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■アジアにおける「2013年以降の気候変動枠組みに関する非公式対話2006」を開始
2006年7月7日

財団法人地球環境戦略研究機関(IGES、神奈川県葉山町 理事長 森島昭夫)は、平成18年7月3~4日の中国・北京を皮切りに、アジアにおける京都議定書以降の気候変動に関する将来枠組みについて、さまざまな関係者間の対話を実施する「2013年以降の気候変動枠組みに関する非公式対話2006」を開始しました。

これは、一連の対話を通じて、京都議定書後の気候変動に関する国際枠組みについてアジアでの議論を促進するとともに、将来枠組みの形成にアジアの視点を反映させようという取り組みで、2005年度から実施しているものです。2005年度は、アジア6カ国(中国、インド、インドネシア、韓国、ベトナム、日本)において国別・地域別対話を行い、域内各国の懸念、関心、優先事項を特定しました*1

2年目となる本年度は、昨年明らかになった特に関心の高い4つのテーマ(エネルギー政策と持続可能な開発、クリーン開発メカニズム(CDM)、技術開発と技術移転の促進、気候変動への適応策)についてさらに対話を深め、その結果導き出されたアジアの関心事項を踏まえたオプションを国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)等で提示し、京都議定書後の気候変動に関する国際枠組みに反映することを目指します。また、本年度はアジアを北東アジア地域、東南アジア地域、南アジア地域の3つの地域に分け、今回の北京(7月3~4日、対象:北東アジア地域)を皮切りに、バンコク(7月19~20日、東南アジア)及びデリー(8月9~10日、南アジア)の3箇所で開催する予定です。

北京における対話「2013年以降の気候変動枠組みに関する非公式対話:北東アジア」は、中国・能源研究所(Energy Research Institute: ERI)の協力の下に実施。中国、韓国、モンゴル、日本から政策担当者、産業界、有識者、NGOなど約60名が参加し、参加者は個人の立場で自由かつ率直な議論・意見交換を行いました。

*1  2005年度に実施したアジア太平洋将来気候政策枠組み対話の成果は、報告書「Asian Perspectives on Climate Regime Beyond 2012(アジアから見た将来気候政策枠組み)」としてまとめられ、2005年11-12月の国連気候変動枠組条約第11回締約国会議(COP11)及び京都議定書第1回締約国会合(COP/MOP1)や、2006年5月の国連持続可能な開発委員会第14会期会合(CSD14)でのサイドイベントで発表・紹介されました。

対話の概要につきましては、こちらをご参照ください。

【本件に関する問合せ先】
(財)地球環境戦略研究機関(IGES)
気候政策プロジェクト 主任研究員
須藤智徳 電話:046-855-3871

IGES 広報担当:城戸めぐみ
Email: iges@iges.or.jp
〒240-0115 神奈川県三浦郡葉山町上山口2108-11
Tel: 046-855-3734 / Fax: 046-855-3709



資料

「2013年以降の気候変動枠組みに関する非公式対話:北東アジア」概要

1. 開催概要

開催日時: 2006年7月3-4日
開催場所: 北京・新大都飯店(Beijing, Xindadu Hotel)
実施主体: (財)地球環境戦略研究機関(IGES)
中国・能源研究所(Energy Research Institute: ERI)


2. 対話の概要

(1) エネルギー安全保障・開発と気候政策

エネルギー問題は、開発途上国の経済発展にとって最重要課題であるが、これまでの国際的な気候政策議論においては、エネルギーの安定供給やエネルギーアクセスの課題に、必ずしも適切な注意が払われてきていない。エネルギー問題と気候変動問題を同時に対処する 新たな枠組みもしくは仕組みを検討することが必要である。
しかし、気候変動問題がグローバルな問題として議論されている一方で、開発とエネルギー安全保障の問題は、各国の国内政策と密接に関連している。こうした各国の開発やエネルギー安全保障問題と気候変動問題を総合的に検討するためには、各国の実情に応じた政策(ボトムアップ型)と、大気中の温室効果ガス(GHG)濃度の 安定化を図る政策(トップダウン型)の統合を検討する必要がある。
中国では、エネルギー効率向上の潜在能力は高い。第11次五カ年計画においてもエネルギー効率改善を目標としているが、こう したエネルギーに関する国内目標を直ちに 国際気候枠組みにおける達成目標とすることに対しては抵抗があるように感じられた。
GHG排出削減政策が、地方レベルでの大気汚染改善や雇用促進といった便益(共益)につながる点に注目していく必要がある。


