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明日香壽川 (気候変動グループ ディレクター)

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マグナス・ベングソン (IGES持続可能な消費と生産グループ ディレクター)

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小林正典 (IGESプログラム・マネージメント・オフィス コーディネーター)

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浜中裕徳(IGES理事長)

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片岡八束(IGES研究員)

第5回 [2006年7月]
アンチャ・スリニヴァサン(IGES上席研究員)

第4回 [2006年3月]
プジャ・ソーニー
(IGES研究員)

第3回 [2005年11月]
渡邉理絵(IGES研究員)

第2回 [2005年6月]
ムスタファ・カマル・ゲイ
(IGES研究員)

第1回 [2005年1月]
森島昭夫(IGES理事長)





  E-alert Interviews  第4回
アジア太平洋地域の繋がり:人々の知恵を共有し
持続可能な社会を実現


プジャ ソーニー
長期展望・政策統合プロジェクト 研究員





[略歴]
インド・デリー大学デリー経済学学院修士課程(地理学)とロンドン大学東洋アフリカ学学院(SOAS)修士課程(環境と開発)を修了後、ドイツ・ボン大学開発研究センター(ZEF)で博士号(地理学)を取得。その後、地球環境変化の人間的側面に関する国際研究計画(IHDP)でのコーディネーター業務などを経て、2004年5月よりIGESの研究員として勤務。


--- これまで一環して、環境問題の分野での研究に従事されてきましたが、そもそもこの分野の仕事に興味を持ったきっかけは何でしょうか?

ソーニー:
私は子どもの頃から、野生の生物や森などについて話すことが大好きでした。小さい頃はあまり旅行をする機会も無かったのですが、高校に入りインド国内を頻繁に旅行するようになると、鳥の保護区を何度も訪れるようになり、これが大きなきっかけとなりました。保護区について強い関心を持つようになり、やがては研究の対象として価値のある分野ではないかと考えるに至りました。次から次へとつながっていき、森林保護と地元住民の知恵に関連した問題に取り組むことになったのです。

--- 日本に来たのは、何か特別な理由があったのでしょうか?

ソーニー:
これまでずっとインドに住み、また、何年も欧州で生活をしてきましたが、ここ日本については、ほとんど何も知りませんでした。日本は私にとってあまりにも遠い場所であり、日本について意識することがあまりありませんでした。日本人と会う機会や、日本についての文献を読む機会も限られていました。逆に、これが日本に来る理由となったのです。これまで知らなかった日本がどのような国なのか興味が膨らみ、自分の目で確かめたくなったのです。

---インド、欧州、日本の間でどのような文化的な違いを感じますか?

ソーニー:
驚かれるかもしれませんが、インドでは英語を日常的に使用するため、英語をしゃべりながら育ってきました。このため、欧州、特に英語を母国語とする英国では、外国にいるという感覚をまったく持ちませんでした。

しかしながら、同じ欧州でもドイツは、少し勝手が違いました。ドイツは、私が言葉をしゃべれずに訪れた初めての国でした。観光客として数日や数週間滞在するのであれば何とかなるのですが、言葉を知らずに実際に生活すると、ちょっとした苦労を経験することになります。またそれは同時に、面白い体験であったともいえるでしょう。言葉を補うために、いろいろな方法でコミュニケーションをとるようになりました。

一方、日本は、私が思い描いていた国とは大きく異なりました。当初は、遠いとはいえ同じアジアなので、共通の何かがあるだろうと漠然と考えていました。欧州でも、各国相違点があったとはいえ、いくつか類似していることもありましたので、同じことを期待していたのです。しかしながら、私の予想は完全に覆されました。たとえば、宗教。宗教と生活が密接に結びついていることはアジア全体に共通する類似点であると考えていました。タイやその周辺の国に行けば、宗教は目に見えるものですし、インドにおいても、日々の生活に浸透しています。しかしながら、日本では日常生活において宗教はまったくと言っていいほど目にしませんし、感じられません。その一方で、日本人はいまだに伝統を重んじており、社会は西洋と東洋が混在した奇妙なものになっています。たとえば家族の関係や結婚などの儀式は、非常に伝統的ですが、人々の生活スタイルは、私が考えていたよりもはるかに西洋的です。
地元住民の知恵を地域で共有
--- 現在行っている研究について教えてください。

ソーニー:
私が所属するIGESの長期展望・政策統合プロジェクト(LTP)では、『RISPOⅠ』(革新的・戦略的政策戦略オプション研究)と呼ばれる3ヵ年プロジェクトを2002年から2005年まで実施しました。このプロジェクトの下には、交通、再生可能エネルギー、廃棄物管理などのサブプロジェクトが数多くあり、私自身は地元住民の知識についての研究を担当しました。

RISPOⅠの目的は、優良事例(good practice)を収集することです。具体的には、持続可能な農慣行や灌漑作業など、地元の人々が日常的に行う持続可能な慣行を集め、優れた事例を抽出し、政策提言へとつなげる作業を行いました。この研究では、ベトナム、タイ、中国、日本、バングラデシュの5つの国に焦点をあて実施し、例えば、タイでは林業に関する慣行について、バングラデシュでは伝統的な農業の慣行について研究しました。また、中国では、持続可能な『水文化』が実践されている村を調査しました。そこでは、池の傍らで桑の木を育て、カイコの幼虫は魚のえさとして使うといった、持続可能なシステムが営まれていました。

