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第15回 [2010年11月]
明日香壽川 (気候変動グループ ディレクター)

第14回 [2010年8月]
マグナス・ベングソン (IGES持続可能な消費と生産グループ ディレクター)

第13回 [2010年2月]
小林正典 (IGESプログラム・マネージメント・オフィス コーディネーター)

第12回 [2009年9月]
幸田シャーミン (ジャーナリスト、IGES理事)

第11回 [2009年2月]
ピーター・キング(IGESバンコク事務所・主任アドバイザー)

第10回 [2008年11月]
ラジェンドラ・パチャウリ(TERI所長)、ラビンダー・マリク(TERI日本事務所)

第9回 [2008年8月]
小柳秀明(IGES北京事務所所長)

第8回 [2008年2月]
平石尹彦(IGES理事・上級コンサルタント)

第7回 [2007年7月]
浜中裕徳(IGES理事長)

第6回 [2007年3月]
片岡八束(IGES研究員)

第5回 [2006年7月]
アンチャ・スリニヴァサン(IGES上席研究員)

第4回 [2006年3月]
プジャ・ソーニー
(IGES研究員)

第3回 [2005年11月]
渡邉理絵(IGES研究員)

第2回 [2005年6月]
ムスタファ・カマル・ゲイ
(IGES研究員)

第1回 [2005年1月]
森島昭夫(IGES理事長)





E-alert Interviews 第13回 (February 2010)
地域と世界を結ぶ架け橋に
― 鍵は「人との係わり合い」


小林正典
IGESプログラム・マネージメント・オフィス
コーディネーター

千葉大学法経学部(法学士)、国際基督教大学大学院(教養修士)、ジョージア大学法律大学院(法学修士)修了。国連日本政府代表部経済班専門調査員、国連本部持続可能な開発部持続可能な開発専門員(以上ニューヨーク)、国連砂漠化対処条約事務局アジア地域部プログラム担当官(ジュネーブ/ボン)を経て2004年8月よりIGESに勤務。



IGESは、アジア太平洋環境開発フォーラム(APFED)やアジア環境法執行ネットワーク(AECEN)、アジア欧州環境フォーラム(ENVForum)等、地域との緊密な連携を通して、持続可能な開発に向けた取り組みを支援するとともに、ダイナミックに動きつつある環境政策の形成プロセスに積極的に係わっています。今回のE-alertインタビューでは、これらの国際的連携の中核で活躍する小林正典さん(IGESプログラム・マネージメント・オフィスコーディネーター)にお話を伺いました。

社会のために役立つ仕事を
---- 小林さんが環境問題に係わるようになったきっかけは何でしょうか?

小林:
子供の頃から、父親に「社会のために役立つ仕事をしなさい」と教えられてきたのが大きかったですね。学生時代は国際法等を学び、留学を経て、外務省の専門調査員として国連を中心とした経済協力・環境保全の調査に係わりました。その後も国連で、持続可能な開発や砂漠化の問題といった環境問題に取り組んできました。開発や環境問題は、国家間の政治力学や社会正義、そして倫理といった問題とも係わる等、奥が深い一方で、現場での成果を具体的に見ることができるので、非常にやりがいがあると感じています。

アジアで活発化する国際的連携
---- IGESでは、コーディネーターとして、アジア太平洋環境開発フォーラム(APFED)やアジア環境法執行ネットワーク(AECEN)、アジア欧州環境フォーラム(ENVForum)等、国際的なネットワークとの連携に従事されています。IGESはこうした国際的な連携に力を入れていますが、それぞれの具体的な活動内容を教えて戴けますか?