(2) 技術開発・技術移転
国連気候変動枠組 条約(UNFCCC)の究極 目的 を達成するためには、更なる技術開発が不可欠であり、技術開発の促進や途上国に対する技術移転とともに、途上国国内での技術普及を進めていく必要がある。ただし、途上国において新技術を運営維持、管理していくための人材を併せて育成していく必要がある。
クリーン開発と気候に関するアジア太平洋パートナーシップ(APP) における官民パートナーシップは、民間セクターの気候変動対応への積極的な参加を促進する取り組みとして注目されるが、民間企業がそうした取り組みに参加するメリットを見出しうるよう、具体的な取り組みの進展を示すことが必要である。
新技術に対する知的所有権のあり方については、国際公共財としての性格を有する「気候にやさしい技術」に関する知的所有権については、その保護条件を緩和すべきとの指摘があった。また、こうした知的所有権の利用促進については、世界貿易機関(WTO)における強制実施許諾(Compulsory Licensing)や、共有特許などによる対応の可能性が議論された。「気候にやさしい技術」がAIDS治療薬等と同様に強制特許許諾ルールに適合できるのか、どのような技術が適合するのかといった点に関し、更なる研究が必要であることが指摘された。
途上国への技術移転を先進国の数値目標として課す方法については、技術移転の数値化・指標化といった技術的な問題があり、困難ではないかとの指摘がなされた。
GHG削減が見込まれる技術のうち、 知的所有権の問題がない 比較的低水準の共有技術であっても、必ずしも途上国で普及しているとはいえない。したがってこうした技術の移転を促進していくことも重要である。ただし、旧式技術でありながら長期間にわたって償却期間や導入時の借款残高が残ってしまう等、いったん導入した技術を更新すること が容易でないこと(技術のロックイン効果)には十分留意を払う必要がある。


(3)クリーン開発メカニズム(CDM)
参加者からは、CDMについては比較的利益が高いプロジェクトの実施が先行し、必ずしも貧困削減を目指す途上国の持続可能な開発に貢献していないとの意見が出された。
CDMを通じた技術移転が必ずしも期待通りに行われていないため、移転の促進を図る改善が必要である。特に、運営維持管理ノウハウの移転が重要である。
セクターアプローチに関する可能性が議論され、ベースライン設定や追加性などについて技術的な困難が指摘された。
CDM事業を実施するには資金調達が重要だが、現行のCDMは必ずしも投資家にとって魅力的ではなく、貧困削減が優先課題である最貧国でのCDMプロジェクトは限られている。持続可能な開発を支援するODAを活用したCDM実施も検討すべき。また、認証排出削減量(CERs)価格がCDM事業の実施可能性に影響するため、政府による買取や市場における価格の安定を求める意見があった。
途上国からはCDM制度の存続に強い期待が寄せられた。


(4)気候変動への適応
「適応議定書」といったような、応のみに着目した取り組みの必要性については、賛否両論が示された。適応をめぐる国際交渉・取り組みの遅れから、独立した取り組みを目指すべきとの意見があった一方で、適応のみに着目した取り組みは、気候変動を緩和しようとする努力を疎かにする可能性があるといった見方や、適応には巨額の資金が必要とされるが、適応議定書といった 限定した取り組みでは、必要な資金が調達できないのではないかとの懸念が示された。
日本は、これまでもODAを通じて適応に貢献するインフラ整備を支援してきている。適応策に対するODAによるさらなる支援の可能性が議論された。
適応については、何らかの目標を定めるよりも、柔軟な協力体制を構築することが有効であるとの意見が出された。
気候変動の緩和対策と同様、適応プロジェクト促進のための市場メカニズム活用については、慎重な意見が多かった。しかし、さらに検討すべき必要性があるという指摘があった。


3 . 今後の課題
今回の対話では、京都議定書やAPP 等の現行の取り組みを踏まえ、情勢の変化に応じた国際協力をさらに強化させる必要性が認識された。その際、開発・エネルギー安全保障、技術開発・移転、CDM、適応について今回の対話で示された意見・課題等を詳細に検討して、アジア各国の意見として「将来枠組み」に反映させていくことが重要である。

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