rio+20 towards and beyond
『排出枠取引の継続断念も=日本、京都延長不参加で』報道
について思ったこと
(2012年11月30日)
昨年のCOP17が重要な節目となる会合であった故か、今回のCOP18はやや冷めた印象である。しかし、私のような炭素市場の動向に関心のある者にとっては、重要ないくつかの課題が議論の対象となっている。その一つが、京都議定書第2約束期間に数値目標を有さない国(つまり日本など)が京都メカニズムを引き続き活用できるのか、という問題である。この問題の詳細は別の機会に譲るとして、ここではこれに関連してCOP18の3日目に報道された『排出枠取引の継続断念も=日本、京都延長不参加で』(11月28日時事配信) を現地で見て思ったことを記したい。
Author
市場メカニズムグループ
日本にとって、京都議定書第1約束期間後も引き続きCDMから創出されるCERクレジット(以下、CER)を必要に応じて円滑に取得できること、そして、UNFCCCの下での国の数値目標に活用できることを担保しておくことが、今後の国際枠組みにおける数値目標達成の手段を可能な限り広くしておくという観点から重要であることは言うまでもない。

記事の言う「排出枠の取引」とは正確には京都議定書第17条の下での国際排出量取引(以下、排出量取引)のことを指すものと考えられる。この排出量取引という仕組みの本来的な機能は、数値目標に応じて先進国に配分される割当量(AAU)を先進国同士で相互に取引することにある。京都議定書第2約束期間の数値目標を持たない日本にはAAUが配分されない。このため排出量取引の直接的な利用は我が国にはさほど重要ではないように見える。しかし、ここが問題なのである。

CDMから得られるCERの取得には2つの方法がある。一つは一次取得と言われ、自らがCDMプロジェクトの参加者となり、そのプロジェクトから発生したCERを直接取得する方法である。この一次取得については、現行のマラケシュ合意の規定によって2013年以降も日本は問題なく利用することができる。

もう一つの方法は、炭素市場を介してCERを二次的に取得する二次取得である。CERの一次取得はCDMの初期段階においては主流であったが、炭素市場の発展につれて二次取得が取引の中心を占めるようになった。2011年に世界で取引されたCERの約85%が二次取得である。今やCERの取得方法の主流は一次取得でなく、二次取得となっているのである。

ここで注意が必要なのは、CERの取引であっても二次取得は京都メカニズムのルール上は「排出量取引」であるという点である。ここはしばしば誤解のある点であるが、CDMとはCERの一次取得までを指し、その先のCERの二次取引はすべて排出量取引の一部として取り扱われる。このため、記事の言う「排出枠取引の継続断念」は、直ちにCERの二次取得も諦めるということを意味する。一瞥すると日本とはほぼ無関係に見える「排出量取引」だが、実はCERを二次取得するための重要なルートなのである。もし「排出枠取引の継続断念」ということになれば、今後CERは一次取得しかできなくなり、十分な量を確保できなくなるかもしれない。

記事によれば、政府関係者は「本当に認めないのであればしょうがないと、反対意見が強い場合は受け入れる考えを示した」とある。あくまで記事なので日本政府関係者がこのような考えをオープンにしたのかその真偽のほどは定かではない。しかし、もし本当だとしたら、その損失は大きい。そして、COP3日目のこれから交渉本番というタイミングでこの報道が出てしまったことに私は驚きを禁じえなかった。

2012年11月30日 COP18(ドーハ)にて

*** このコメンタリーの内容は執筆者の見解であり、IGES の見解を述べたものではありません。

ページの先頭へ戻る