アジア太平洋環境開発フォーラム(APFED)
小林:
APFED II 最終報告書ドラフト会議(インドネシア・バリ)
APFEDでは、政策対話や実証プロジェクト、表彰制度を通じた事例研究等、持続可能な開発に向けたマクロ政策と地域密着型の取り組みの双方をアジアの研究機関ネットワークと協働して支援する一方、そうした活動から得られる知見を幅広く情報発信しています。

APFEDは2001年に設立され、第2期(2005年~)からは、実証プロジェクト47件・事例研究21件を含め、政策と現場を絡める幅広い事業を展開しています。事務局を務めるIGESは、パートナーである機関や専門家と協力し、単なる事例紹介ではなく、優良事例に至った成功要因や今後の政策的課題等を明らかにしながら革新的な取り組みの拡大を奨励しています。2009年には「気候変動」「3R」「生物多様性」をテーマに複数の優良事例をまとめた報告書の他、DVDも作成し、地域社会での取り組みと政府の政策発展をどのように相乗効果的に展開していくのか、様々な視点から各種の提言を行いました。
APFED公式サイト>>


アジア環境法執行ネットワーク(AECEN)
---- 地域社会での取り組みから政策の発展を後押ししていくわけですね。IGESが事務局機能を担うことになったAECENではどういった活動をされているのですか?

小林:

AECENは、環境法の順守・執行を推進するアジア地域のネットワークです。アジアには公害対策の法律が沢山あるのですが、実際は十分守られているとはいえないところもあり、効果を発揮していないのです。

AECENの活動は大きく分けて3つあります。ひとつは、環境法の実施を効果的に進めるための政策対話です。2つ目は、メンバー国の中で比較的進んだ取り組みを他の国や機関と共有する二国間協力プログラムの実施です。例えばIGESは、日本の土壌対策汚染法における経験を、まだ関連法がないタイと共有し、タイの法整備に向けた支援を行っています。3つ目は、環境行政で活躍するアジアの女性行政官を表彰し、環境分野での女性の活躍を促すことです。

---- 多様なアジアで、ある国の取り組みを他の国で実践するのはかなり難しいのでは?

小林:
その通りです。ある国の事例をそのまま他の国にあてはめることは難しいですから、先進的な事例を学びつつ、自分たちの国に一番合った形に修正して法整備を進めることが求められます。また、先進国が常にモデルとなるわけではなく、例えば環境影響評価については途上国の方が日本より実施件数が多かったりもしますから、途上国から日本が学び、日本の環境行政を発展させるという視点も重要であると思います。日本はいつも優等生であるわけではないので、海外から得られる教訓や情報を日本の人たちとも共有し、先進国・途上国ともに相互に学び合うことが必要です。

アジア欧州環境フォーラム(ENVForum)
---- IGESがメンバーであるENVForumとも、2009年12月にデンマーク・コペンハーゲンで開催された国連気候変動枠組条約第15回締約国会議(COP15)でサイドイベントを共催する等、連携を深めていますね。アジアと欧州の協力はどういう形で進められているのでしょうか?

COP15のREDDサイドイベントで研究成果を発表
小林:

ENVForumでは、多様な政策課題に対してアジアと欧州の様々な関係者(マルチステークホルダー)が政策対話を行っています。

COP15では、IGESとENVForum等が気候変動政策の次期枠組みにおける重要課題であるREDD(森林伐採・劣化に起因する温室効果ガスの排出削減)についてサイドイベントを共催しました。様々な国が集まって共通の目的に向かって協力を進めるという点で、アジアも欧州も目指すところは似ていますが、アジアには欧州ほど成熟した協調関係がまだありません。

したがって、ENVForumでは、先進的な欧州型の取り組みを学ぶという一方で、欧州型の域内協力のあり方を体感することもできます。そうした中で、欧州と協力するためにアジアの国々の間で協力関係が高まるという流れも出てきています。

国際的連携・ネットワークの課題
---- アジア内外で連携が進んでいるのですね。これらの国際的連携の課題はどういった点でしょうか?