特にバングラデシュで見られる農業慣行は、インドやネパール、タイなどの国においても実用的で有益な方法となりうるものです。バングラデシュでは耐塩性のある米の一種を育てていますが、他の国ではまだ導入されていない品種であるため、栽培が可能で、耐塩性に優れた植物品種の事例として示すことができました。RISPOⅠでは、このように、持続可能な社会経済に貢献する地域的な慣行や伝統を研究対象としていました。

アジア太平洋という「地域」研究の意義
ソーニー:
一方、2005年からスタートした『R ISPOⅡ』では、地域内の経済統合と貿易の自由化によって引き起こされる問題を緩和すると同時に、もたらされる恩恵を生かすことのできる環境政策オプションの提示を目指し、研究を行っています。対象地域は、東南アジア諸国連合(ASEAN)の加盟10カ国に加え、中国、日本、韓国の3カ国の合計13カ国で、うち6カ国においてケーススタディを実施する予定です。この研究を実施するにあたり、私たちは地域的研究とケーススタディの2つのアプローチを取っています。

国別の研究だけでは各国の状況に準拠した情報しか提供できませんが、地域的研究を行うことにより、包括的な絵を描くことが可能になります。他の様々な国の情報を提供するのみならず、各国間の相違点を抽出したり、様々なケースから学ぶことができます。ある国で導入されている技術や慣行、政策の多くは、地域内の他国でも有益であり、汎用できるものなのです。

現在、太平洋地域ではいくつかのプロジェクトが進行していますが、数はあまり多くありません。アジア各国のケーススタディに加え、太平洋諸国の研究を実施できれば、アジアと太平洋地域とを比較することもでき、素晴らしいと思います。今後は知識の基盤を積み上げ、アジアと太平洋の両地域を見ることができるような研究を行っていく必要があるでしょう。

私たちは、例えばアジアを一つの地理的な集合体だと認識していますが、私たちがアジアで行う研究作業を具体的に見てみると、実際には、東アジアだったり、北アジアだったりと、アジア全体を包括的な一つの地域と見る機会は限られます。しかし、IGESが持つ最もユニークな点のひとつは、日本を本拠地としながら、アジア太平洋に焦点を当てた研究を行っているという点です。ややもすると視野は狭くなるものです。私たちは、地域全体を含めるよう研究対象を意識して拡大していく必要があるでしょう。
---IGESでこれまでに得たものは何でしょうか。

"ボトムアップ"アプローチと"トップダウン"アプローチ

ソーニー:

アジア欧州環境フォーラム「1/3 of our Planet」でのIGES/APFED展示ブースにて
(2005年11月23-25日、インドネシア・ジャカルタ)

私がIGESにきた明確な理由のひとつは、「アジアについてもっとよく知りたい」という欲求です。IGESは、アジアを対象とした数多くの研究プロジェクトを通じて、多くの知識を手に入れる機会を私に与えてくれました。これは本当に貴重な経験でした。

ドイツにおいて博士課程で研究していた時は学術的アプローチに基づき、ボトムアップ的な政策提言を行いましたが、IGESではよりトップダウン的なアプローチも行ってきました。各国の環境大臣レベルを含む政策立案者と話す機会を持つことができるのは、IGESの利点だと思います。この経験により、政治的行動を起こすためには、ボトムアップとトップダウンの双方のアプローチが必要であるということを学ぶことができました。質の高い政策研究や提言を行うために、学術的な研究を行う必要もあります。しかしながら、提言を思いつくことと、それを実施することはそれほど単純に可能なことではありません。時には素晴らしい提言が書かれた、質の高い報告書を目にすることもありますが、現実的に実行不可能なものも少なくありません。私はかつてよく「政治家は何もしない」と考えていましたが、実際に一緒に働いてみると、「実行」とは非常に難しいプロセスであると気づかされました。

---母国インドについて

ソーニー:
母国であるインドに帰って研究をしたいとは思いますが、世界はとても広く、見るべきものや学ぶべきことがまだまだたくさんあると感じています。母国は常に選択肢としてありますが、海外で生活して働くという機会はいつもあるものではありません。それが、私が今、母国ではなくここにいる理由の一つです。

(2005年11月 インドネシア・ボゴールにて)

しかし海外での経験が長くなったことにより、以前よりも自分の国に対する関心が高くなったのも事実です。その中にいる時にはあまり感じませんでしたが、離れている今、インドという国に対して他の人々と同様の好奇心を抱いています。森林、地域生活、地域社会に根ざした資源管理、保護区管理などの分野の研究のために、より多く現場に行き、もっと多くの地元民に会い、彼らの考えを聞きたいと思っています。将来的には、是非インドで研究活動をしたいと思います。

どうもありがとうございました。
 




参考資料:
- RISPO I
- アジア太平洋環境開発フォーラム(APFED)

インタビュアー:城戸めぐみ、サム・アダムソン(情報発信・アウトリーチプログラム)

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