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世界で注目されてきた気候変動対策としての省エネの役割
-排出削減に向けた各国の省エネ政策の実施動向-
(2012年12月6日)
2020年までの排出削減目標達成に向けた省エネへの期待
国連気候変動枠組条約第18回締約国会議(COP18)では、2020年に始まる温室効果ガス(GHG)削減の新たな枠組みを始め、2020年のGHGの削減レベルなど、国際枠組みにおける各国の立場を主張する議論が展開されている。その一方で、各国は排出削減に向け具体的な国内政策や戦略、計画の策定を行うと共に、実質的な活動を着実に実施してきており、その進捗報告がCOP18のサイドイベントにて発表された。特に今回のCOPサイドイベントで注目したいのは、省エネなどのエネルギー需要に焦点を当てた発表が多いということである。COP期間前半の1週間だけでも、EU、フランス、湾岸協力会議(CCG)諸国、インドネシア、南アフリカなどが、様々なサイドイベントにおいて、省エネやデマンドマネジメントにおける政策の進捗報告を行った。省エネやデマンドマネジメントなどの需要側からの削減努力は、技術や規制、行動変化などを行うことによる排出削減ポテンシャルが高く、技術開発による新たな市場の開発と雇用の促進など、経済的な利点も期待され、確実に注目が集まっている。このように国内エネルギー消費削減に向けて各国が真剣に取り組み始める中、気候変動緩和策としてのエネルギー需要側からの削減に対する関心の高さが伺える。
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気候変動グループ LCS-RNet
2020年の世界のGHG排出削減に向けた目標と現状とのギャップ
COP18の交渉では各国による活発な議論が続いており、このうち2020年の温室効果ガス(GHG)の削減目標については、COP15のコペンハーゲン合意において、世界全体の産業化以前からの気温上昇を2度以下に抑えるために、世界のGHG排出削減として、各国における持続可能な低炭素エネルギーシステムの計画と実施など、緩和策を進めることが求められ、これに賛同した気候変動枠組条約附属書I国は2020年までの排出削減目標、非附属書I国は削減行動を提出することが求められた。COP17で設立されたダーバンプラットフォーム特別作業部会では、削減目標引き上げや2020年からの新たな枠組み発効に向けた議論を行うことが決まった。

コペンハーゲン合意以来、COP開催時に毎年、世界の平均気温上昇を2度以下に抑えるために必要な削減レベルと、現在各国が掲げているGHG排出削減目標をすべての国が達成した場合に実現できる排出レベルとの間の隔たり(ギャップ)(2020年時点)を評価した報告書「排出ギャップ報告書」が、世界の著名な研究者達による共同執筆として、UNEPにより発行されている。COP18のサイドイベントでも本報告書の発表が行われ、気温上昇を2度以下に抑えるためには、世界で2020年までにCO2換算44Gt又はそれ以下の排出に抑えることが必要であるが、もし各国が削減対策を行わなければ2020年には排出は58Gtまで上昇することを示した。更に、たとえ全ての国が厳格なルールのもと、最も野心的な削減プレッジを実施したとしても、2020年までにはCO2換算で8Gtのギャップが生じることを示した。このことからわかるように、世界でのCO2削減のための一層の努力が求められることが示された。

排出削減に向けて各国が打ち出すエネルギー需要側の施策
本報告書において、ギガトンギャップを埋めるための施策として、エネルギーに関する建築基準を各国が制定し、総合的な政策パッケージを実施することですることで2020年までに最大2.1Gt削減することが可能である点が示された。更に、他のCOPのサイドイベントでも、エネルギー需要側における削減効果や期待が示されると共に、省エネ政策を本格的に実施するための戦略を立て、実行に向けた資金確保や制度設計などを進めているといった、省エネ政策の進捗状況の発表が行われた。

事実、エネルギー消費削減に関する具体的な施策として、EUはヨーロッパ2020戦略の7つの主要施策(flagship initiative)の一つとして、2011年に、持続可能な成長に向けた低炭素経済への移行を目指した「資源効率ヨーロッパ」を発表した。その中核の一つとなるのがエネルギー効率計画2011である。エネルギー効率計画2011では、エネルギー効率を20%向上させるといった政策を検討し、第一段階としてEUが加盟国の省エネ努力を評価し、第2段階で法的拘束力のある省エネ目標の策定することを検討している。また、イギリスでは、気候変動エネルギー省が11月中旬に省エネ改革を先導としたエネルギー効率戦略を発表し、COP開催中にエネルギー法案の決定を発表した。イギリスのエネルギー効率戦略は、エネルギー効率を政府のエネルギー政策の中核に位置付けたイギリス初の包括的なエネルギー効率に関する戦略となる。この戦略は、住宅、交通、製造分野でのエネルギー消費方法の変革を目的とし、省エネ改革を開始するための資金供給と具体的なプログラムを実施することを示した。

