ニュース&イベント


■ 「2003年アジアの環境重大ニュース」公表について

2003年12月26日
(財)地球環境戦略研究機関(IGES)
事務局長 徳田 博保
担   当 内田 益次
担   当 佐藤 章子

(財)地球環境戦略研究機関(IGES)は、1998年の設立以来、「アジアの環境重大ニュース」を発行しています。アジア太平洋地域に焦点をおいて研究活動を行っている研究機関や専門家をメンバーとするIGESの研究ネットワークから提出された報告をまとめ、2003年版アジアの環境重大ニュースを公表いたします。
今年のアジアの環境重大ニュース(暫定版)では、2機関、15カ国、73件のニュースを収集することができました。これらのニュースは、協力機関又は研究者によって選定されたもので、必ずしも各国や機関等の公式な見解ではありませんが、本地域の環境に関する最近の動向及び問題をまとめることができたと考えています。
概要は、次のとおりです。

1 水関係
今年は、国連が定めた国際淡水年であったことに加え、開始から第3回目となる世界水フォーラムが初めてアジア(日本)で行われ、水について考える機会の多い年であった。
世界水フォーラムはもとより、水を含めた包括的な環境問題を考えるフォーラムがアジア各地で開催された。
そうした中、アジアの水の現状は、以下の報告に見られるように、深刻な面がある一方で改善に向けての動きも始まっている。
フィリピンからは、セブ州において工業用水の利用により地下水の減少及び海水の浸透による塩分汚染から、10年後には住民暴動が起こっても不思議はないとの見解が寄せられている。
また、ベトナムでは、調査された事業所のうち、90%は排水基準を満たしておらず、73%は排水処理施設がなかった。
さらに、直接の水問題ではないが、地球政策研究所のレスターブラウンは、砂漠化の問題を挙げている。ゴビ砂漠は、北京の240kmにまで迫っており、タクラマカン砂漠とクムタグ砂漠は、ひとつになろうとしていること、そして砂あらしによる社会的・経済的影響は深刻であると警告している。
こうした深刻なニュースの一方、バングラデシュでは、首都ダッカに集中しているなめし革産業から排出される有害物質のブリガンガ河川への垂れ流しが問題となっていたが、これに終止符を打つため、近郊都市へのなめし革産業の移転と有害物質の処理施設建設が、政府と業者間で合意された。
今後は、包括的な水資源管理への取組みが重要であると考えられるが、こうした中、マレーシアでは、水管理行政の権限を連邦政府に一本化し、水資源に対する一体的な取組みをすることにより、質的にも量的にも十分に処理された水を消費者が使えるようになると考えられている。またモンゴルは、2004年を水の年と定め、継続して水を重要課題として検討することを明らかにした。
※なお、IGESでは、これからの淡水資源管理の重要性に鑑み、2003年11月に新たに「淡水資源管理プロジェクト」を設置した。

2 温暖化関係
今年は、京都議定書が発効し地球温暖化対策が一段と進むことが期待されていたが、結局ロシアの批准がないまま、議定書の発効は持ち越しになった。しかし、京都議定書への期待は薄れてはおらず、温暖化防止に関する各国の様々な取組みが報告された。
インドネシアのジャカルタで「クリーン開発メカニズムに関する国民ワークショップ」が開催され、政府、議会、研究機関、専門家組織、NGO、民間企業、国家機関関係者等が参加し、「インドネシアの法令に則って京都議定書を批准する。」、「インドネシアにおけるCDM活動を促進するため「指定国家機関(DNA)」を設立する。」という内容の宣言を採択した。
ネパールでは、バイオガス利用による大気中への二酸化炭素排出削減が期待されている。バイオガス装置が国内に約10万台あることから、京都議定書の仕組みを活用して、二酸化炭素排出削減の見返りをお金で請求することにより、年間200万USドル以上の収益が見込めるとして、関係者が政府に働きかけを行っている。
一方でニュージーランドでは、農作業から発生する二酸化炭素以外の温室効果ガスが問題となっており、農業排出ガス研究のための新税を農業関連事業者から徴収する政府案が出されたが、農民連合の反対運動により政府案は修正され、新税の徴収はなくなった。

3 廃棄物処理関係
廃棄物処理関係では次のような報告が寄せられている。
モンゴルでは、家庭・産業廃棄物法が制定された。これにより、家庭・産業廃棄物の初期段階からの分別処理のほか、廃棄物の循環促進が期待される。
また、ネパール政府は、民間企業に首都カトマンズから出るごみを利用して有機肥料を生産することを30年間に渡って認める決定をした。地元住民から強い反対のある現在のごみ処分場に代わり、首都圏のごみを50年間に渡って持続可能な方法で管理するために新処分場を設置することになり、当該企業は、この新処分場に搬入されるごみから有機肥料を生産することになった。

4 自然保護関係
豊かな自然に恵まれたアジアからは自然保護についても多くの報告があった。
カンボジアは、1925年にアンコールワット遺跡など1万500ヘクタールの地域を東南アジアで初めて保護区域として指定したが、今日、保護区域の総面積は300万haを超え(国土の2割弱)、さらに保護区域についての行政権限と責任、保護区域の生物多様性と天然資源の保護等を目的とした「保護区域法」の制定を目指している。
マレーシアでは、パハン州皇太子が率いるダイバーたちが環境にやさしいセメントで作られた漁礁を沈めた。そしてバージ(はしけ)の無責任な投錨によりさんご礁が損傷し、またジョホール沖に大量のオニヒトデが発生したが、当局は、バージ作業員の責任を問うとともに、オニヒトデ発生の原因調査を命じるなど迅速に対応した。
極東ロシアでは、シベリアの石油をパイプラインで中国・アジア太平洋市場に送り出す計画があり、これに対してシベリア、極東、西北ロシアの環境NGOのほとんどが、この計画は高度の保全価値を持つ手付かずの地域を横切り、無垢なシベリアの環境に年間何万トンもの石油をばらまくことになるとして政府の戦略を批判している。
その他では、マレーシアの3つの湿地帯及びネパールの3つの湿地帯がラムサール条約登録湿地となったこと、モンゴルのウブス湖盆地及びベトナムのフォンニャーケーバン国立公園が世界自然遺産リストに登録されたことなどが報告されている。

5 その他
上記の分野に属さないものとして、つぎのような興味あるニュースが寄せられている。
中国では、「企業の環境パフォーマンス情報の開示に関する告示」が公布され、これにより法令の基準を満たしていない企業のリストがメディアを通じて定期的に一般に公表されることとなった。リストに載った企業はその環境パフォーマンスを早急に開示することが義務付けられる。
ラオスでは、環境保護法を施行するため、各県、ビエンチャン特別市及びサイソンブン特別区が、それぞれ2020年と2010年に向けた環境戦略と2001年から2005年にかけての環境行動計画を起草した。その最も重要な目標は、都市環境の質を向上させ、社会経済発展のために必要とされる主要な潜在力である自然資源を効率的に利用し、その潜在力を各地域における貧困緩和の過程に組み込むことである。

「2003アジアの環境重大ニュース」 目次はこちらをご覧下さい


【連絡・問合せ先】
事務局 佐藤章子
財団法人 地球環境戦略研究機関(IGES)
〒240-0115 神奈川県三浦郡葉山町上山口2108-11
電話:046-855-3720 ファックス:046-855-3709 E-mail

ページの先頭へ戻る