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2012年2月未来に向けた災害管理

世界の人口は、現在の傾向が続けば2050年までに90億人を超えると予測されています。人口増加の96%は途上国で起こるとされ、うち約半数は、バングラデシュ、中国、インド、インドネシア、ナイジェリアおよびパキスタンの6ヵ国が占めると考えられています。今月は、アジアで初めての自然資源データレポート「資源効率 アジア太平洋地域の経済と展望(REEO)」(*1)の筆頭著者、ハインツ・シャンドル博士に、持続可能性と資源効率に関するご意見をお聞きしました。
ハインツ・シャンドル
オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO) 生態系科学
上級研究リーダー
オーストラリア国立大学(ANU)
クロフォード公共政策大学院
准教授

前所属はウィーンの社会生態学研究所。2001年にオーストリア・ウィーン大学で社会学の博士号を取得。持続可能な天然資源利用、持続可能な消費と生産、グリーン経済の分野を研究し、政策関連情報を提供。
関連リンク:
- CSIRO
- CSIRO pod casting

2012年3月

天然資源 - 残された時間

ハインツ・シャンドル
オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)生態系科学
上級研究リーダー
オーストラリア国立大学(ANU)クロフォード公共政策大学院
准教授


アジア太平洋地域における経済・環境状況

---REEOレポートによると、アジア太平洋地域では、2050年までに、1人当たりの資源利用量と排出量を現状の20%に抑えたとしても、食品、住宅、交通、エネルギー、水を供給するために新たな「産業革命」が必要だとされています。これはどういう意味ですか?

シャンドル:
アジア太平洋地域の事情は、世界の他の地域と大きく異なっています。この地域は現在、世界における経済成長の「エンジン」とみなされ、天然資源の利用量が世界一となっています。数十年後には、資源利用やそれに起因する環境影響(資源不足、環境汚染、気候変動等)を左右する最も重要な地域になるでしょう。

この地域の最大の課題は、さらなる発展を遂げて貧困から脱却し、生活の質向上のために、資源をタイムリーかつ低コストで確保しなくてはならないことです。しかも生態学的にみて限界と思われる状況でそれを達成しなければならず、2050年までに人口が90億人に達すると予想されていることも考慮に入れなければなりません。

しかし、アジア途上国の多くで進められている開発計画を見ると、残念ながら、多くの環境問題が経済プロセスから切り離されています。環境政策と経済政策を統合させるには、開発の議論に環境問題と経済問題を結び付ける情報を取り入れる必要があります。


社会変革

---経済と環境の問題はどちらかと言うと組織レベルの話だと思うのですが、個人では何ができますか?

シャンドル:
これは良くも悪くも個人が選択できることではなく、私たちが現在直面しているのはもはや個人レベルを超えています。近代化や工業化で、責任が個人からより大きな社会組織へと移ったのです。現代社会においては、環境との関わりが一個人や一家族によってコントロールされることはもはやなくなりました。農業が中心だった時代は、1人の農民、1つの農家が環境との関わりに責任を負っていましたが、産業の代謝過程(metabolism)において、社会と自然との関係が、個人をはるかに超えた新たなレベルに引き上げられたのです。

この現状を受け入れた上でどのように持続可能性へ介入していくかを考えるのであれば、制度や機関レベルの取り組みが必要になります。制度システムに介入して特定の状況に変化をもたらすことで、個人が行動を変えやすくなるのです。

しかし矛盾している面もあります。個人として環境をコントロールできなくなった一方で、私たちは以前よりも自立的または個人主義になることを求められています。家族は小さくなり、安定した仕事などもはやありません。自分が働いている会社にではなく、自分自身に頼らなくてはならない生き方をする人が増えています。成功しているかどうかにかかわらず、自分の力で運命を築かなければならない社会になっているのです。


知識・技術の移転

---まさに矛盾した社会に生きているように思えますが、私たちにできることはあるのですか?レポートは、持続可能性に必要な変化を起こすにはあと20年か30年しかないと指摘していますが、実現は可能でしょうか?

