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■IGESがアジアの環境戦略構築に向けた白書を発行
2006年1月31日
(財)地球環境戦略研究機関(IGES
財団法人 地球環境戦略研究機関(IGES、神奈川県葉山町)は、このたび、これまでに行ってきたアジア太平洋地域における環境戦略研究活動の集大成として、アジアの環境戦略に関する白書「持続可能なアジア:2005年とその後の将来-革新的政策を目指して(邦題仮訳)*」を発行しました。

アジアでは急速な経済発展が進むとともに人口増加も進行し、その結果、引き起こされた環境汚染や破壊は深刻であり、このままではますます悪化することが予想されます。本書では、気候、森林、都市政策、水、産業、教育の各分野からの報告をもとに、アジアにおける環境の現状を評価し、現在実施されている政策措置を再検証した上で、今後アジアが取るべき環境戦略について、横断的かつ大局的な提言を試みます。

アジアの環境資源がこれ以上減少すれば、過去30年間に得た経済的利益を失うばかりか、社会的・政治的な不安定性を招く恐れもあるとし、「持続可能なアジア」の構築に向け、緊急かつ長期的視野に立った「協調行動」の必要を訴えます。

なお、本白書について、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)議長ラジェンドラ・パチャウリ氏、元インドネシア環境相エミル・サリム氏、中央環境審議会会長鈴木基之氏より、推薦の辞をいただいています。
本白書の和文版は2006年6月頃出版予定です。