小林:

どのネットワークにおいても、対話や情報共有の域から一歩進んで、長期的に、具体的に目に見える形での問題改善につなげていくことが共通の課題であると思います。例えば、対話の成果を人材育成や制度改革につなげていくことができれば理想ですね。また、提案された取り組みを具体的な事業の形にして、国際協力機構(JICA)のような技術協力機関が支援できるような橋渡しができればとも考えます。但し、それには資金の問題もありますし、ネットワークを超えた機関や事業体との協力も必要になってきます。資金を確保していくためには、問題を放置することで長期的にどれだけの損失を社会が被るのか、また、改善策をとることでどれだけの便益が得られるのかを明確に示していくことが重要であると思います。

IGESにとっての課題ですが、フォーラムやネットワークの事務局を務めることで国際的な連携の枠組みの発展に貢献しつつ、そうした連携の下で展開される具体的な事業活動においても、研究調査や技術支援といった面で主体的に動き、実績を示していくことが重要であると思っています。枠組みと事業活動の両輪に積極的に係わり、結果を出していくことが課題ですね。

環境に携わる上で必要な専門性=「人との係わり合い」
---- 小林さんはアジアの環境分野で活躍する多くの人たちと係わってこられています。環境問題、特に国際的な連携に係わる上で日頃大切にされているものは何でしょうか?


小林:

先日、環境を学んでいるという若い学生から、「環境分野で将来仕事をする上で必要な専門性は?」という質問を受けました。環境問題は分野横断的で、特定の分野での深い知識があれば十分ということではないと思います。環境分野の仕事をしていく上で、特定の分野の専門性を深めるというのも一つの方法です。その一方で、環境改善に向け、「人とどう係わり合うのか」といった組織・地域社会の運営のようなものを専門技能として兼ね備える人も必要ではないかと思います。そうした専門性は、将来環境の仕事をしていく上で、あるいはすぐに環境の仕事に就けなくても、民間企業や行政、NGOの中で仕事をするにあたって役立つのではと私は答えました。環境問題は一人で解決することができません。人とのネットワークを作り、持続可能な社会作りに向けた取り組みを展開できる素養や意欲が何よりも必要であると思うのです。

IGESが携わっているネットワーク活動でも、人との係わり合いを大切に、一方通行な係わりではなく、相互で学び合う関係に向けていくことが信頼を生み出すと思います。2010年7月に出版予定の「IGES白書」では、“地域社会と環境”をテーマに論稿を作成しましたが、環境問題の中核的なテーマは、人の心にどう訴え、行動変化を促しながら、地域社会の仕組みをよりよいものに変えていけるかということです。社会への働き掛けや、一般の人たちへの啓発活動といった技術を体得して、それを専門として実践できる人材を育てていくことが重要であると思います。

地域社会と世界を結ぶ架け橋に
---- 最後に、これから取り組んでいきたい課題はありますか?


小林:
APFEDフィールド調査の様子(パキスタン・ミティの町民と)
自分たちが日頃提言しているような取り組みを、自分の住む地域社会でも実践し、環境に配慮したより先進的な活動を展開できたらと思っています。アジアや世界に向けて政策提言を行う上で、自分たちの足元、つまり、地域社会や日本国内での取り組みが基本になると思うからです。途上国に環境保全を提案する一方で、自分たちは食料、木材、エネルギーといった生活必需品目を海外(途上国を含む)に依存しています。こうした現実を踏まえた上で、自然環境とバランスのとれた自律的な社会発展のモデル作りにおける日本の役割を考えていきたいと思います。

自然環境と人間社会のより良い関係を構築していくという理念に従い、人との係わりや地域社会の仕組みづくりを通じて、模範となる先進的な取り組みを日本・アジアで手掛け、世界に発信できればすばらしいと思いますし、その過程でIGESが日本と世界をつなぐ架け橋の役割を果たしていかれればと思います。夢物語と揶揄されそうですが、忙殺される日々の中で、時々そんな思いに立ち返って仕事を続けていきたいです。


---- ありがとうございました。


インタビュアー:北村恵以子、山口さえ (情報発信・研究支援課)

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