更に、産油国であるCCG諸国においても、COPにおいてエネルギー効率に関するサイドイベントを開催し、各国の省エネ活動に向けた政策や制度などを紹介した。アラブ首長国連邦(UAE)では、デマンドサイドマネジメントによる低炭素に向けた転換を行うために、2011年にドバイ最高エネルギー委員会のもと、ドバイ最高評議会カーボンセンターを設立し、炭素効率化に向けたプロジェクトを促進していることを示した。更に同年、ドバイ統合エネルギー戦略2030を公表し、持続可能なエネルギー供給と水資源、電力、燃料などの資源の利用効率を高めることを示した。また、2011年の経済成長率が約18.8%にのぼり(国際通貨基金)、建築ラッシュが進むCOP開催国のカタールでは、2010年に全ての建築物にグリーン建築基準を設け、新規建築物に対しカタール持続可能性評価システムで定められた一定水準を満たすことを求めると共に、2020年までに全ての既存の建築物にも建築基準が適応されることを発表した。

インドネシアにおいても、UNFCCCに提示した削減目標を達成するために、国有の石油関連企業であるPT Pertamina社の取り組みとして、従来の石油・ガス企業から総合エネルギー企業へ転換し、全体のエネルギー供給のうち25%を新エネルギーとすることを目標に掲げ、プロジェクト及び開発研究等を行っている。一方、南アフリカでも省エネ促進戦略を作成すると共に、それを実行に移すためにエネルギー需要を2015年までに15%削減するという目標を掲げた。更に、エネルギー効率リーダーシップネットワークなどによる企業間のエネルギー効率促進を行うと共に、エネルギー基準としてISO50001(エネルギーマネージメント基準)などの促進を行っている。

省エネ先進国を目指す各国の今後の動向
以上のようにCOPと同時開催されているサイドイベントから、各国が削減目標を掲げ、それを実現するための様々な制度を導入していることがわかる。EUでは、気候変動政策がエネルギー政策の根幹となっており、供給及び需要の面から目標値を設定し、EU加盟国による目標達成に向けた努力を促している。更に、アラブ諸国などの産油国でも、新たなエネルギー源への投資と促進を行う一方で、建築基準などを設けてエネルギー効率を促進している。

このように、GHG排出削減に向けて各国が競ってエネルギー効率のトップランナーを目指し、ベストプラクティスを実施していこうといった動向が伺える。今年の11月にアメリカのエネルギー効率経済委員会(ACEEE)が報告した国際エネルギー効率スコアカードによると、イギリスがエネルギー効率の総合的な政策において最高得点を獲得しており、分野別では、ドイツが国内努力、イギリスが産業、中国が建物、日本は火力発電の効率で高得点が付与された。このスコアカードからも各国で省エネに焦点を当てた活動が活性化していることがわかる。

1970年代のオイルショック以降、産業分野での省エネを促進してきた日本は、省エネ技術においてトップレベルを保ってきたが、今後は制度面やデマンドリスポンスなどのシステム導入や、建築物や業務・家庭部門における省エネを促進する体制を整えることが求められる。福島原発後の電力不足に直面した日本の東京電力・東北電力管内では、2011年に夏のピーク電力消費削減として前年比15%の目標を立て、節電努力によりその目標を達成し、人々の省エネ行動の促進や意識の向上により更なるエネルギー消費の削減が可能であることを証明した。更に、2012年9月に策定された革新的エネルギー・環境戦略では、節電と省エネにより最終エネルギー消費を2020年に2010年比8%、2030年に19%削減の目標を設定し、更なるエネルギー消費削減を目指すことを示した。

このように日本を含め各国が目標設定と具体的な施策を提示する中、具体的にこれらをどのように実現していくかをモニタリングしていく必要がある。気候変動にかかわる研究者として、このような各国の施策の実態及びその効果と成果を追跡し、各国の2020年までの削減ポテンシャルなどの実質的な可能性を分析していくことは、今後の研究テーマとして大変興味深い。  


*** このコメンタリーの内容は執筆者の見解であり、IGES の見解を述べたものではありません。

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