IGESホームページより、要旨(和文仮訳)および全文(英文)がダウンロード可能です:
* Sustainable Asia 2005 and Beyond - In the pursuit of innovative policies/ IGES White Paper
本白書における主な提言内容
現状認識
アジアでは、化石燃料に依存した急激な経済発展と人口増加を背景に、環境汚染や破壊が進み、環境面での脆弱性が著しく増している。この傾向は、さらなる経済発展および人口増加に伴い、加速されることが予想される。
アジアでは、この四半世紀の間に森林被覆の半分が消滅し、農地の3分の1が劣化している。世界で最も汚染の激しい15都市のうち13都市までをアジアが占め、少なくとも3人に1人が安全な飲料水を手に入れられず、2人に1人が公衆衛生を確保できない状況にある。また、少なくとも3億トン以上の廃棄物が未回収で、数百万トンの有害廃棄物が未処理のまま投棄場に放置されている。一方、アジア全体の温室効果ガス排出量は、世界全体の20%を占めており、急速な経済成長と人口増加によって急増しつつある。他方、1970年代以降、気候関連の災害によって50万人を超す命が失われた。
数々の政策措置が講じられてきたとはいえ、今日までの環境劣化へのアジア各国政府の対応は不十分であったと言わざるをえない。
アジアの環境資源がこれ以上減少すれば、過去30年間に得た経済的利益を失うばかりか、社会的・政治的な不安定性を招く恐れもある。
主な提言
■ 基本戦略
アジアにおいて、持続可能な社会を実現させるためには、緊急かつ大規模な協調行動が求められる。再生可能なエネルギーの導入や資源効率向上推進などの優先課題に向け、域内での政策やその実践を共有するために、最高首脳レベルによるアジア政府間会議の開催が必要である。
貧困から脱却するため、アジアにとっては引き続き高い経済成長が不可欠である。経済成長と持続可能性を両立させるために、困難な選択や妥協、機会費用などを明らかにする枠組みを一刻も早く確立することが必須である。
アジアの視点を反映させるべく、持続可能な開発のための国際的イニシアチブの立ち上げや形成過程に、アジアは積極的にかかわっていくべきである。
■ 分野横断的手法・施策
環境問題は、生態系、土地利用、雇用、産業など多くの分野の問題と連動しており、横断・統合的な政策立案が求められる。森林分野における森林認証はその好例である。
複雑化する環境問題に対応するには、多くの利害関係者の関与や市場原理に基づく措置、情報手続き面の整備など、複合的な政策手法の組み合わせを実施していくことが重要である。
市場メカニズムのもとで環境上健全な財・サービスの生産が行われない限り、アジアにおいて、経済成長と環境の持続可能性を同時に実現することは不可能である。
環境管理の促進のみならず新たな技術革新を生む上で、今後も政府及び地方自治体の介入による規制措置が極めて重要な役割を果たす。
環境保全活動の効果と法令順守の向上を図るため、政策形成の過程に、多様な利害関係者が最も効果的に参加できる仕組みをつくることが重要である。
公民事業提携(公共サービス事業への民間参加:PPP)は、環境保全のための財源を確保する上で有望な事業モデルである。
分野によっては、雨水利用やバイオガス発酵装置など、簡単な技術が大きな効果をもたらす場合があることも重視し、潜在的な可能性を常に評価しその普及方法を模索するべきである。
アジアは環境情報公開の面で立ち遅れている。環境に関わる確実な情報の提供・確保を保障する政策枠組みを各国政府主導により早急に構築すべきである。
■ 個別施策(抜粋)
淡水資源管理
管轄する行政組織の統合・強化による統合的な水資源管理の導入や、公民事業提携(PPP)による水道事業等実施について、今後も積極的に進めていくべきである。
水不足の有効な解決策として、水の再利用・リサイクル、海水淡水化、雨水利用など、コストが低く維持管理が比較的簡単な分野での技術発展・応用も推進するべきである。
森林保全
略奪型林業の抑制や違法伐採防止に向け、地域密着型の森林管理の導入や森林認証制度の普及・推進を積極的に行うべきである。
違法な木材伐採は、世界貿易機関の規則に則った木材輸出入を行うことで防止できる。欧州とアジアの木材輸出国の間の自主的な木材輸入許可制度は、アジアにおける違法木材貿易を減らす上で注目すべきである。
気候政策
京都議定書の目標期間の第一期(2008 ~2012年)以降の気候変動緩和のための将来枠組みを構築する上で、アジアは自らの視点を反映させるために積極的な役割を果たすべきである。
先進国と途上国が協力して温室効果ガスの排出量を削減し、途上国における持続可能な開発の促進と投資の増大に貢献するクリーン開発メカニズム(CDM)を最大限に活用するため、その適用手続きのための政策指針の明確化を早急に行うべきである。
気候変動に係る緩和策や適応策は、所得機会の創出や地域社会の整備など、貧しい人々の生活向上と連動させるべきである。
都市環境管理
国境を越えた環境問題の増加への対策の強化が求められる。データの収集・分析・監視を各国都市間が共同で実施するために、財政的基盤を持った有効な制度的枠組みの構築が急務である。
産業と持続可能な社会
市場メカニズムに基づく環境上健全な財・サービスの生産を促すため、グリーン調達の進展が望まれる。また、中国で見られる再生可能エネルギー開発のための市場メカニズムの創出の試みなどが今後注目される。
世界銀行が主導する「赤道原則」*や社会的責任投資(SRI)などの国際的イニシアチブに、アジアの金融機関が積極的に参加し、環境や持続可能な開発をより重視するプロジェクトや資金運用に、個人・機関投資家が資金を振り向けるよう促進するべきである。
すでに利用可能になっている環境技術や知識の普及と移転を促すために、知的財産権の保護や関連市場の形成を後押しする仕組みや政策が求められる。例えば、再生可能エネルギーの普及のためには、CDMによる市場形成・拡大が期待される。
* Equator Principle: プロジェクト融資において、事前に環境・社会的リスクを見定め、評価することを求める原則
環境教育
環境教育の拡充を図るために、多数の利害関係者を取り込む国内調整制度の確立や環境教育基本計画の策定などが求められる。
 
【本件に関する問合せ先】
●(財)地球環境戦略研究機関(IGES)
URL: http://www.iges.or.jp
広報担当:城戸めぐみ
Tel:046-855-3734, Fax:046-855-3709, E-mail:kido@iges.or.jp

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