODAの有効活用の検討も重要である。
国内及び国際的な対応としては、気候変動に対する適応に資する技術の情報公開・開発・普及など、官民協力による促進が期待されている。また、民間に対するインセンティブの提供とその手段について今後の更なる検討が必要である。


3 . 今後の課題
今回の対話では、途上国における貧困対策等、持続可能な開発と気候変動問題を関連付け、国際的に取り組んでいく必要性が認識された。その際、開発・エネルギー安全保障、技術開発・移転、CDM、適応について、今回の対話で示された意見・課題等を詳細に検討し、アジア各国の意見として将来枠組みに反映させていくことが重要である。

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