rio+20 towards and beyond
気候危機回避に向けて、人類の知恵を結集しはじめた世界
(2012年12月5日)
COP18での「"Knowledge-sharing"・知識共有」ネットワークの興隆
"Knowledge-sharing"の動きが急である。COP18でも多くのサイドイベントで「知識共有」ネットワークやプラットフォームの発表がなされている。特にコペンハーゲンでのCOP16以来、温室効果ガス削減に向けた途上国への資金援助が決まり、資金を効果的に気候安定化政策に向けるため、先進国・途上国が一体となって「知識を共有」し、相互に学ぼうとする活動が盛んになってきている。
こうした活動の一例として、Low Emission Development Strategies Global Partnership (LEDS-GP) が挙げられる。この組織は、Climate and Development Knowledge Network (CDKN) や、European Climate Foundation (ECF) といった15の機関によって運営されており、国際機関や政府機関を含む101もの団体を擁している。また、アフリカ、ラテンアメリカ、アジアといった地域別のプラットフォームや、交通やエネルギーといった分野別のネットワーク、また、低排出・低炭素・グリーン成長に関する優良事例を収集する、Green Growth Best Practices (GGBP) イニシアティブを擁し、メガ・ネットワークの様相を呈してきている。 こうした動きは日本にもあり、日本政府は、2012年4月に東京で開催した「東アジア低炭素成長パートナーシップ対話」のもと、「東アジア低炭素成長ナレッジ・プラットフォーム」を推進してきている。
Author
気候変動グループ
低炭素社会国際研究ネットワーク(LCS-RNet)/低炭素アジア研究ネットワーク(LoCARNet)事務局
知識共有ネットワーク出現の背景と意義
IPCCは気候変動に関する科学知識を集約・評価し世界で共有することによって、国際社会が気候変動問題に取り組む必要性を明確に示した。1988年にIPCCが設立されてから4半世紀が経ち、温暖化の進行と被害とが明らかになり、今はどのようにして温室効果ガスの発生を抑制するか、また、変化に適応していくかの対策や行動に重点が移ってきている。対応の仕方はそれぞれの国毎に、またステークホルダー毎にも異なるが、世界全体で見ると対応に向けた考え方や方法は共通しているところが多い。世界のすべての国が参加して削減に向かうためには、これまでのIPCCでの蓄積を踏まえ、一段と実践的で、かつ実務レベルでの有益な知識の集約・評価・共有が必要になってきている。上記のこうしたネットワークやプラットフォームは、相互に知識を交換しあうだけでなく、共通の方向を確認し、行動においても相互に補完しあって漸進するための仕掛けなのである。
 
LCS-RNet/LoCARNet ― サイドイベントでの議論
日本国環境省とIGESは、低炭素社会・低炭素成長のための政策形成と実行に貢献する研究者・研究機関のネットワークである低炭素社会国際研究ネットワーク(LCS-RNet)と、低炭素アジア研究ネットワーク(LoCARNet)を立ち上げている。

LCS-RNetは、各加盟国において低炭素社会の実現に向けた研究を行っている研究機関によって構成され、其々の国のフォーカルポイントに指名された研究機関を中心として、①国内の研究者・研究機関の分野横断的な協力を推進し、②当該国の政府機関と密に意思疎通(政策対話)を行うことで、研究の成果を効果的に政策にインプット・フィードバックさせ、また、③年次会合等で国際的な低炭素社会研究の情報交換・共有・連携を深めてきた。LCS-RNetは今までに年次会合を4回開催し、こうした機会を通じて低炭素社会への転換に向けた主要な課題について認識・絞り込みを行ってきた。年次会合の成果は統合報告書にまとめられ、G8環境大臣会合に定期的に報告されてきたほか、COPでのサイドイベントや、その他の様々な会合の場で披露されてきた。また、2013年1月には今までに蓄積してきた知見をまとめ、Climate Policy 特集号「Low Carbon Drivers for a Sustainable World」を刊行する予定である。

今回COP18でLCS-RNet事務局は、英国エネルギー気候変動省、英国エネルギー研究センターと共にサイドイベントを開催し、低炭素化政策の策定への科学(研究)の貢献について議論を行った。この議論の背景には、科学者によるIPCCの科学的アセスメントが世界の気候政策決定に大きな役目を果たしてきたが、他方で組織が大きくなり、評価報告書の発行は5年毎と時間がかかるため、今後、緊急性の高い温暖化対策に十分に対応していけるのかとの研究コミュニティの危惧がある。サイドイベントでは、今や科学者は科学的アセスメントを続けると同時に、IPCCの政策版のような知識共有の仕掛けを作って、政策に広く用いられる研究成果を提供する時ではないかとの研究コミュニティの問いかけに対し、参加した英・仏・日の政策担当者は、低炭素社会に向けた「転換(Transition)」を起こすには様々なステークホルダーの協働が不可欠であること、その中でも特に科学(研究)が政策に適切に反映されることが必要であり、国内の研究者・研究機関が政策形成に果たしてきた重要な貢献について強調した上で、研究者と政策担当者との更なる協働を可能にするLCS-RNetの今後の役割に強い期待感を表明した。
 
知識共有ネットワークのこれから
前述のように知識共有を進めていく動きが加速化しているところ、先進国で始まった知識共有の動きが、今後温室効果ガス排出の大幅増が見込まれる新興経済国や途上国に拡大していく傾向にあり、将来的に先進国・途上国を含めた南南北協力を志向していること、また、優良事例集の編集や共同研究、プロセス研究、或いは研究コミュニティから既存のプロセスや枠組みへの積極的なアプローチの増加といった様々な形で、実践的かつ実務的な知識を低炭素社会に向けた転換につなげていこうとする動きがみられることが、今後の知識共有ネットワークの在り方を示唆するものとして興味深い。こうした志向を考えあわせてみると、こうした先進国・途上国を合わせたネットワークの知見や様々な試みの積み上げが、将来第二のIPCCのように機能することもあるかもしれない。



*** このコメンタリーの内容は執筆者の見解であり、IGES の見解を述べたものではありません。

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