シャンドル:
REEOレポートは、資源効率と技術革新について多くのことができると示しています。政府には必要な枠組みを整備するという重要な役割があり、企業やコミュニティ、最終的には個人が様々な決定を下し、資源効率に貢献できるようにしなければなりません。

同時に知識・技術の移転も不可欠です。石炭や鉄鉱石をただ輸出するよりも、資源効率技術を移転する方がずっと効果的で、システムの効率化にはるかに役立つのです。ただし、"効率化"だけで持続可能性を実現できるわけではありません。繁栄と環境の持続可能性を両立させるには"抜本的な変革"が必要で、供給システムを根本から変える制度改革が不可欠です。

繁栄と生活の質向上、快適な未来のために、今こそ"資源効率化"と"制度改革"に取り掛かるべきです。そうすれば開発と資源保護との矛盾がなくなり、これらを1つの問題として扱うことができます。



ローカルおよびグローバルな発想

---"技術開発"と"制度改革"は不可欠だということですか?

シャンドル:
新たな方法で取り組む必要があります。ただし既存の知識を活用することも大切です。例えばインドのNGO、ディベロップメント・オルタナティブは、地域社会が既に持っている技能や資源を活用した改革を進めています。国の場合も同じで、各々が利用可能なスキルと知識ベースを組み合わせ、天然資源の過剰利用の問題を新たなアイデアで解決するのです。

既存のスキルと知識ベースを生かし、その国で利用可能な技術と戦略を考える必要があります。iPhoneのようなツールを発明して世界に広めればいいというものではありません。誰もが買えるわけではありませんし、それが本当に必要なものなのかどうかも疑問です。


環境配慮型予算と税制改革

---どのようにして持続可能性のチャンピオン(手本)を見つければいいのですか?どうすれば資源の節約や排出量の削減を可能にする解決策を提供する企業や、新たなライフスタイルを目指す消費者を支援することができるでしょうか?

シャンドル:
1950年代には、新たに大量生産と大量消費に基づいた経済モデルが普及し始めました。しかしこれらの大量生産・大量消費モデルでは、資源が適切に管理・利用されていなかったのです。

現在、中国、インドそして多くの東南アジア諸国では中間層や富裕層が急増し、アメリカやOECD諸国の中間層の人数に迫る勢いです。それによって多くの人の希望が満たされているとは言え、持続可能性がさらに損なわれるのも事実です。

ではどうすればいいのでしょうか?私の考えでは、環境に配慮した予算編成と税制改革を行い、生産性を向上させ、気持ちを余暇に振り向けるようにすれば、現在の考え方(インセンティブ)を変えることができると思います。課税対象を労働から天然資源に移せば、資源集約型経済活動のコストが高くなり、次第にそのような活動は減少すると期待されます。

また低効率の長時間労働により、働き過ぎで収入が多い人ほど資源集約的な生活を送っています。環境に配慮した予算と税制改革、そして労働時間削減策を組み合わせれば、経済全体の状況や考え方(インセンティブ)を改めることができ、環境に責任を持ち、少ない資源利用と排出で済む製品、商品・サービス、ライフスタイルが支持されるようになるでしょう。



国連持続可能な開発会議(リオ+20)

---2012年6月のリオ+20で期待することは?

シャンドル:
リオ+20では、すべての国が基本原則に合意し、地球が抱える共通の問題を共有し、各国の政策立案改善につながるハイレベルの声明やビジョンを表明することを期待しています。

すべての国の合意の下で、具体的な問題を特定し、必要な対策を打ち出すのです。各国の"共通だが差異ある責任"についても指摘されればより役立つでしょう。

そのような声明があれば、各国が政策を立案・実施したり、有権者や国民に対して説明がしやすくなります。政策の向上にもつながりますし、環境配慮型予算や税制改革、労働時間削減策といった核となる政策にも着手しやすくなり、経済が好転に向かうでしょう。リオ+20では、すべての国が合意する前向きで力強いメッセージを期待しています。

--- ありがとうございました。

*1:REEO:国連環境計画(UNEP)が主導および資金提供するプロジェクト。オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)を中心に、中国科学院(CAS)、インドのエネルギー資源研究所(TERI)、日本の地球環境戦略研究機関(IGES)の4つの主要地域機関が参画したユニークな共同研究の成果。昨年末、アジア太平洋地域を対象とした初の報告書を発表した。
REEO日本語サマリー



「Monthly Asian Focus: 持続可能なアジアへの視点」について

IGESでは、1998年の設立以来、アジア太平洋地域における環境問題や環境政策の動向をとりまとめた「アジアの環境重大ニュース」を毎年末に発表してきました。2011年からは、“持続可能なアジア”をキーワードに、ダイナミックに動きつつあるアジアの環境動向を、第一線で活躍する専門家の視点・考察とともにタイムリーにお届けしています。
 
   
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