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明日香壽川 (気候変動グループ ディレクター)

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E-alert Interviews 第15回 (November 2010)
COP16直前インタビュー:ポスト議定書の行方

明日香壽川
気候変動グループ
ディレクター

農学修士(東京大学)、経営学修士(欧州経営大学院)、学術博士(東京大学)。東北大学東北アジア研究センター教授。
経済発展の目覚ましいアジア地域の環境問題およびエネルギー問題に関して、その実態および歴史的経過を解明するとともに、現在この地域でどのような国際協力が可能か、などの問いについて総合的かつ多角的に研究を行う。特に、地球温暖化問題や越境大気汚染問題のような、一国だけでは解決できない問題における条約、協定、議定書、そして環境税や排出量取引などの国内外における具体的な制度設計や政策のあり方に関して、政治学、経済学、経営学、社会学、哲学、倫理学などの社会科学の側面から追求し評価する。



 

---- ポスト議定書を巡る交渉で注目すべきポイントは何でしょうか


明日香:
2012年で京都議定書の第一約束期間が終了し、その後の国際的な枠組みをどうするのかということが最大の論点です。その解として、現在、大きく3つのシナリオが考えられます。

まず、プランAとして、京都議定書に代わる新たな議定書を定め、先進国を含めた全ての国が法的拘束力を持った約束を持つというシナリオがあります。一方、プランBでは、京都議定書を延長し、第二約束期間の目標を先進国(米国を除く)が持つとともに、残りの国(米国や途上国)は別の枠組みの下で何らかの法的拘束力を持った目標を持つというものです。さらに、国際的な枠組みに関しては新たな合意が形成されず、各国が独自の取り組みを行う混沌とした状況になるというプランCも考えられます。

日本やロシアはプランAを主張していますが、現実的には、米国や途上国が、他の先進国と同じような法的拘束力を持った枠組みに新たに入ることは難しいだろうと考えられます。一方、プランCは「温暖化対策の実効性」という意味では好ましくありません。というのは、結局、法的あるは何らかの強制力のある拘束力や義務がない場合には、各国はできることしかやらなくなる訳で、その場合には、温暖化対策の目標―例えば、産業革命以降の温暖化を2℃以内に留めるいわゆる2℃目標を達成するのはほぼ不可能になると考えます。

個人的には、プランBのシナリオにどのようにソフトランディングさせていけるかが課題だと考えています。そのためには、法的拘束力の柔軟な解釈等、クリエイティブな考え方が求められると思います。
 


---- 交渉の鍵を握るであろう米国、中国、インドなどの動向について教えてください


明日香:
―米国
米国ではこの前の中間選挙で共和党が躍進したことで、温暖化対策法案がこの2~3年で通る可能性はほぼゼロになったと考えられます。もちろん、米国の環境保護庁が大気浄化法(Clean Air Act)を用いて、独自の規制で温暖化対策を行おうとしています。しかしながら、その効果については未知数です。ただ、連邦レベルでは、かなり後ろ向きになっている印象があるものの、カリフォルニアや東部州等、州レベルでは排出量取引制度が動きつつあります。特にカナダやメキシコの州もオブザーバーとして参加するカリフォルニアを中心とした西部での排出量取引の制度の動向は注目されます。

―中国
中国では、昨年のコペンハーゲンの会議の前に数値目標を出したものの、国際社会から十分な認識を得られなかったことに対してネガティブな感情があると思われます。つまり、がんばっても評価されなかったために、少々やる気をなくしています。従って、短期的には、目標数値をより厳しいものにすることなどを新たに表明する可能性はないだろうと考えます。一方、こうした温暖化対策は基本的にはエネルギー政策であり、同国では、エネルギー安全保障、コスト削減、生産性向上、競争力強化、そして大気汚染削減などの理由から、再生可能エネルギーの導入や省エネ促進を積極的に進めています。今年は2005年から2010年までの第11次5カ年計画の最終年にあたりますが、GDP当たりのエネルギー消費量を5年間で20%下げるという目標を達成させるという目標のために、わざと停電させる地域や企業も出ています。これに対しては、わざと停電を起こし目標を達成するような非効率的な対策を取るべきではないと政府や研究者からも非難の声もあがっています。 しかし、これはある意味では中国全体が目標達成に対して非常に真剣に取り組んでいる証ともいえるともいえるでしょう。

―インド

インドも同じく国際的な(法的拘束力を持つという意味での)コミットメントに対しては拒否反応を示していますが、一方で、国内では省エネを積極的に進めています。興味深いのは、PAT(Perform Achieve Trade)と呼ばれるシステムで、産業セクターで原単位目標を決めてベースラインよりも省エネした場合に削減分をクレジットとして売ることができます。これは、一種の排出量取引制度と呼べるものであり、EUや日本が途上国に対して要求しているセクトラル・クレディティング・メカニズムと呼ばれるメカニズムに発展する可能性があります。
 


---- COP16に何を期待しますか


明日香:
正直なところ多くを期待するのは難しいでしょう。というのは、南北間で対立する争点がたくさんある上に、パッケージで政治的合意をするというモメンタムが前年のコペンハーゲンに比べると弱いと思われるからです。しかしながら、多くの争点の中からも比較的対立が少ない論点を選んで合意を得るような交渉を期待したいと思います。法的拘束を持った最終的な合意については、次の南アフリカでというのが現実的なところかもしれません。

日本に関しては、現時点では、冒頭で申し上げたプランA―新たな議定書の下で、先進国を含めた全ての国が法的拘束力を持った約束を持つというシナリオ―にこだわる意義は十分理解できます。一方で、プランAに固執し続けることや、プランBやCがどういう意味を日本や国際社会に対して持つかということについても、並行して考え始める時期にあると個人的には思っています。

---- ありがとうございました。



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